調べ方マニュアル詳細
- 調べ方作成日
- 2022年6月29日
- 登録日時
- 2022/07/12 10:53
- 更新日時
- 2022/07/18 19:28
- 管理番号
- 県立長野-調-0014
- 調査テーマ
-
完成
長野県における草山の火入れ(野焼き、山焼き、野火付け)の歴史を調べたい。古い文献の調べ方を知りたい。
- 調べ方
-
<書籍から調べる>
・『長野県史』の民俗編で概略をつかむ。
『長野県史 民俗編 第5巻総説1』 長野県編 長野県史刊行会 1991 【215.2/ナガ/4-5-1】 p.382に、長野県の焼き畑の様子が書かれている。名称として、一般的には、ヤキハタ・ヤキバタ・ヤキヤマ、北信の市川谷、飯山、秋山、岳北ではカンノ・カンノオコシ、中信の北安曇郡北部では、ナギノ・ナイノ・アラコ と呼んでいることがわかる。
『長野県史 民俗編 第5巻総説2』 長野県編 長野県史刊行会 1991 【215.2/ナガ/4-5-2】p.93-98では、明治期以降の調査記録として、「下伊那農事調査」(『伊那産業史』)【国立国会図書館デジタルコレクションインターネット公開 最終確認2022.7.12】、『天竜川流域調査書』(明治31年内務省第四区土木監督署 長野県立歴史館蔵)を紹介している。
下伊那地方で焼き畑の多い地区は大鹿村、遠山・和田(現南信濃村)、神原・平岡(現天龍村)、豊(現阿南町・売木村)、大下(大下条か、現阿南町)の三遠南信県境の山間地としている。( )内の現市町村名は、刊行当時(1991)のもの。
また、秋山(現下水内郡栄村)を紹介し、昭和40年代前半まで焼き畑が広くおこなわれており、江戸時代の秋山の耕地はすべてがカンノ(刈り野)と呼ぶ焼き畑だったことが書かれている。続いて、前出の天龍村と秋山について、「ハルガンノからナツガンノへ」として、作業の様子や野焼きの季節が変更されていったことに触れている。この中で、鈴木牧之が文政11年に書いた『秋山記行』に、ハルガンノが書かれているとある。
・長野県の焼き畑の概略および野焼き、焼き畑の名称を把握したのち該当する各市町村の誌史を調べていく。
「長野県市町村誌目次情報データベース」【最終確認2022.7.12】で、収録されている市町村誌史の目次を検索することができる。ただし、収録されている誌史類は、刊行されているすべてではない。また、あくまでも目次部分の検索である。想定するキーワード以外の語が使われている可能性もあるので、「火入れ」「野焼き」「山焼き」「野火付け」などにこだわらずに、上位概念も含めて、いろいろ試すとよい。また、送り仮名もヒットしない要因のため、漢字のみ、空白を挟んでの「&検索」などでヒットする確率が上がる。「野火」「焼畑」「切畑」「山 焼」などで検索すると、江戸期の文献を紹介している個所が見受けらた。
例として、『川上村誌 通史編』 川上村誌刊行会編・刊 2009 【N223/63/4】 p.349-351では、安政6年(1777)の「御林野火取締願書」が見られる。
また、国立国会図書館レファレンス協働データベースに、当館が公開した「長野県内の地域史の調べ方について」【最終確認2022.7.12】も参考にしてほしい。
<古文書類を書籍から調べる>
・上記誌史類に収録されている古文書の傾向から、土地の管理に関することや、山林業にかかわる内容とわかってきたので、『長野県史 近世史料編』を利用して、現存する文書を活字翻刻した資料として確認することができる。『長野県史 近世史料編』は、「東信」「北信」「中信」「南信」に分かれており、各藩、知行所など所領ごとにまとめられている。さらに、各所領に関する文書が内容別に時代順にまとめられている。
利用者が求めているものは、「土地」及び「林野」に区分されるものが多いように思われる。この二項目を順に確認していくと江戸期の様子がおおよそつかむことができる。ただし、この資料を編纂した際に確認できていた文書が中心になっているので、その後確認されたものは含まれていない。
・なお、江戸期より古い史料は探す場合は、長野県立歴史館のウェブサイトから「信濃史料」【最終確認2022.7.12】の本文テキスト検索を利用することができる。活字翻刻された本文をPDFファイルで閲覧が可能。『信濃史料』という全集は、長野県に関する内容で、いろいろな史料や文書について、江戸時代よりも前のものを集め、編年体でまとめたもの。なお、この資料には索引巻があり、概念的にまとめられている言葉で引くことができるので、ウェブサイトの全文検索よりも、有効に使うことができる。ただし、江戸期よりも時代を遡ると文書等の史料が極端に少なくなる。
・また、『信州の草原』 湯本貴和 須賀丈編著 ほおずき書籍 2011 【454.65/ユタ】の「まえがき」のp.1-2に、黒ボク土について書かれており、これにはススキやネザサといった草原の草が燃えてできた微小な炭が大量に含まれていることと、年代測定によると少なからずのものは、一万年前の縄文時代早期にまで遡るとある。さらに序章のp.15からは、「どのように過去の草原や狩猟の歴史を知るか」の項があり、『万葉集』を取り上げたり、中世の狩場についても『吾妻鑑』などを挙げている。また、第5章でも、史料の案内があることに触れている。信州の草原の歴史と牧の維持にも触れ、『延喜式』にもヒントがあることが書かれている。地域の誌史とはまた違ったアプローチができるかと思われる。
<郷土史雑誌の記事を調べる>
・当館ホームページから蔵書検索ができるようになっている。この詳細検索で書名の枠をクリックしてドロップダウンされたものの中から「全項目」を選択する。ここに、「野焼」「焼畑」等のキーワードを入れて検索すると、書籍のほか、郷土史の雑誌記事も検索できるようになっている。当該巻号を確認していくと、収録記事名が表示される。記事名が表示されるものと、されないものがあるのが、表示されなくても何らかの論文がヒットしているので、当館に照会してください。
・小松芳郎著 「秋山郷の焼畑と蕎麦づくり」 『長野』 第168号
・浅川欽一著 「秋山地方の焼畑習俗」 『信濃 第3次』 第165号
・松澤英男著 「売木区文書にみる明治期の焼畑作り」 『伊那』 第55巻9号
・中村寿人著 「焼畑耕作」 『伊那』 第30巻1号
などのように絞っていくことができる。これらの中に、史料を引用していることがあるので、個々に調査すると古い年代のものが見つかるかもしれない。
- NDC
-
- 風俗史.民俗誌.民族誌 (382 10版)
- 農業 (610 10版)
- 林業 (650 10版)
- 参考資料
-
-
長野県/編集 , 長野県. 長野県史 民俗編 第5巻 総説1. 長野県史刊行会, 1991.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005948497-00 (【215.2/ナガ/4-5-1】) -
長野県/編集 , 長野県. 長野県史 民俗編 第5巻 総説2. 長野県史刊行会, 1991.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005948498-00 (【215.2/ナガ/4-5-2】) -
信濃史料刊行会 編. 信濃史料 索引. 信濃史料刊行会, 1972.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001230754-00 (【N208/28a/31】) -
湯本貴和, 須賀丈 編著 , 湯本, 貴和, 1959- , 須賀, 丈, 1965-. 信州の草原 : その歴史をさぐる. ほおずき書籍, 2011.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000011162150-00 , ISBN 9784434155413 (【454.65/ユタ】)
-
長野県/編集 , 長野県. 長野県史 民俗編 第5巻 総説1. 長野県史刊行会, 1991.
- キーワード
-
- 野焼き
- 山焼き
- 野火
- 古文書
- 文献調査
- 備考
- 登録番号
- 2000027497