レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年08月31日
- 登録日時
- 2022/07/06 15:47
- 更新日時
- 2022/08/22 10:49
- 管理番号
- 川図21-07
- 質問
-
解決
35度くらいのお湯に浸かるとぬるくてどちらかと言うと冷たいのに、35度の気温だと直射日光を浴びていなくても暑く感じるのはなぜか。
- 回答
-
[1]当館所蔵資料から、下記を紹介した。
(1)伊東章「身のまわりの化学工学 気温33℃は暑く水温33℃は冷たいのはなぜ -空気と水の伝熱係数のはなし-」『化学工学』,Vol. 73, No. 4, 199 (2009) p.199
人体が感じる「暑い」、「冷たい」を定義してから、気温33℃は暑い、水温33℃は冷たいことについて説明している。
(2)『人間はどこまで耐えられるのか』(フランセス・アッシュクロフト著、河出書房新社、2002)
p.131-176「第3章 どのくらいの暑さに耐えられるのか」、p.177-219「第4章 どのくらいの寒さに耐えられるのか」に質問と近いエピソードとその解説がある。以下抜粋。
p.153「人間は空気が十分に乾いていれば、体温よりかなり高い気温でもほぼ普通に過ごせる。しかし湿度が七五%を超えると、汗は蒸発せずに水滴のまま肌をしたたり落ちる。(中略)気温も湿度も極端に高いと不快に感じるのだ。」
p.154「気温五〇℃で湿度が極度に高いと大半の人は耐えられないが、九〇℃でも空気が乾いていれば短時間なら快適でさえある。(中略)水の中に入っているときは、汗をかいても熱を放出する効果はない。したがって、自分の体温より熱い風呂に全身が長く浸かりすぎると命にかかわる。」
p.186「水は空気よりはるかに速く体の熱を奪うので、同じ温度の水と空気の場合、水中のほうが生存できる時間ははるかに短い。」
p.196「水は熱伝導率がとても高く(空気の二五倍)、二〇℃以下の水に浸かっていると体から熱がどんどん放出され、低体温症で死ぬのだ。」
(3)『熱と温度の科学』(石原顕光著、日刊工業新聞社、2019)
p.122-123「羽毛布団とサウナは空気のおかげ」という項目で、空気と水の熱伝導の違いによって羽毛布団とサウナの例を用いて説明している。
p.14-15「同じ温度のモノを触ってみよう」とp.52-55「12 熱の伝わりやすさ」では熱伝導について解説されている。
(4)『はじめての生理学 下(植物機能編)』(田中(貴邑)冨久子著、講談社、2016)
p.281-285「2 熱放散の方法」に以下の記述があった。
p.282「互いに接触している物体間では、熱は高温側から低温側へ伝導により伝えられます。(中略)伝導による熱の移動量は、皮膚温と物体の温度との差、接触面積および物体の熱伝導度に比例します。とは言っても、空気の熱伝導度は小さいので、われわれが空気中にいる限り、直接に伝導によって失われる熱はきわめて少しです。しかも、皮膚温と同じ温度になった薄い空気層(境界層、厚さ4~8mm)が皮膚面を覆っているので、伝導による熱の移動はさらに少ないことになります。気温100℃のサウナ風呂でやけどをしないのも、この境界層のお陰です。」
(5)『温度と人間』(C.E.A.Winslow著、医歯薬出版、1966)
p.27-55「第Ⅱ章 身体からの放熱経路」、p.57-106「第Ⅲ章 温熱条件の変化に対する人体の適応」に関連すると思われる記述があったので紹介した。
p.53 表11に複数の条件での放熱量を輻射、対流、蒸発による割合でまとめている。温度が34.7℃では蒸発による放熱量が88%を超えている。
p.63「体温調節機構は、蒸発によって、比較的低い皮膚温(35~36℃)と安定した深部体温(37~38℃)とを保つに必要な汗の量を分泌し続けるが、湿度が低ければ体温をはるかにこえた高温の場合でも、これにより調節は可能である。」という記述がある。
p.70「(前略)環境温度が上昇するにつれて、対流と輻射による放熱が減少していき、作用温度34℃以上では、これに代って熱収受が漸増する。」という記述がある。
(6)『人間の許容限界ハンドブック』(関邦博編、朝倉書店、1990)
p.384 体温調節の4つの経路(伝導、対流、輻射、蒸発)について、高温条件下で唯一有効なのは蒸発(発汗)だけであることが説明されている。
p.381-383 図36.5「風冷指数を求めるノモグラム」が掲載されている(温度と風速から人がどのように感じるかを割り出せるもの)。
p.399-403 図38.6「種々の温度条件下での各放熱量、生理的状態値の予測と相対湿度」が掲載されている。
(7)『人体(からだ)の限界びっくり博学知識』(博学こだわり倶楽部編、河出書房新社、2007)
p.20-21「気温200℃でもヒトは耐えることができる?!」という項目に「お湯とサウナでは、たとえおなじ温度でも液体と気体であり、中にふくまれる分子の量がちがう。(中略)水と水蒸気では分子の数が一〇〇〇倍以上もちがい、皮膚が受けるダメージも段ちがいなのだ。」とある。
(8)OLYMPUS 自然科学観察コンクール 「38℃の日は暑いのに38℃の風呂に入ると熱くないのはなぜか」https://www.shizecon.net/award/detail.html?id=15 (2022年7月6日最終閲覧)
全国の小・中学生を対象とした理科自由研究コンクール「自然科学観察コンクール」(通称:シゼコン)の入賞作品。中学生が実験を通して、疑問への回答を出そうとしている。
(9)TBS 全国こども電話相談室 「気温が38度だとすごくあついのに、お風呂だとあまりあつくないのはなんでですか?」https://www.tbs.co.jp/kodomotel/life/20040822_1.html (2022年7月6日最終閲覧)
2008年9月28日をもって放送を終了しているようだが、回答を見ることができたため紹介した。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 衛生学.公衆衛生.予防医学 (498)
- 熱学 (426)
- 基礎医学 (491)
- 参考資料
-
-
伊東, 章 , Ito, Akira , 伊東, 章 , Ito, Akira. 連載 身のまわりの化学工学5 気温33℃は暑く水温33℃は冷たいのはなぜ 一空気と水の伝熟係数のはなし-. 2009-04. 化学工学 73(4) p. 199-
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000025-I007149058-00 -
フランセス・アッシュクロフト 著 , 矢羽野薫 訳 , Ashcroft, Frances M, 1952- , 矢羽野, 薫, 1969-. 人間はどこまで耐えられるのか. 河出書房新社, 2002.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003638859-00 , ISBN 4309251609 -
石原顕光 著 , 石原, 顕光. 熱と温度の科学. 日刊工業新聞社, 2019. (B&Tブックス. おもしろサイエンス)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I029452587-00 , ISBN 9784526079252 -
田中(貴邑)冨久子 著 , 田中,富久子. はじめての生理学 : カラー図解 下(植物機能編). 講談社, 2016. (ブルーバックス ; B-1979)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I071554069-00 , ISBN 4062579790 -
C.-E.A.Winslow, L.P.Herrington 著 , 北博正, 竹村望 訳 , Winslow, Charles-Edward Amory, 1877-1957 , Herrington, L. P , 北, 博正, 1910-1999 , 竹村, 望. 温度と人間 : 温熱の生理衛生学. 医歯薬出版, 1966.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001080761-00 -
関邦博 [ほか]編 , 関, 邦博, 1944-. 人間の許容限界ハンドブック. 朝倉書店, 1990.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002048889-00 , ISBN 4254100868 -
博学こだわり倶楽部 編 , 博学こだわり倶楽部. 人体の限界 : びっくり博学知識 : あなたのカラダに秘められたスゴイ能力と意外な弱みを大公開!. 河出書房新社, 2007.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008588245-00 , ISBN 9784309650609 -
OLYMPUS 自然科学観察コンクール. 38℃の日は暑いのに38℃の風呂に入ると熱くないのはなぜか.
https://www.shizecon.net/award/detail.html?id=15 (2022年7月6日最終閲覧) -
TBS 全国こども電話相談室. 気温が38度だとすごくあついのに、お風呂だとあまりあつくないのはなんでですか?.
https://www.tbs.co.jp/kodomotel/life/20040822_1.html (2022年7月6日最終閲覧)
-
伊東, 章 , Ito, Akira , 伊東, 章 , Ito, Akira. 連載 身のまわりの化学工学5 気温33℃は暑く水温33℃は冷たいのはなぜ 一空気と水の伝熟係数のはなし-. 2009-04. 化学工学 73(4) p. 199-
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000318343