レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020/05/13
- 登録日時
- 2020/09/12 00:30
- 更新日時
- 2020/09/12 00:30
- 管理番号
- 滋2020-0002
- 質問
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解決
戦時中の大津市堅田に航空機の部品工場があったようだ。そのことについて知りたい。
- 回答
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1.工場について
「『新修大津市史 第6巻 現代』によれば、「滋賀郡堅田町の昭和レーヨン(現、東洋紡)も住友金属に工場を売却し、下阪本村の鐘紡阪本工場は、昭和17年3月閉鎖され、あとには吉田電機が移って海軍の通信機部品を製造することになった」と書かれています。
また、『東洋紡績七十年史』には、「紡績連合会では(昭和――※引用者註)15年11月に、商工省の意向を承けて、企業単位50万錘を目標とする企業統合案を作成し、機械整理等により自発的に操業休止工場を定めるように各社に慫慂した。わが社においては……(中略)[昭和18年]3月以降12月までの間に、一宮・津・防府・大曾根・愛知・吉見・知多・宮川・堅田……(略)など16工場の全部または一部を、軍需関係の諸工場に転用のため、売却・賃貸もしくは現物出資の方法によって供出した」とあります。
他にも『図説 大津の歴史』では、「(以上略)堅田町の昭和レーヨン(現、東洋紡)も住友金属工業に売却して、軽合金の鋳造加工所となった。」と記載していました。
さらに、その詳細は『住友金属工業六十年小史』に以下の章に紹介しています。
「当社(※住友金属――引用者註)の拡張は18年が頂点であった。……(略)翌19年には……(略)遊休工場の利用を図った。特に堅田・津・松阪の紡績工場を買収するに当っては相当の資金を要したため、現物出資による資本金増加の方途を採った。」(同書、pp.165-166)
「◎(※原文ママ)堅田製作所 陸軍用の軽合金鋳物工場として東洋紡績堅田工場を転用。この工場敷地は9万坪、建家延3万5000坪であった。予算3200万円をもって工場の整備にかかった。」(同書、p.167)
186頁には「工場敷地および建物(昭和19・6現在)」の一覧が掲載されており、それによれば堅田製作所は敷地坪数86,443坪(=約9万坪)、建家坪数27,188坪(=約2万7000坪)とあります。敷地坪数は合致しますが、建家坪数については上述の3万5000坪と約8000坪の誤差があり、その理由を確認することはできませんでした。
2.製造品について
「『住友金属工業六十年小史』によれば、「……(略)また堅田製作所は翌19年1月鋳物作業を開始した。鳴海・堅田の両所では主製品である航空発動機用シリンダーヘッドの製造を真空金型鋳造によって行ったが、この技術は昭和13年フランスのブルノー鋳造所において習得、14年から伸銅所で試作に着手し、16年に至ってようやく軌道に乗ったものであった。名古屋軽合金製造所でもこの方法で製造したが、鳴海と堅田において量産体制を整えることになった。ブルノー式金型鋳物の特徴は、砂型による製品に比べて精密・軽量・均質なものが得られることであるが、当社では更に研究を進めて、形状複雑なシリンダーヘッドの鰭ピッチを、3ないし3.5ミリという精密さで製作し、栄・誉型の優秀発動機の生産に寄与するところがおおきかった。なお堅田製作所ではダイムラーベンツ水冷発動機用のクランクケース及びシリンダーブロックのような大形(※原文ママ)の砂型鋳物を製造した。」(同書、pp.173-174)
また、同書の178頁には「軍需工場事業場の指定」として指定軍需工場の一覧が掲載されており、その表では、昭和19年1月17日を指定月日として堅田製作所が、また生産担当者として田邊友次郎(取締役、所長)の名前が挙げられています。このリストに続けて「……(前略)19年1月には当時の航空機用品に対する「決戦増産」の目標額を達成した。増産率は軽合金が27%、プロペラが21%、鉄鋼が41%で、平均して目標(30%)通りの好成績をあげた。」とあり、同書の197頁に「軽合金関係については、名古屋軽合金製造所が3月(※1944年(昭和19年)――引用者註)に疎開命令を受けて鋳物設備の全部を堅田と鳴海の両所に移した」、同書巻末年表p.23に記載されている1943年(昭和18年)7月17日付の堅田製作所の新設についての解説文「軽合金鋳物増産のため伸銅所堅田製作所を新設す」と符号します。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 近畿地方 (216 8版)
- 参考資料
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- 1 新修大津市史 第6巻 現代 林屋辰三郎∥[ほか]編 大津市役所 1983年 S-2111-6 p.262
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2 東洋紡績七十年史 東洋紡績七十年史編修委員會∥編 東洋紡績株式會社 1953年 5-5811- 53 p.424 -
3 図説大津の歴史 下巻 大津市歴史博物館市史編さん室∥編集 大津市 1999年 5B-2111-2 p.126 -
4 住友金属工業六十年小史 住友金属工業株式会社 住友金属工業社史編纂委員会 1957年 未所蔵 国立国会図書館のデジタル化資料 -
1 新修大津市史 第5巻 近代 林屋辰三郎∥[ほか]編 大津市役所 1982年 S-2111-5 -
2 大津市志 下巻 大津市私立教育會∥編集 淳風房 1911年 S-2111-3 -
3 浮利を追わず 渡部行∥著 日本工業新聞社 1988年 2-5609-ワ -
4 東洋レーヨン35年の歩み 東洋レーヨン株式会社∥編 東洋レーヨン株式会社 1962年 5B-5811- 62 滋賀工場は膳所 -
5 新大津市史 上 奈良本辰也∥編集 大津市役所 1962年 S-2111-1 p214 -
6 新修大津市史 第7巻 北部地域 林屋辰三郎∥[ほか]編 大津市役所 1984年 S-2111-7 p.206 -
7 百年史 東洋紡 上 東洋紡績社史編集室∥編集 東洋紡績 1986年 2-5862-ト -
8 百年史 東洋紡 下 東洋紡績社史編集室∥編集 東洋紡績 1986年 2-5862-ト
- キーワード
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- 大津市堅田
- 航空機
- 工場
- 東洋紡績
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000287001