レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年10月07日
- 登録日時
- 2021/03/07 14:05
- 更新日時
- 2021/03/18 09:32
- 管理番号
- 県立長野-20-106
- 質問
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未解決
廃坑になった小串(おぐし)鉱山にかかっていた索道の支柱が、木製から鉄製に換えられたのはいつか。昭和4年以降と思われる。
- 回答
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当館所蔵の小串鉱山、高山村関係、軌道、索道関係の資料を確認したが、小串鉱山で使用された索道の支柱更新について触れた資料は確認できなかった。
初期の小串鉱山は長野県側にあり、硫黄は架空索道を使い須坂方面へ搬出、須坂からは、鉄路で輸送されていた。その後発見された鉱床は群馬県側にあったが、引き続き索道による運搬が続けられていた。群馬県側の道路整備が進んでからは、嬬恋村からのトラック輸送に代わっていった。
小串鉱山関係の資料から索道に関する記述を抜き出して、年次順に整理すると、次のようになる。
大正5年 東洋硫黄鉱山:東洋硫黄採掘したが不成功
大日本硫黄が事業を買収
高井鉱山と改称
大正7年 高井鉱山経営を東洋硫黄が引き継ぐ
大正9年 索道 樋沢-根石
大正12年 小串鉱床発見
昭和2年 高井鉱山廃抗
昭和4年 小串鉱山を北海道硫黄へ譲渡、操業開始
索道 鉱山(小串/山元)-黒部/樋沢(高山村)10.8Km架設
(『日本近代の架空索道』p.245)
昭和7年 充填鉄索架設
昭和12年11月 地滑り発生
昭和13年頃 操業再開
運鉱鉄索整備
昭和25年 山元鉄索場移設並付帯工事
昭和27年 須坂―万座線巡行バス
昭和28年 毛無峠下を毛無隧道で抜く。「毛無隧道」
昭和4年以降の索道関係工事は、昭和7年の充填鉄索架設、昭和12年地滑り発生以降の施設整備、昭和13年運鉱鉄索整備、昭和25年山元鉄索場移設並付帯工事のどこかで行われていることが考えられる。しかし、地すべり後の設備整備については、既設の索道について特に取り上げていないため、まったく被害がなかったのか、被害があった部分だけ新たに支柱の更新が行われたのかはわからなかった。
『高山村誌 第2巻』p.667を見る限り、過去の借地、鉄索に関する契約書は、高井村他一町五カ村組合長と交わされている。高山村にその後の架設、または架け替えの書類が保存されていれば、確認できるかもしれない。
- 回答プロセス
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1 当館所蔵の小串鉱山にかかわる資料を調べる。(郷土分類N565 長野県の鉱山)索道の支柱の更新についての記述は確認できない。
2 郷土分類N536、NDC分類536の書棚で索道に関する資料を見るも、索道の支柱の更新についての記述は確認できない。郷土史を扱う雑誌の記事検索を「小串」で行い、関係記事を調べる。
3 旧・小串鉱山は上高井郡高山村に立地したことから、『高山村誌』を見る。借地、鉄索等に係る文書が掲載されており、契約の相手方として「高井村他一町五カ村組合長」とあり、刊行されていない行政文書の形で保存されている可能性が考えられる。当館では『嬬恋村誌』を所蔵していないため確認できなかった。
4 支柱を更新する工事の申請が県に出されているかもしれないため、『長野県史 近代資料編 史料総目次』長野県編 長野県史刊行会 1991【N209/11-1/ベツ3】を調べる。また、長野県立歴史館の所蔵の行政文書を検索したが、存在を確認できなかった。
5 『小串鉱山労働組合運動小史』冬木正次編 小串鉱業所労働組合 1966 および『小串鉱山史-小串鉱山閉山10周年記念誌-』 小串会編・刊 1981 を須坂市立図書館から借受け調べたが、支柱更新についての記事は確認できなかった。
6 調査の過程で、小串鉱山と高山村と行き来について、索道は鉱物だけに使用し、人間は「毛無道」と呼ばれる街道を使っていたことがわかってきたので、当館資料を「毛無道」で検索すると、『歴史の道調査報告書XXIX』がヒットする。索道の様子や鉱山で賑わっていた頃の記述があったが、支柱の更新についての記事は確認できなかった。
<調査資料>
・田中生夫著 「小串鉱山盛衰記」『須高』 第13号 p.35-44
・『思い出の郷 小串小・中学校同窓生名簿』
小串小・中学校同窓生名簿作成委員会編 長野県 1951 【N376/65】
・中崎隆生「小串鉱山の暮らし」『長野県民俗の会通信』 第256号 2016.11 p.1-5
・『輝ける「鉱山」の物語』 八町忠著・刊2017 【N560/4】
・『鉱山の盛衰と山師』 斎藤保人著 ほおずき書籍 2016 【N569/4】
・『歴史の道調査報告書XXIII-XXIX』
長野県教育委員会編 長野県文化財保護協会 1990 【N682/53-1/5】
・『架空索道』 二宮勝太郎編 興学館 1941 【516/8】
- 事前調査事項
- NDC
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- 非鉄金属 (565 10版)
- 運輸工学.車両.運搬機械 (536 10版)
- 中部地方 (215 10版)
- 参考資料
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斎藤達男/著. 日本近代の架空索道. 1985-08.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059392113-00 (【536/20】p.245) -
高山村誌編纂委員会/編. 信州高山村誌 第2巻. 高山村誌刊行会, 2005-03.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I058924206-00 (【N214/99/2】p.667) -
八町 忠/著 , 八町 忠 , 八町 忠. 輝ける「鉱山(やま)」の物語 : 小串鉱山(硫黄) 第2版. 八町 忠, 2017-06.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I086408263-00 (【N560/4】)
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斎藤達男/著. 日本近代の架空索道. 1985-08.
- キーワード
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- 小串鉱山
- 索道
- 信州学
- 高山村
- 毛無道
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000294810