レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年03月18日
- 登録日時
- 2022/03/18 10:40
- 更新日時
- 2022/03/18 11:09
- 管理番号
- 千県東-2021-0014
- 質問
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解決
ズボンのチャックのことを「社会の窓」というが、いつどのように使われ始めたのか。また最近では聞かなくなったが使われなくなったのか。
- 回答
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発祥については、以下の資料に掲載がありました。
【資料5】「しつこく問います「社会の窓」(明るい悩み相談室)」(『朝日新聞』1991年1月13日)p18
新聞読者から、自身の父親が言い始めた言葉で、昭和27年に中学の社会の先生のチャックがいつも開いていたのを「見ろ、また社会の窓、前をあけてら」と言っていたのが元である、との投稿が寄せられたとある。
これは【資料1】『日本俗語大辞典』の記載「もと男子学生用語」とも合致する。
【資料2】『俗語発掘記消えたことば辞典』等にラジオ番組を由来とする説も掲載されているが、【資料3】『20世紀死語辞典』にあるとおり、なぜかという理由までは書かれていない。
また、使われなくなったことについては、1997年発行の【資料4】『世紀末死語事典』や2000年発行の【資料3】『20世紀死語辞典』には掲載があり、この頃には既に使われなくなってきていたと思われる。一方で、その後も新聞記事や雑誌記事で「社会の窓」という用語は使われていることは確認できる。
- 回答プロセス
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当館契約データベース「JapanKnowledge」を「全項目:社会の窓」で検索。『デジタル大辞泉』に項目があるが、由来等についての記載はない。
当館開架の請求記号「813(辞典)」周辺をブラウジングし、以下の資料を確認した。
『隠語大辞典』(木村義之編 皓星社 2000)p568に項あり。由来等についての記載はない。原典は『警察隠語類集』(1956)。
『新修隠語大辞典』(皓星社 2017)p364に項あり。上記と同内容の記載。
【資料1】『日本俗語大辞典』(米川明彦編 東京堂出版 2003)p275「しゃかいのまどがあいている」で項あり。「もと男子学生用語。なお「社会の窓」というラジオ番組が先にあった。」用例として掲載されているもので一番古いものは『週刊読売』(1955年8月28日号)が挙げられている。
【資料2】『俗語発掘記消えたことば辞典』(米川明彦著 講談社 2016)p47「エム(M)」の項に、「Mボタンはズボンの前開きの部分のボタンのこと」とあり、「「社会の窓」とも言うが、これは戦後のラジオ放送名から出たことばだ」ともある。またp218には『朝日新聞』(2013年8月10日朝刊be)に「よみがえらせたい死語」という特集があり、16位に「社会の窓」があるという。
【資料3】『20世紀死語辞典』(20世紀死語辞典編集委員会編 太陽出版 2000)p68に項あり。「ズボンのファスナーが「社会」なのかは謎。」とある。
【資料4】『世紀末死語事典』(加藤主税編著 中央公論社 1997)p83に項あり。時期等についての記載はない。
「ズボン – Wikipedia」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BA%E3%83%9C%E3%83%B3)のリンクから、「なんで「社会の窓」って言うの? 今は聞かれなくなった死語の由来 | 社会人生活・ライフ | 社会人ライフ | フレッシャーズ マイナビ 学生の窓口」(https://gakumado.mynavi.jp/freshers/articles/11450)に、「昭和23年から放送されていたNHKのラジオ番組『インフォメーションアワー・社会の窓』に由来しているそうです」とある。参考として『死語大辞典』(死語研究会編 彩図社 2008)を挙げている(当館未所蔵)。
「聞蔵2ビジュアル」を「キーワード:社会の窓」で簡易検索し、関連のある記事として以下の記事がヒットした。「どうして「社会の窓」っていうの?(明るい悩み相談室)」(1991年1月6日)、
【資料5】「しつこく問います「社会の窓」(明るい悩み相談室)」(1991年1月13日)
当館所蔵の縮刷版で確認した。
『朝日新聞縮刷版 1991年1月』(朝日新聞社 199)「明るい悩み相談室」は、中島らもが読者からの質問に回答する形式の記事。p242(1月6日18面)の記事に由来等についての記載はない。p572(1月13日18面)の記事に、発祥についての記載がある。
また最近の記事では、「運動で、すこやかライフ 健康・医療フォーラム」(2017年4月22日朝刊17面)や「(カイシャの進化)YKK 「ハイエンド」に逃げない」(2016年11月7日朝刊4面)で「社会の窓」という言葉が使われている。
国立国語研究所「ことばに関する新聞記事見出しデータベース」(https://bibdb.ninjal.ac.jp/sinbun/)で、「簡易検索:社会の窓」で検索したところ、上記【資料5】の他にも「新語 社会の窓」(毎日新聞 1963年4月13日)、「私の創作語今も」(読売新聞1995年4月29日)投稿者から昭和24年に「新語作りに熱中していた私は、ズボンの前ボタンを意味した「Mボタン」という言葉を「窓ボタン」と言い換え、さらに「社会の窓」という言葉にした。」それが、広く使われるようになった、との投稿が寄せられている
Web-OYAbunkoを「社会の窓」で簡単検索。
「「明治」の謎に迫る 第4章 庶民生活の謎 “前開き”の股引の発明は西洋文明を垣間見る“社会の窓”だった?」(『宝石』(1994年4月))当館所蔵資料で確認するが、由来等についての記載はない。
「今週をなっとく アソコが横開きの男性下着が登場で思う、なぜ“社会の窓”と呼ぶの」(『女性自身』(1997年3月4日))県立未所蔵
「ラジオ新時代がはじまったとき。歴史の証言者が語る。」(『東京人』(2005年4月))由来等の記載はない。
こちらも最近の記事では、「芸能・スポーツ・永田町 旬NEWSワイド 意外と気づかない“体のSOSサイン” あなたの隠れ老化緊急チェック10 ペットボトルが開けられない!社会の窓が開いている!」(『週刊大衆』2021年4月19日))などがヒットした。
<確認したが掲載のなかった資料>
『20世紀のことばの年表』(加藤迪男編 東京堂出版 2001)
『明治・大正・昭和の新語・流行語辞典』(米川明彦編著 三省堂 2002)
『昭和レトロ語辞典』(清野恵美子著 講談社 2007)
『現代<死語>ノート』(小林信彦著 岩波書店 1997)
『現代<死語>ノート 2』(小林信彦著 岩波書店 2000)
『死語読本』(塩田丸男著 白水社 1994)
『「死語」コレクション歴史の中に消えた言葉』(水原明人著 講談社 1996)
『現代死語事典 わすれてはならない』(大泉志郎[ほか]著 朝日ソノラマ 1993)
『現代死語事典 わすれてはならない 続』(永沢道雄[ほか]著 朝日ソノラマ 1995)
『現代用語の基礎知識 60年拡大版』(自由国民社 1960)
『現代用語の基礎知識 1966』(自由国民社 1965)
『現代用語の基礎知識 1971』(自由国民社 1970)
「毎索」「ヨミダス歴史館」を「社会の窓」で検索したが、由来等についての記事はヒットしなかった。
(インターネット最終アクセス:2022年3月4日)
- 事前調査事項
- NDC
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- 語彙 (814 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『日本俗語大辞典』(米川明彦編 東京堂出版 2003)(2101661912)
- 【資料2】『俗語発掘記消えたことば辞典』(米川明彦著 講談社 2016)(2102783259)
- 【資料3】『20世紀死語辞典』(20世紀死語辞典編集委員会編 太陽出版 2000)(2101273690)
- 【資料4】『世紀末死語事典』(加藤主税編著 中央公論社 1997)(0105339689)
- 【資料5】「しつこく問います「社会の窓」(明るい悩み相談室)」(『朝日新聞』1991年1月13日18面)
- キーワード
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- 社会の窓(シャカイノマド)
- 前立て(マエタテ)
- チャック(チャック)
- ファスナー(ファスナー)
- 俗語(ゾクゴ)
- 死語(シゴ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000313751