レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年08月07日
- 登録日時
- 2021/11/09 20:12
- 更新日時
- 2021/11/09 20:13
- 管理番号
- 横浜市中央2631
- 質問
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解決
国立国会図書館が所蔵している江戸時代の著作物『蕎麦物語』の、内容(特に薬味についての記述)と作者の情報を探している。
- 回答
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1『蕎麦物語』の書誌事項について
(1)『国書総目録 第5巻 す-て』 岩波書店 1990.5
p.340-341 「蕎麦物語」の項
「一冊 類:戯文 著:表口庵有理 成:寛延四序 写:国会」
(2)「国文学研究資料館 日本古典籍総合目録データベース」(2021/9/29確認)
著作URL:http://dbrec.nijl.ac.jp/KTG_W_1372970
著者URL:http://dbrec.nijl.ac.jp/KTG_A_449150
紙媒体の『国書総目録』にはない情報は以下の通りです。
・著者名のよみ…紙媒体では著者名目録に、読み仮名「ひょうこうあん」
とありましたが、データベースでは「ひょうこうあん/ゆうり」
となっていました。
・分類 …いずれも分類が「戯文」となっていますが、データベースでは
分類の一覧表が提供されており、読本、洒落本、滑稽本、草双紙などの
戯作には属さないもの、ということが一応確認できました。
(3)『日本食文化図書目録 江戸~近代』太田泰弘/編 日外アソシエーツ 2008.4
p.101 「蕎麦物語」の項
「著者名」表口庵有理「刊写本」1751(寛延4年)写本「所蔵」国立国会図書館
「内容解説」戯文で実用書ではない
「参考資料」新島繁『蕎麦史考』(錦正社、1975)
(4)『屋代弘賢・不忍文庫蔵書目録 第6巻 書誌書目シリーズ』
朝倉治彦/編 ゆまに書房 2001.03
国立国会図書館オンラインの書誌情報では、刊行年、著者名の読みの記述は
ありませんでしたが、「阿波国文庫・不忍文庫」の印記の注記があったため、
当館所蔵の不忍文庫目録を確認しました。「雑著」部に「蕎麦物語」の
記載がありましたが(p.194)、書名以外の記述はありませんでした。
2『蕎麦物語』の内容について
(1)『蕎麦の事典』 新島繁/編著 柴田書店 1999.11
『蕎麦物語』の項目があります。記述内容はおおむね以下の通りです。
・寛延四年(1751)六月、表口庵有理著の戯文
・自序と目録が三丁、本文が三三丁
・前半は、蕎麦が役味である大根・山葵・紫菜(のり)・花松魚(はなかつお)
など一族を引きつれ、米に対して謀叛を起こすのを擬人化した異類合戦物語
・後半は、浅草の草庵にこもった蕎麦のもとに、茄子・朝顔・芍薬・鳳仙花・
薑(はじかみ)が集まり清談する本草物語
(2)『「蕎麦全書」伝 現代語訳』 日新舎友蕎子/著 新島繁/校注
ハート出版 2006.7 p.14
(3)『食の風俗民俗名著集成 第4巻 蕎麦全書』新島繁/校注
東京書房社 1985 p.14
(4)『蕎麦年代記』 新島繁/著 柴田書店 2002.02 p.197
以上3件はいずれも『蕎麦史考』(新島繁/著 錦正社 1975.9)に
収録されている『蕎麦全書』について、著者(新島繁氏)が記述した
解題のなかで、『蕎麦物語』に言及した以下の部分を引用しています。
「『蕎麦全書』が出来た寛延四年十月より四ヵ月前の六月に、表口庵有理の
『蕎麦物語』が著わされたが、この本は蕎麦と役(薬)味の品々を擬人化した
異類合戦物に属する戯文であって、実用の書ではない。」
なお、『蕎麦史考』は、当館で所蔵していないため、神奈川県立図書館から
借用して確認いたしました。『蕎麦全書』が分離された
『蕎麦うどん名著選集』版で、『蕎麦物語』に関する記述は
発見できませんでした。
3 異類合戦物語からの調査
残念ながら、『蕎麦物語』が紹介されている文献は発見できませんでした。
確認した資料は以下の通りです。
(1)『擬人化と異類合戦の文芸史』 伊藤慎吾/著 三弥井書店 2017.8
p.283~287 「異類合戦物一覧」
(2)『万物滑稽合戦記 続帝国文庫』 石井研堂/校訂 博文館 1901.5
異類合戦物39編を翻刻収録
(3)「擬人化され、可視化される植物・食物」 伊藤信博/著
『アジア遊学』 (154), p.82-106 2012
同じ論文がインターネット上でも公開されています。
「植物の擬人化の系譜」『言語文化論集』
31(1),p.3-34, 2009. 名古屋大学大学院国際言語文化研究科
https://nagoya.repo.nii.ac.jp/records/12185(2021/9/29確認)
『蕎麦物語』に似た異類合戦もの『化物大江山』(恋川春町/著、
安永五年(1776)黄表紙)が紹介されていました。
「鰹節、大根おろし、陳皮、唐辛子等の蕎麦の薬味が(中略)饂飩を退治し、
江戸から追放する物語」
(4)「黄表紙の中の"擬人化"される食物―庶民生活との位相をめぐって」
畑 有紀/著
『味の素食の文化センター研究成果報告<2016年度研究助成>』 2018.6
https://www.syokubunka.or.jp/research/pdf/201604.pdf(2021/9/29確認)
同じく、『化物大江山』への言及があり、擬人化された薬味として大根、鰹節、
陳皮が挙げられています。
(5)『風流江戸の蕎麦 中公新書』 鈴木健一/著 中央公論新社 2010.9
p.127-154
(6)『江戸の戯作絵本 第1巻 現代教養文庫』 小池正胤/〔ほか〕編
社会思想社 1980.12
p.35-60 翻刻・校注
『化物大江山』については翻刻・校注・解説等が多数ありますので、
ご参考までに上記2冊をご案内いたします。
4 著者(表口庵有理)について
近世文学や戯作者の人名としてお探ししましたが、記述を発見することは
できませんでした。
いずれも刊行が寛延年間よりすこし後になるものですが、
念のため確認した資料は以下の通りです。
なお、文学関係者以外の可能性もありますが、調査には至りませんでした。
ご了承ください。
(1)『燕石十種 第2巻』 〔岩本活東子/編〕 中央公論社 1979.7
p.23~54「戯作者小伝」 p.55~92「戯作六家撰」
(2)『近世物之本江戸作者部類 岩波文庫』 曲亭馬琴/著 岩波書店 2014.6
(3)『戯作者撰集 笠間叢書』 広瀬朝光/編著 笠間書院 1978.9
(4)『戯作者考補遺』 木村黙老/著 ゆまに書房 1976
(5)『日本随筆大成 第2期 第11巻』 日本随筆大成編輯部/編 吉川弘文館
1994.11
p.241~316 「新増補 浮世絵類考 戯作者略伝」
(6)『近世文芸家資料綜覧』 森銑三/〔等〕編 東京堂出版 1973.2
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 食品.料理 (596 8版)
- 衣食住の習俗 (383 8版)
- 小説.物語 (913 8版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000307380