レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013年04月24日
- 登録日時
- 2014/02/26 17:54
- 更新日時
- 2022/05/15 14:08
- 管理番号
- 島根郷2013-04-001
- 質問
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解決
富田と比婆山の間にあった会見郡の金石寺の釣鐘が、どのような経緯で現在福岡市の西光寺にあるのか知りたい
- 回答
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当館所蔵の下の資料を紹介し、回答とした。
質問の釣鐘について、大谷従二氏が雑誌『大社の史話』に3論文を投稿している(資料1、2に所収)。
(1)「流転の鐘(一)」(13号, p.4-8)
(2)「流転の鐘(二)」(14号, p.2-4)
(3)「解けた名釣鐘のルーツ:元出雲大社所在の承和銘古鐘」(34号, p.3-7)
これらの内容から、釣鐘が西光寺に移った経緯を下にまとめる。
・鐘の銘文に「承和六年鴨部立造 便伯耆国金石寺鐘」とあり、元々は伯耆国(現鳥取県)金石寺の鐘であった(34号, p.3-4)
※金石寺は現存していない。現在の鳥取県琴浦町にある船上山にあったと考えられる(34号, p.5-7)
・『懐橘談』には、永正7(1510)年、尼子経久が出雲大社造営した際、伯州(伯耆国)から買い取って寄付したという逸話が載っている(34号, p.4)
※『懐橘談』は、松江藩松平直政の待儒であった黒澤弘忠が、承応2年1653年に記した出雲地方の紀行である
・寛文5(1665)年の出雲大社造営時に、この釣鐘は別当寺である影向山松林寺に移された(34号, p.4)
・明治22年、松林寺と神門郡にある多福寺の住職を兼任していた中野太一郎が、経済的な理由からこの鐘を売り出す。松江の金物業者から、大阪の古物商大澤庄兵衛が入手(34号, p.4)
・明治29年、福岡の西光寺が購入した(34号, p.4)
資料3:56号, p.1-7 中和夫著「影向山 松林寺のこと」
黒目次郎兵衛が、明治22~25年にかけて記した『杵築古事記』に、「旧大社別当寺松林寺由緒」があり、これには釣鐘について、以下の内容が書かれているとのこと。
・永正12(1515)年、松林寺と領主尼子晴久との間に争議があり、晴久は松林寺を焼き亡ぼした
・この後すぐに、晴久は亡くなるが、これを仏罰だと考えた尼子氏家臣山中鹿介が、罪障散解のため、松林寺再興した
・「釣鐘は伯州入郡末石の城外に金石寺と言う寺のありしを兵火に焼亡し、釣鐘は野中に猶」あったものを、小船で運んだ
・その後、吉川氏により、本堂や護摩堂は焼亡する。残った山門も天保5(1834)年には皆崩れたため、釣鐘は下ろし、明治22年までも今の新松林寺にある
論文著者の中氏は、この釣鐘の経緯を、「黒目翁の誤解に基ずいたものと思われる」と述べている。
資料4:p.393-399「多福寺梵鐘」
これによれば、以下の由緒だとのこと。
・元来伯耆国金石寺の為に造られた梵鐘
・永正7年尼子経久が伯州より買取り出雲大社神宮寺に寄付した
・神仏分離により、寛文5年大社町松林寺に下賜される
※山中鹿介が再度寄付した説もあるが、定かではない
・明治中期に多福寺住職義孝は、松林寺住職を兼務していて、梵鐘は多福寺の管理下にあった
・多福寺住職の雑録には、明治22年松林寺の窮状を救うために売却を決意した旨がある
・福岡の西光寺保存の梵鐘売渡の書類にも、多福寺・松林寺が並列せられている
・『福岡市の文化財』(福岡市教育委員会, 昭和60年発行)によれば、西光寺へ納まったのは、明治30(1897)年とのこと
- 回答プロセス
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参考:九州国立博物館HP 特別展での解説(http://www.kyuhaku.com/pr/exhibition/exhibition_pre108.html 最終確認2014/2/26)写真あり。
- 事前調査事項
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質問者より:現在は福岡県福岡市早良区内野の西光寺にあり、国宝となっている。この梵鐘には承和六年金石寺のために製作したという文言が彫られており、西光寺仏に「大阪に於いて出雲から売りに出ていた梵鐘を大阪商人から買った」との内容が残されているらしい。
- NDC
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- 寺院.僧職 (185 8版)
- 金属彫刻.鋳造 (715 8版)
- 参考資料
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【資料1】大社の史話 12〜28号. 大社史話会, 1976.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000487481-00 (当館請求記号 092.4/0016/12-28 ※貸出禁止資料) -
【資料2】大社の史話 29~39号. 大社史話会, 1979.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069505072-00 (当館請求記号 092.4/0016/29-39 ※貸出禁止資料) -
【資料3】大社史話会/編. 大社の史話 第55〜69. 大社史話会, 1985.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000496132-00 (当館請求記号 092.4/16/55-69 ※貸出禁止資料) -
【資料4】郷土誌川跡. 郷土誌川跡刊行委員会, 1991.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069338986-00 (当館請求記号 092.94/143 ※貸出禁止資料)
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【資料1】大社の史話 12〜28号. 大社史話会, 1976.
- キーワード
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- 鐘--歴史
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000149835