レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年03月05日
- 登録日時
- 2021/07/19 11:30
- 更新日時
- 2021/08/18 19:56
- 管理番号
- 中央-1-0021484
- 質問
-
解決
日本書記の乙巳の変で、蘇我入鹿が殺される前に、「俳優(わざひと)」に剣を預けたとあるが、この「俳優」について。
「俳優」はいつ頃に発生して、またその後の歴史の中でどう続いて行ったのか。
また「俳優」は宮廷道化師との説もあるが、日本の宮廷道化師の歴史にはどういうものがあるのか。
- 回答
-
はじめに「俳優(わざひと)」という言葉について調べたところ、「わざひと」以外に「わざおぎ」「わざをぎ」の読みがあった。
以下の資料に、主に「わざおぎ」という読みでの「俳優」についての記述あり。
(1)『芸能辞典』演劇博物館/編 東京堂出版 1977年
p681「わざおぎ」の項
わざおぎの言葉の成り立ち、歴史、「日本書紀」や「古事記」における用例などが約1ページにわたって解説あり。一部抜粋して紹介。
「神を招き降ろすわざで、神懸(かむがかり)の所作などをさすが、児童の口ずさむ歌に神意が表われるから童謡(わざうた)というた如く、ひろく信仰的演技をいったとも思われる。つまり古代芸能の基本である。(略)意義目的からすれば、神を招来せしめんとする神懸であり、状態からいえば没我の狂乱で、笑うべき態となる。」
また、後世の猿楽や狂言への発展についても述べられてる。
p532「俳優(はいゆう)」の項
「演劇にて、戯曲中の人物に扮して演技する者。」という、現在の俳優の意味に近い解説が主に書かれている。その中で、「わが国で最も古く“俳優”の字が見えるのは、『古事記』『日本書紀』の神話の中」であり、「古事記・日本書紀等生成の奈良時代には、それに類した俳優、芸能人が専業ではなくとも存在したことが考えられる」と書かれている。
p283「古代藝能」の項
古代藝能全般について広く解説されている項だが、「『日本書紀』には俳優(わざおぎ)とある。これは滑稽な身振りという意味であった。」など、「俳優(わざおぎ)」についても一部触れられている。
(2)『精選折口信夫 4 芸能史論』折口信夫/著 岡野弘彦/編 慶應義塾大学出版会 2019年
p130~149「古代演劇論」のうち、p130~136の「一 俳優の存在」に、「俳優(わざをぎ)」の歴史や宗教との結びつきについて詳しく書かれている。一部抜粋して紹介。
p130「この神代記の“俳優”が、果して今の演劇人と言ふ義の俳優に近い意味を持つてゐるか、此は大分疑問がある。(中略)特に演劇風な動作と言ふよりも、宮廷を守護警衛するための、呪術風な動作を行うたことを言ふものらしい。」
「宮廷道化師」という言葉についての資料は見つからなかったが、上記の文中には「宮廷を守護警衛するため」という解説があり、俳優(わざおぎ)と宮廷との関係性についてふれられている。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 演劇史.各国の演劇 (772 10版)
- 参考資料
- キーワード
-
- 俳優
- 日本書紀
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000301927