レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2014年07月06日
- 登録日時
- 2018/10/08 00:30
- 更新日時
- 2020/04/29 00:30
- 管理番号
- 3A18002329
- 質問
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解決
大阪天満宮周辺は江戸時代、造り酒屋が立ち並び、良質な地下水を使った酒造りが盛んで、「天神之水」「千日寺の水」「秋田屋之水」「愛宕之水」を総称して「大坂四清水」といわれていたそうだが、この「大坂四清水」に言及している文献はあるか。
- 回答
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「大坂四清水」について記述のあった資料を以下にご紹介します。
『古版大阪案内記集成 翻刻・校異・解説・索引篇』 (塩村 耕/編 和泉書院,1999.2)
p.339-621に 『難波丸』(元禄九年四月刊)が掲載されており、このうちp.505(難波丸・三冊目)「○丸三・下三十一ウ」に、
「愛宕之水 大坂之内聚楽町に有」
「千日寺の水 道頓堀の内堀井の水也
此水ハ酒を醸するに堪たりとて大坂酒
店多く此一水をくミ用ゆに不尽事奇也」
「秋田屋之水 道頓堀川の茶屋に有
井水なり千日寺ノ傍にして水性を
同じくす」
「天神之水 天満に有井水也
右四ヶの水ハいづれも名井にして諸
方に賞翫す酒に和して美味有」
と記述があります。
また、前述の『難波丸』の記述は、次の資料にも引用されています。
『浪速叢書 第1 攝陽奇観』 (船越 政一郎/編纂校訂 浪速叢書刊行会,1926)
「攝陽奇観 巻之六 南水雑志 巻之二」の
p.363-364に「千日寺堀井ノ水」「道頓堀秋田屋ノ水」の項があり、「千日寺の水」「愛宕之水」「秋田屋の水」「天神之水」についての記述があります。
与謝野有記「「天満の名水」を再び」『てんまてんじん : 大阪天満宮社報』第61号(大阪天満宮社務所,2012.1)p.6-7の中に、
「「天満天神の水」は美味しかった!」という記事があり、前述の『浪速叢書』にある「摂陽奇観」の記述が引用されています。
『大阪府全志 巻之二』(井上正雄/著 清文堂,1985)
p.278-279「第一章 摂津國 第一節 大阪市 第一項 東區 愛宕清水」の項があり、
「粉川町通の善安筋に當れる附近は俗に愛宕を呼び、…(中略)…千日の堀井の水・道頓堀の秋田屋の水・天滿天神社内の天神の水と共に稱せられたる大阪四所の淸水の一にして、茶家者流の賞用する所たりしが、人家設せられて今其の址詳ならず。」とあります。
p.1035「第一章 摂津國 第一節 大阪市 第四項 北區 天神水」の項があり、
「而して天神水は表門内東側にあり、今は手洗所の水に使用せらる、千日寺の堀井の水・道頓堀の秋田屋の水・聚楽町の愛宕の水と共に稱せられて、大阪四所の淸水と呼ばれし名泉なり。茶道家は用いて賞翫し、大坂城代は江戸參覲に際し、途中の飮用水として之を携えしと。」とあります。
『上方 : 郷土研究 2(下)』 (上方郷土研究会/編集 新和出版社,1969)
第22号p.991-998「五十年前の道頓堀ニュース(東波山人)」という記事中p.991-992に、「秋田屋井戸」についての記述があります。
『上方 : 郷土研究 4』 (上方郷土研究会/編集 新和出版社,1970)
第43号p.576「愛宕井址(佐古慶三)」の項があります。
商用データベース「ヨミダス歴史館」(読売新聞)「大阪天満宮井戸掘削プロジェクト 名水復活伝統の酒を 水質調査、太鼓判=大阪」(2011.9.2大阪朝刊)p.29 に、大阪四清水の一つ「天満天神の名水」と称されたこと、当時は付近で酒造りが盛んだったことが書かれています。
- 回答プロセス
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1 『古版大阪案内記集成 翻刻・校異・解説・索引篇 』( 塩村 耕/編
和泉書院, 1999.2)で“愛宕之水”、“千日寺の水”、“秋田屋之水”、“天神之水”を確認し、資料1が見つかる。
2 『大阪府全志 索引』(佐古 立子/編 ; 松本 冴子/編
清文堂出版, 1986)の「事項索引」で“愛宕清水”、“天神水”を確認し、資料2が見つかる。
3 『浪速叢書 第16 索引』(船越 政一郎/編 名著出版, 1979)でp.27-28「〔地理門〕名水」の項を確認。資料3が見つかる。
4 「おおさかポータル」( http://www.library.pref.osaka.jp/site/osakaportal/ )(2019.1.11確認)でキーワードを”井戸”または”名水”で検索し、ヒットした資料を確認。資料4が見つかる。
5 『上方 : 郷土研究 別巻 索引』のp.213-225「Ⅴ地誌および交通・運輸とそれらの周辺 地誌」の項を確認。“秋田屋井戸(道頓堀)”と“愛宕井址”あり。資料5と6が見つかる。
6 新聞記事が検索できる商用データベースで“大阪四清水”を検索すると、資料7が見つかる。
- 事前調査事項
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「聚楽館古蹟」:「また側に愛宕井(あたごのゐ)といふあり。」(『摂津名所図会』巻之四)
「愛宕清水」:「清泉にして甘味なり。則ち所の字をあたごと号す」(『摂津名所図会大成』巻之二)
「秋田屋清水」:「中の芝居の東の方、浜側の河岸にあり(中略)其の始め秋田屋といへる芝居茶屋の有し故、かくハ号けり」(『摂津名所図会大成』巻之八)
「粉川町(近世~近代)」:「当町善安筋には聚楽第の移転にともない移されたと伝える愛宕清水があり、付近一帯は愛宕と俗称された。この清水は千日前の堀井の水、道頓堀の秋田屋の水、天満天神社内の天神の水とともに大坂四か所の清水の1つに数えられ、茶人の賞用する水であったという」(『角川日本地名大辞典』)
鐘成の「愛宕清水」は『摂陽群談』を引いています。「大坂四清水」に言及があるのは、『角川日本地名大辞典』のみでした(出典は示されていません)
- NDC
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- 日本 (291 9版)
- 参考資料
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- 当館書誌ID <0000766209> 古版大阪案内記集成 翻刻・校異・解説・索引篇(重要古典籍叢刊 1) 塩村 耕/編 和泉書院 1999.2 (資料1)
- 当館書誌ID <0000172307> 大阪府全志 巻之2 井上 正雄/著 清文堂 1985 9784792402716 (資料2)
- 当館書誌ID <0070068893> 浪速叢書 第1 船越 政一郎/編纂校訂 浪速叢書刊行会 1926 (資料3)
- 当館書誌ID <5211434002> [雑誌製本] てんまてんじん -大阪天満宮社報- 2006年- / 49号- 大阪天満宮社務所/[編] 大阪天満宮社務所 2006.00-2100.12 (資料4)
- 当館書誌ID <0000245124> 上方 -郷土研究- 2下 自第十九号(昭和七年七月)至第二十四号(昭和七年十二月) 上方刊行会/監修 新和出版社 1969.10 (資料5)
- 当館書誌ID <0000245405> 上方 -郷土研究- 4 自第三十七号(昭和九年一月)至第四十八号(昭和九年十二月) 上方刊行会/監修 新和出版社 1970 (資料6)
- 商用データベース「ヨミダス歴史館」 (資料7)
- キーワード
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- 大阪府大阪市中央区
- 大阪府大阪市北区
- 四清水
- 道頓堀
- 千日前
- 秋田屋
- 愛宕清水
- 大阪天満宮
- 天神の水
- 名水
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000243492