レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2023/07/01 00:30
- 更新日時
- 2023/09/08 12:06
- 管理番号
- 滋2023-0012
- 質問
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解決
廃藩置県後の明治~大正期の旧彦根藩士の当主名などがわかる資料(名簿類)はあるか。『彦根藩史料叢書 侍中由緒帳』では、幕末までの当主しかわからず、それ以降の明治~大正期の情報を探している。
- 回答
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1.彦根藩主の子孫
ご質問の時期については、『井伊家の教え』に書かれています。
この本は井伊家の第17代当主「直豪」の長女で、第18代当主「直岳(岳夫)」の妻である井伊裕子氏の著書です。はしがきによると、「(略)幕末の直弼以降の井伊家の歴史も紹介できるのではないか(以下略)」とあり、祖父にあたる直愛(なおよし)との逸話も書かれています。
16頁の井伊家略系図よると、廃藩置県時の当主は第14代の井伊直憲(なおのり)、第15代が直忠(なおただ)、第16代は直愛(なおよし)、第17代は直豪(なおひで)、18代は直岳(なおたけ)(岳夫)です。
14代:井伊直憲
『井伊直憲 彦根藩最後の藩主』が出版されています。本書の「井伊直憲略年表」によると、嘉永元年4月20日生まれ、明治2年6月17日「版籍奉還する 免彦根藩主・藩知事・華族となる、明治4年7月15日「彦根県知事を免ぜられ」、明治23年1月1日「貴族院議員に選出」されています。没年は明治35年1月9日で、「病にて薨ず。世田谷豪徳寺に葬る」とあります。
『三百藩藩主人名事典』 3巻には、「井伊直弼の二男で、嘉永元年四月に江戸で生まれた。」とあり、直憲の生涯が簡潔に書かれています。
また、鈴木栄樹「最後の彦根藩主井伊直憲の西洋遊学」(『幕末維新の彦根藩』に収録)には、留学時の状況が記されています。
15代:井伊直忠
『20世紀日本人名事典』によると、「明治~昭和期の能楽書収集家、伯爵。<生>明治14(1881)年5月29日 <没>昭和22(1947)年4月1日 (略) <歴>祖父は大老を務めた井伊直弼。能楽書、能衣装などの収集につとめた。」とあります。
16代:井伊直愛
『井伊家の教え』では、「九期三十六年もの長い間彦根市長を務めていた(以下略)」と紹介しています。市長時代の昭和29年5月10日の初当選以降、昭和61年までのトピックスは『市制五十年の軌跡』に記されてます。なお、『市制五十年の軌跡』は、国立国会図書館デジタルコレクション(図書館送信参加館・個人送信限定)で読むこともできます。
また、『人間風物詩 六市編』には、「世界的な甲殻類の学者=井伊市長」など、直愛の人物像が書かれています。
2.旧彦根藩士
旧彦根藩士に関する名簿は見つかりませんでしたが、以下の関連資料がありました。
(1)中村達夫編『明治彦根藩士族譜』
明治42年2月を調査年月とした総士族数およそ2500余名について、編者私蔵の史料をもとに全士族をイロハ順に分けて当時の各士族の住所を併記したものです。
(2)落合弘樹「維新後の彦根藩と彦根藩士」(『幕末維新の彦根藩』に収録)
明治元年の藩治職制の布告を受けて翌年に任命した「彦根藩執政参政」の役職者名が記されています。( 『幕末維新の彦根藩』 p.204 表3)「全体としては門閥と改革派がうまく調和されているが、井伊直弼の腹心である宇津木六之丞と長野義言が粛清された、文久二年(一八六二)以後の体制をおおむね引き継いだといえよう。」と記しています。
(3)三宅正浩「明治期井伊家の家政組織」(『彦根城博物館研究紀要』 23号(通巻23号)に収録)
廃藩置県以後の井伊家の東京と彦根の家職を取り上げ、「明治期井伊家の家職は、幕末維新時に活躍した旧彦根藩士(あるいはその子)から登用されていたと理解することができる。」と記しています。
(4)瀬戸口龍一「《研究論文》明治期における井伊家と士族たち -「相馬永胤日記」から見る彦根藩士族たちの動向-」(『専修大学史紀要』 7巻に収録 )
「本稿では、明治期における井伊家を取り巻く士族たちの動向を「永胤日記」から見てきた。」と書かれています。
なお、この論文は、専修大学学術機関リポジトリで公開されています。
https://senshu-u.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=2855&item_no=1&page_id=13&block_id=21
(2022年9月8日現在)
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
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- 1 井伊家の教え 井伊裕子∥著 朝日新聞出版 2016.12 S-2851- 16
- 2 井伊直憲 北村壽四郎∥著 西村忠∥編集 彦根史談会 2001年 S-2851- 01
- 3 三百藩藩主人名事典 3 藩主人名事典編纂委員会∥編 新人物往来社 1987年 S-2800- 87 p.310~311
- 4 20世紀日本人名事典 あ-せ 日外アソシエーツ株式会社∥編 日外アソシエーツ 2004年 R-2810-ニ p.132
- 5 市制五十年の軌跡 本間正夫∥著 近江同盟新聞社 1986年 S-3151- 86
- 6 明治彦根藩士族譜 中村達夫∥編 八光社 1972年 S-2851- 72
- 7 幕末維新の彦根藩 佐々木克∥編 彦根市教育委員会 2001年 S-2551- 01 p209~240,p.196~208
- 8 彦根城博物館研究紀要 通巻23号 彦根城博物館 P p.76~93
- 9 人間風物詩 舛野宇一郎∥著 滋賀日日新聞社 1966年 S-2800- 66 p.107~117
- 10 明治期における井伊家と士族たち : 「相馬永胤日記」から見る彦根藩士族たちの動向 瀬戸口 龍一∥[著] 専修大学大学史資料課 2015年3月31日 p.68~90
- キーワード
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- 彦根藩
- 藩主
- 明治~大正期
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000335154