探し方ガイド:「死の舞踏」に関する音楽資料を探し、調べるには?
1.探すときのキーワード(例)
「死の舞踏」”Totentanz” "Danse macabre"
当館OPAC
→タイトル に 「死の舞踏」”Totentanz” "Danse macabre" と各々入力し、各々フレーズ検索
*クラシック作品には、「死の舞踏」と題する作品があります。(ex:リスト、サン・サーンス) それらをも
れなく検索するためには、少なくとも、日本語、ドイツ語、フランス語を各々検索する必要があります。
*「死の舞踏」の影響を受けた音楽作品や、関連があると思われる作品は、個々の作品の成立過程
や歌詞研究を行い、作品名等を特定した上で、各々の作品名等により検索する必要があります。
〇リストの例
レファンレンス事例「リスト作曲の「死の舞踏」のソロ・ピアノの楽譜を借りたい。」(国音-2011-0014)
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000100627 もご参照ください。
全集楽譜
”Liszt, Franz. Nue Ausgabe Sämtolicher Werke.New editon of complete works.
Serie Ⅰ-16" Kassel, Bärenreiter;Budapest, Editio Musica, 1982 請求記号:A7-936
*フランツ・リスト全集 シリーズⅠ:ソロ・ピアノのための作品集の第16巻、自作編曲集のⅡとして刊行。
当館OPACでは探すのが難しい「死の舞踏}の作曲者自身の2手(Zwei Händen)用編曲楽譜(原曲は
ピアノとオーケストラ)が収載されています。又、この全集のこのシリーズには、他の作品についても重要な
ソロ・ピアノ用の楽譜が収められています。
〇サン・サーンスの例
「サン・サーンス:死の舞踏 の 2台ピアノ の CDを探している」(国音2014-0021)
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000167559 もご参照ください。
2.調べるときのキーワード
「死の舞踏」"Totentanz” "Danse macabre"
① 『ニューグローヴ世界音楽大事典』 anley Sadie〔ほか〕編 東京 : 講談社, 1994~1995
「死の舞踏」の項 (参考資料1参照)
*上記のみならず、様々な音楽事典で、「死の舞踏」の概念と音楽作品への影響を把握して
おく必要があります。
②『西欧における死の表現』 木間瀬精三著 中央公論社, 1974 (参考資料2参照)
*宗教史の点からも興味深い一書。特に、音楽の点からは、グレゴリウス聖歌[ママ]の
「死者のためのミサ」中の「怒りの日」の詩の作者への言及とローマ教会との関係等が
興味深い。ちなみに、この旋律について、リストの「死の舞踏」、ベルリオーズの「幻想
交響曲」でおなじみの死の恐怖を伝える有名旋律として紹介しています。
③『死の舞踏 : ヨーロッパ民衆文化の華』 水之江有一著 丸善, 1995 (参考資料3参照)
*この本の序には、著者の言葉として以下の文が記されています。「...「ヨーロッパ民衆文化の華」
として、15世紀から16世紀にかけて人々に親しまれた「死の舞踏」であり、その主題を表現した
観念と様式を、本書は歴史的にたどろうとするもの…」。「死の舞踏」の観念は、15、16世紀
以降の音楽の中にも影響を受けた作品があり、それは「死の舞踏」というタイトルを持つ有名な
リスト(1811-1886)の作品にに限らないと思われます。この本では、ホルバインやでグレイの
作品を中心に図像化された「死」の姿が紹介されており、歴史的背景や各図像に解説も明快で読み
やすくなっています。音楽の観点から興味が魅かれる図像としては、p22にあるハイデルベルクに
残る「死のオーケストラ」とニュールンベルク「死者たちのオーケストラ」と思われます。
この本に記された「メメント・モリ」「マカブレ」「マカーブル」(調べるときのキーワード参照)等
と言った 言葉は、「死の舞踏」やそうした考えの片鱗が見られる音楽の鑑賞や演奏にあっては、調べて
おくべきキーワードと言えます。
著者は、『絵でみるシンボル辞典』(研究社出版, 1986)、『図像学事典 : リーパとその系譜』(岩崎美術社, 1991)
等の編著者、著者として図像学関係で優れた研究書を著されていますが、特に、この2冊は、ヨーロッパの歌曲(特に
ドイツ歌曲)のテクスト調査、シンボル調査のレファレンス・ツールとして欠かすことができません。
④『中世末期から現代まで : デュッセルドルフ大学版画素描コレクションによる』
国立西洋美術館編, c2000 (参考資料4参照)
*縦29cmの大型本に、緊迫感あふれる素描[中には、ユーモラスなものや極めて日常的、極普通な作品も
あります。]が収載されています。「中世末期から現代まで」ですので、デュラーの「騎士と死と悪魔」
(p.175)のような有名作品もありますが、未知の作品や知らない作家も多いので、作品解説、作家解説
はレファレンスにも役に立ちそうです。
⑤『「死の舞踏」への旅』 藤代幸一著 東京 : 八坂書房, 2002 (参考資料5参照)
*文化現象としてヨーロッパを席巻した「死の舞踏」を、当時の姿や、地域的な広がりを
求めつつ、要地リューベック、ベルリンを中心にエアフルト、パリ、バーゼル、ヴュルツ
ブルク等に残る「死の舞踏」の図像、建物、古地図、文献等から考究し、紹介する研究書。
⑥『骸骨の聖母サンタ・ムエルテ : 現代メキシコのスピリチュアル・アート』 加藤薫著
新評論, 2012 (参考資料6参照)
*メキシコのサンタ・ムエルテ(Sant Muerte 死の聖母/骸骨の聖母)について、美術研究者である
著者が現地もたずね、そのルーツや意味について調べ、研究した本です。ルーツについては諸説ある中の、
西洋起源説の、そのひとつに「死の舞踏」起源説が挙げられています。「死の舞踏」の地域や時代を超えた
影響を思わせる一例として注意をひきますが、カトリック教会と「サンタ・ムエルテ」の緊張感ある関係も
見逃せない点であると思われます。
⑦『レクィエムの歴史 : 死と音楽との対話』 井上太郎著 東京 : 河出書房新社, 2013
(参考資料7参照)
*第二章 「死を想え」の世紀に の一項目として、「死の舞踏」が扱われている。やはり、
この章全体とともに読むと当時の歴史や文学、美術、世相(宗教観、死生感)全体の中
から、「死の舞踏」がより一層見えてくるようです。中でも「「死の舞踏」が音楽と結びつく
のは十六世紀になってからのようだが、絵の中で死者たちが楽器を奏でている例は、
すでに十五世紀にある。・・・」の指摘及び前後の文章は、絵と音楽の関連を調べる上で、
大変重要です。なお、この章の図版として、著者はディシプリーニ礼拝堂の壁画「死の
舞踏」他を挙げています。
◆「死の舞踏」は、単に音楽分野の主題であるだけでなく、歴史的、文学的、美術史、文化
史等に広くまたがる一大テーマです。よって、作品を演奏し、研究する場合、ある程度の
音楽関連領域への文献探索・調査は必須要件と言えます。特に、歴史的図像、絵画等
美術文献は必見とも言えます。