レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018年09月11日
- 登録日時
- 2023/12/21 10:34
- 更新日時
- 2023/12/23 10:39
- 管理番号
- 00000323
- 質問
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解決
『現代俳句講座 3 秀句の鑑賞(1)』(河出書房 昭和31年刊)のp.13-14で、飯田蛇笏が正岡子規の句「病牀の財布も秋の錦かな」の鑑賞文を載せている。
この句の前書きに「 最早飯が食へる間の長からざるを思ひ今のうちにうまい物でも食ひたいといふ野心頻りに起り 某に若干の金を借りて財布に入れ天井よりぶらさげたる紐につるして」とあるが、この前書きは子規のオリジナルなのか、蛇笏が何かから引用したものなのかを知りたい。
- 回答
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この句は子規の病床日録「仰臥漫録2」の明治34年10月25日部分に載っている。
質問の蛇笏の前書き文章の前半部分は、「仰臥漫録2」に前書きという形ではないが、重なる記述があるため引用といえる。
後半部分の、病床の子規が財布を天井から吊り下げていたということは『子規句解』(高濱虚子著 創元社 昭和21年刊)や、明治30年以降の子規を描いた小説『柿二つ』(高濱虚子著 新橋堂 大正4年)に記述があるため、これらを元に蛇笏が歌の背景を補足したのではないかと推測できる。
- 回答プロセス
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(1) 質問の『現代俳句講座3秀句の鑑賞』が昭和31(1956)年刊だったのでそれ以前のものを中心に調べるが、どれも前書きなし。
(2) 『子規全集』第11巻の「仰臥漫録2」に、前書き前半と同様な文章を確認する。後半の文章はみつからない。
(3) 書庫の「正岡子規」の棚を確認。『子規句解』(高浜虚子著)巻末の年代順目次により本文の以下の記述がみつかる。
「子規は或時私に言ったことがあった。『(中略)こゝに財布があるが、これを天井から釣り下げてこの中に御馳走を食べる金が入ってゐると思ふと、せめてもの慰みになる。誰か其金を寄附する人は無いかと思うてをる』と。其後私の差し出した若干金が其中に収められて久しくぶら下がって居ったと思ふ。」
(4) ほかの高浜虚子の著作も検索し、『正岡子規』所収の小説「柿二つ」に次の記述を見つける。
「彼の病床には天井から紐がぶら下ってゐた。それは其紐に手を掛けて寝がへりなどをするので力綱と呼んでゐたが、此頃其紐に一つの財布がくくりつけてあった。其中には二圓の金が這入ってゐた。其金は御馳走を食ふ為の金であった。(中略)兎も角二十圓だけの金をKは御馳走代として彼に提供することを申し出た。」
- 事前調査事項
- NDC
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- 詩歌 (911 10版)
- 参考資料
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赤城さかえ 等編. 現代俳句講座 第3巻 (秀句の鑑賞 第1). 河出書房, 1956.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000958973-00 (p.13-14) -
正岡子規 著 , 正岡, 子規, 1867-1902. 子規全集 第11巻 (随筆 1). 講談社, 1975.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001250293-00 (p.479) - ほととぎす(ホトトギス) 8巻4号. ほととぎす発行所, 1905年1月発行. (p.44-45)
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正岡子規 著 , 正岡, 子規, 1867-1902. 仰臥漫録 改版. 岩波書店, 1983. (岩波文庫)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001651663-00 (p.122) -
高浜虚子 著 , 高浜, 虚子. 子規句解. 創元社, 1947. (百花文庫 ; 7)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I075184195-00 (p.79-80) - 高浜虚子/著. 正岡子規. 鴨書林, 1943. (p.191-192,210)
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高浜虚子 著 , 高浜, 虚子, 1874-1959. 柿二つ. 新橋堂, 1915.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000569804-00 (p.376-378)
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赤城さかえ 等編. 現代俳句講座 第3巻 (秀句の鑑賞 第1). 河出書房, 1956.
- キーワード
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- 正岡子規
- 飯田蛇笏
- 高浜虚子
- 「仰臥漫録」(正岡子規)
- 俳句
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000343687