レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年06月01日
- 登録日時
- 2020/07/22 14:12
- 更新日時
- 2020/09/16 12:47
- 管理番号
- 名古屋市天-2020-001
- 質問
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解決
江戸中期の儒者・漢詩人服部南郭の漢詩に「笛を聞く」という作品がある。この作の最後の句は「三弄都て断腸の声と為る」(さんろうすべてだんちょうのこえとなる)となっているが、句頭の「三弄」という言葉は「「三路が笛・三弄が笛」の物語り」といわれる説話を示唆しているらしい(『大言海』による)。この説話の内容を知りたいが何か資料はないか。
- 回答
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以下の資料を紹介いたしました。
(1)『新編大言海』
(2)『幸若舞3』
(3)『日本国語大辞典 第二版 第6巻』
(4)『江戸詩人選集 第3巻』
- 回答プロセス
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質問者に見せていただいた詩吟のテキストには、「笛を聞く」という作品の原文(書下し文)と通釈が掲載されていまして、通釈の註に「「三路が笛・三弄が笛」のことは、大槻文彦の著「大言海」の中に見え」と紹介されていました。
『新編大言海』p.898に「さんろがふえ」という見出し語があり、「幸若舞ノ詞曲ノ烏帽子折ニ記セル伝説ニ起ル」、「幸若、烏帽子折ニアル文を転記ス」として関連個所が典拠として引用されているのが確認されました。
検索したところ、幸若舞の「烏帽子折」は『幸若舞3』に収録されていることが分かりました。同書p.13以下にこの説話が展開されていました。関連する部分はかなり長いものでしたが、p.268以下の解説の部分ではこの説話のあらすじ等を含めて詳細な紹介がされていました。
さらに『日本国語大辞典 第二版 第6巻』p.419には「さんろが笛」という見出し語があり、説話の簡単なあらすじが載っていました。
並行して服部南郭に関する文献をいくつか取り寄せてこの詩に関する解釈を探してみました。そのうち『江戸詩人選集 第3巻』p.25-27にこの詩が収録されていました。「三弄」の語註に中国の史書『晋書』を出典とする伝説の紹介がありました。『幸若舞3』に含まれている説話は用明天皇に関わる物語であるのに対して、こちらで紹介されている方は、中国の晋王朝時代の「笛の名手として聞こえた」「桓伊」という人物にまつわるエピソードでした。二つの話は同一ではなさそうですが、一応両方の説を紹介し、以上の4点の資料の該当箇所を提供いたしました。
- 事前調査事項
- NDC
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- 漢詩文.日本漢文学 (919 9版)
- 参考資料
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大槻文彦 著 , 大槻, 文彦, 1847-1928. 新編大言海. 富山房, 1984.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001718270-00 , ISBN 457200062X -
荒木 繁 [ほか]編注 , 荒木 繁. 幸若舞 3. 平凡社, 1990. (東洋文庫 ; 417)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I060957105-00 , ISBN 4582804268 -
日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編 , 小学館. 日本国語大辞典 第6巻 第2版. 小学館, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003013601-00 , ISBN 4095210060 -
日野竜夫 [ほか]編纂 , 服部, 南郭, 1683-1759 , 祇園, 南海, 1677-1751 , 山本, 和義, 1936- , 横山, 弘, 1938-. 江戸詩人選集 第3巻. 岩波書店, 1991.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002108377-00 , ISBN 4000915932
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大槻文彦 著 , 大槻, 文彦, 1847-1928. 新編大言海. 富山房, 1984.
- キーワード
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- 服部南郭
- 聞笛
- 三弄が笛
- 三路が笛
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 『新編大言海』や『幸若舞3』に紹介されているエピソードと『江戸詩人選集 第3巻』の注に引用されているエピソードとは別物であると思われる。質問者は詩吟を学ばれており、それのテキストに記載されているのは前者。念のため後者のものと併せて提供した。
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000284888