レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012年05月10日
- 登録日時
- 2022/07/30 17:16
- 更新日時
- 2023/12/19 14:45
- 管理番号
- 00000140
- 質問
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解決
飯田蛇笏は、なぜ「蛇笏」という雅号としたのか。経緯や意味が知りたい。
- 回答
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雅号「蛇笏」について由来は良くわかっていない。
中学校時代には「蛇骨」「蛇の骨」、早稲田大学時代には「玄骨」「蛇骨」「白蛇幻骨」「白蛇玄骨」などのペンネームを用いており、「蛇笏」が定着してくるのは、明治40年頃からだという。
そのほか、雅号に関するエピソードがいくつか見つかった。
中学校時代の「校友会雑誌」には「蛇骨」や「蛇の骨」と署名されており、これに掲載の際、雅号は「蛇の骨とでもしておきませう」と言ったという。
早稲田大学時代には、雑誌「ホトトギス」に「玄骨」を用いている。また、投稿雑誌「文庫」に掲載されている小説には「飯田蛇骨」を、雑誌「新聲」に掲載の新体詩では「白蛇幻骨」や「白蛇玄骨」を用いている。早稲田大学時代の友人・有本芳水は、飯田蛇笏に雅号について尋ねたところ、「花鳥風月からとつた雅号は平凡だ。一つ奇抜な号にしてやれと言うので、蛇骨としたんだ。甲州の山家生れの俺には似合つた号だろう」と答えたと語っている。
飯田蛇笏自身は、「私の仮名の匿名「へびのほね」といふのを、手紙を寄こしたりする場合、飯田へびのほね様でも如何にも厄介だとでも思つたか、飯田蛇骨様などと勝手に漢字に改めてしまふので、是れには閉口しました」「こんな自分の小苦境も亦一寸面白いので甘んじて蛇骨になつてみたり又同じ音を持つた笏に替へてみたりした次第で、たいした理由という理由もないわけです」と書いている。
飯田龍太は対談の中で、蛇笏の雅号の由来について、「新声」に詩を載せていた頃、「白蛇玄骨」というペンネームを使っていた、これを詰めると「蛇骨」になるが、「骨」というのが少しいやな感じだったので「笏」という字に変えたのではないか、という旨を語っている。
- 回答プロセス
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(1)人物事典類を調査 → 飯田蛇笏は立項されていても、雅号の由来については記載されていなかった。
(2)『ペンネームの由来事典』(紀田順一郎/著 東京堂出版 2001)
→ P.19-20に飯田蛇笏の項があり、早稲田大学時代の号は「白蛇幻骨」「白蛇玄骨」などであり、その後縮小して「蛇骨」、次第に「蛇笏」となったとある。
(3)当館発行の展覧会図録を確認
→『飯田蛇笏展 歿後30年』P.19に、京北中学校時代の「校友会雑誌」10号では飯田蛇骨の署名があり、早稲田時代には、小説では「飯田蛇骨」、新体詩では「白蛇幻骨」の号を使っていたとある。
(4)当館蔵書検索システムでキーワード「雅号」を検索
→ 「雲母」9巻10号~11巻1号に「雅号閑談」という記事があった。内容を確認したところ、10巻1号(P.6)に飯田蛇笏が自分の雅号について文章を寄せていた。「私の仮名の匿名「へびのほね」といふのを、手紙を寄こしたりする場合、飯田へびのほね様でも如何にも厄介だとでも思つたか、飯田蛇骨様などと勝手に漢字に改めてしまふので、是れには閉口しました」「こんな自分の小苦境も亦一寸面白いので甘んじて蛇骨になつてみたり又同じ音を持つた笏に替へてみたりした次第で、たいした理由という理由もないわけです」等と書いている。
(5)当館蔵書検索システムでキーワード「俳号」を検索
→ 「雲母」49巻3・4月号に林蓬生「俳号の縁」という文章がヒットしたが、蛇笏の由来については書かれていなかった。しかし、この号は飯田蛇笏逝去後に編まれた「飯田蛇笏特集号」として発行されており、飯田蛇笏についての記事が多数収録されていたため、それらを調査していくと、有本芳水「早稲田時代の想い出」(P.46-47)という文章があり、蛇笏の雅号について尋ねた時の思い出が書かれていた。それによると、「花鳥風月からとつた雅号は平凡だ。一つ奇抜な号にしてやれと言うので、蛇骨としたんだ。甲州の山家生れの俺には似合つた号だろう」と答えたとある。
→ 「俳句界」19巻7号に「著名俳人、俳号の謎」という特集記事があり、飯田蛇笏が取り上げられていた。「俳号の蛇笏の由来はよく分かっていない」とある。中学時代の校友会雑誌では「蛇骨」「蛇の骨」、早稲田大学時代には「玄骨」「蛇笏」「白蛇幻骨」などのペンネームを使い、俳号の「蛇笏」が定まってくるのは明治四十年くらいとある。
(6)飯田蛇笏関連の当館所蔵資料を調査
→ 「雲母」45巻1月号、『飯田蛇笏』(角川源義・福田甲子雄/著 桜楓社)、『飯田蛇笏』(石原八束/著 角川書店)に、中学校時代の「校友会雑誌」に掲載される際、雅号は「蛇の骨とでもしておきませう」と言ったというエピソードが収録されている。また、『俳句遠近』(飯田龍太/著 富士見書房)では、息子の飯田龍太が対談中、蛇笏の雅号について触れており、蛇笏が「新声」に詩を載せていた頃、「白蛇玄骨」というペンネームを使っていた、これを詰めると「蛇骨」になるが、「骨」というのが少しいやな感じだったので「笏」という字に変えたのではないか、という旨を語っている。
- 事前調査事項
- NDC
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- 詩歌 (911 10版)
- 参考資料
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紀田順一郎 著 , ペンネームの由来事典. 東京堂出版, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003024125-00 , ISBN 4490105819 (P.19-20) -
山梨県立文学館 編 , 山梨県立文学館. 飯田蛇笏展 : 没後30年. 山梨県立文学館, 1992.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002215667-00 (P.19) - 雲母 10巻1号 (P.6 飯田蛇笏「雅号閑談」)
- 雲母 49巻3・4月号 (P.46-47 有本芳水「早稲田時代の思い出」)
- 俳句界 19巻7号 (特集 著名俳人、俳号の謎 P.61 井上康明「飯田蛇笏」)
- 雲母 45巻1号 (p.65-67 森川葵村「巣立した頃」)
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飯田龍太 著 , 俳句遠近 : 飯田龍太対談集. 富士見書房, 1986.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001835398-00 , ISBN 4829170182 (P.254-255) -
角川源義, 福田甲子雄 著 , 飯田蛇笏. 桜楓社, 1973. (俳句シリーズ 人と作品. 7)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001261068-00 (P.22-24) -
石原八束 著 , 飯田蛇笏. 角川書店, 1997.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002572210-00 , ISBN 4048834150 (P.32-33)
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紀田順一郎 著 , ペンネームの由来事典. 東京堂出版, 2001.
- キーワード
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- 飯田蛇笏
- 雅号
- 俳号
- 俳句
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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【参考】
「笏」読み:コツ・しゃく 、意味:しゃくは手板、官位のある人が礼装をしたときに帯にはさみ、大切な事を備忘用に記しておいたもの。わが国では、笏の音が骨(コツ)と同音であることを忌み、笏の長さが一尺だったので、尺の音を借りて「しゃく」と読んだ。(旺文社『漢和辞典』より)
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000319360