レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2014年06月20日
- 登録日時
- 2015/01/29 11:58
- 更新日時
- 2015/03/17 15:44
- 管理番号
- 埼久-2014-156
- 質問
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解決
「しのぶもじずり」という和歌に出てくる「しのぶ」は、福島市の「信夫山」または「信夫支所」のどちらを指しているのか知りたい。
「みちのくの人形たち」(深沢七郎著)で引用されていた。
- 回答
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「信夫もぢずり」の「信夫」は福島県の「信夫郡」や「信夫」という地名と解釈とされている。信夫山または信夫支所と特定した記述は見つからない。
- 回答プロセス
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原典を確認する。
『深沢七郎集 6』(深沢七郎著 筑摩書房 1997)
p86 「しのぶもじずりの“しのぶ”という草もあって、シダです」との注釈あり。掛詞になっていると思われる。
p94 「しのぶもじずり」が河原左大臣の詠んだ歌で、百人一首であるとあり。
百人一首・古今和歌集関連資料を調査する。
『小倉百人一首を学ぶ人のために』(糸井通浩編 世界思想社 1998)
p130 14首目「みちのくのしのぶもぢずりたれゆゑにみだれそめにしわれならなくに(河原左大臣・古今集・恋四・七二四)」あり。現代語訳では「陸奥の信夫郡のしのぶもぢずりの乱れ模様のように」となっており、「しのぶもぢずり 本来の意は、忍草で乱れ模様を擦りつけたものであるが、『俊頼髄脳[としよりずいのう]』は「しのぶ」を陸奥の信夫郡と解している。『顕註蜜勘[けんちゅうみっかん]』にも「陸奥国の信夫郡に(中略)」とあり、定家も同様に解している」とあり。
『百人一首を楽しくよむ』(井上宗雄著 笠間書院 2003)
p38-39 しのぶもぢずりの訳として、陸奥の信夫郡を挙げている。
『小倉百人一首』(藤縄敬五著 有朋堂 1992)
p20 該当歌の語句の説明によると、「信夫もぢずり」の意味として、「陸奥の信夫郡(福島県)から産した乱れ模様の摺り布(後略)」とある。
『百人一首増註』(加藤磐斎著 八坂書房 1985)
p87 該当歌の語句注釈によると、「「しのぶ」は地名説(「信夫」が通説だが忍草説もある。」との記述あり。
『新日本古典文学大系 5 古今和歌集』(佐竹昭広編集 岩波書店 1989)
p220 該当歌の脚注によると、歌の解釈では「陸奥国の信夫郡で」とあり、語句の解釈では「しのぶ 地名の「しのぶ(郡)」と草の名「しのぶ(草)」を掛ける。」とある。
『新編日本古典文学全集 11 古今和歌集』(小学館 1994)
p278 該当歌の頭注によると、「「しのぶ」は今の福島県の信夫という地名とも、染料とした植物の名前ともいわれるが、裏に「忍ぶ恋」を暗示する語。」とあり、脚注の歌の解釈では、「陸奥の信夫で産するしのぶもじずりの・・・」とある。
『日本古典文学大系 8 古今和歌集』(岩波書店 1958)
p244 該当歌の頭注によると、福島県信夫(しのぶ)郡から産出したすりぞめで、しのぶぐさの色素で、もじれた模様に染めたのでいうと。」とある。
地名を調査する。
『日本歴史地名大系 7』(平凡社 1993)
冒頭に旧郡界の図あり、信夫郡は現在の福島市とほぼ同域である。
p94-95 「信夫郡」に、「当初の郡域は現在の福島市と伊達郡(平安時代中頃分割)の地域であった」、「百人一首にも取り入れられた河原左大臣源融の「陸奥の信夫もぢずり誰れ故に乱初にし我ならなくに」の歌で知られる信夫もじずりは信夫郡から産出した染め布である」とあり。
- 事前調査事項
- NDC
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- 詩歌 (911 9版)
- 日本 (291 9版)
- 参考資料
- キーワード
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- 福島県-地名
- 和歌
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 地名
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000166893