レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年12月1日
- 登録日時
- 2021/10/13 17:48
- 更新日時
- 2022/06/07 14:48
- 管理番号
- 県立長野-21-142
- 質問
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「過疎対策としてもつくられたビーナスライン」という観点で、長野県が開発計画を立てた当初に発行した資料を探している。『ビーナスライン沿線の保護と利用のあり方研究会提言≪最終報告≫』の所蔵館を知りたい。長野県内の図書館、国立国会図書館にはないようだ。また『中信高原の開発・破壊の実態ならびに哺乳動物相』 宮尾岳雄著 信州哺乳類研究会 1974 のp.6-7にかけて記述がある『県観光開発基本要綱』(p.7では『県観光開発基本要項』)とあるこの資料にも、求める記述があると思われるが、この所蔵先を知りたい。
- 回答
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『ビーナスライン沿線の保護と利用のあり方研究会提言≪最終報告≫』は、当館で新たに受入、登録したので、最寄りの公共図書館から相互貸借できる旨を案内した。
「過疎対策としてもつくられたビーナスライン」という観点で長野県が発行したものは、具体的なものは確認できなかった。
『長野県の開発発展に関する長期構想(昭和44年3月答申)』長野県総合開発審議会 1969 【N601/18】が当館資料のうち、中信高原スカイラインの計画に一番近い資料と思われるが、昭和39年に立案されたことを考えると、後年の資料になる。この資料中のp.10の過疎対策を述べている個所では、
(5)(-前略-)こんごも、この傾向は続くものと考えられ、地域社会の基礎的な生活条件を維持す
るために、集落の統合なども必要になってくるが、農林業の特性をいかにして高い生産性をあげうる
地域や、すぐれたレクリエーション地域として開発の可能性がある地域は、豊かな山村として発展し
よう。
(6) 広域的な生活圏域の整備にあたっては、都市地域と農山村地域を結ぶ圏域内の交通体系の確
立を基調として諸施策をすすめる必要がある。
と記している。また、p.38の自然の保護保全と開発に「広域周遊ルートの開発整備と施設の充実」で、
① 高速自動車道、新幹線鉄道の建設をはじめ幹線交通網の整備と相まって、中部山岳、上信越高
原、佐久高原、八ヶ岳中信高原、南アルプス、中央アルプス、南信濃、御岳等を有機的に結ぶ広域周
遊ルートの解説整備をすすめる必要がある。
とも記しているが、審議会の答申であり、県が書いたものとはいいがたいが、参考までに紹介した。
『長野県政史 第3巻』 長野県 1973 【N317/74/3】 p.393-394 に「住民運動と自治研活動」の自然保護の項目があり、中信高原スカイライン美ヶ原線(ビーナスライン)の記述があった。大石環境庁長官の昭和46年10月の視察が取り上げられているが、過疎化対策についての記述はない。また、同書p.459には、「県の過疎対策」の項目があり、
(-前略-)長野県の過疎地域振興方針は、①地域中心都市と過疎地域の中心集落を結ぶ交通網およ
び中心集落と各集落とを結ぶ道路等の整備、加入電話の増設、(-後略-)
など5点を挙げている。道路整備に触れているのは上記の部分だけで、ここにビーナスラインが含まれるのかは判断できない。なお、p.531-533の「地域開発と自然保護」の項目中p.533の「和田廻りルート」に変更した記述の箇所に、
建設運動に対して、一方中信高原スカイライン建設促進期成同盟会(会長武石村長永井泰美)など
では、過疎地振興の手段として促進運動を進めており、県の計画変更路線で建設が認められようとしている。
という記述があった。
『あすへの進路 県勢発展五ヶ年計画』 長野県編・刊 1971 【N317/71】 p.50-64の「自然と調和のとれた観光開発」の内、p.53の「広域観光ルートの整備」の項目で
高速道路、新幹線鉄道の建設をはじめ幹線交通網の整備とあいまって中部山岳、上信越高原、佐久
高原、八ヶ岳中信高原、南アルプス、中央アルプス、南信濃、御岳などを有機的に結ぶとともに、隣
接県との接続を考慮した広域周遊ルートを開発整備する必要がある。
このため、中部横断観光道路の整備促進、中央高原スカイラインなど開発道路の建設について検討
し、諸条件の熟するのをまって逐次実現を図る。
と記されている。続く、前後の文脈にも、過疎対策としての記述は見られない。同書p.35の「過疎地域の振興」の項目では、「過疎地域振興計画に基づき、道路などの交通施設を軸として」といった記述はあるものの、具体的にビーナスラインを示す記述は確認できなかった。
『中信高原の開発・破壊の実態ならびに哺乳動物相』 宮尾岳雄著 信州哺乳類研究会 1974 【N519/35】のp.6-7にかけて記述がある『県観光開発基本要綱』(p.7では『県観光開発基本要項』)について、県観光課などに照会したが、所蔵についてはわからなかった。
なお、長野県立歴史館に、近現代資料として所蔵されているものの中に、『長野県における観光開発の夢と現実 地域開発としての観光開発』1970 [G0-3-1-66]があったので、同館に照会したところ、
「中心高原スカイライン(ビーナスライン)についての記述が12頁にあった。過疎化現象の解消目的については直接触れられてはいないが、文脈からそうとれる記述も12頁にあった。県観光開発審議会によるものではなく県企業局が主体となっていたようだ。」
との回答を得た。
閲覧については、閲覧フォーム【最終確認2021.21.14】から事前に申し込みが必要。また、郵送による複写については、受け付けていないため、来館しての申し込みになる。資料によっては、電子複写できないものは、写真撮影となるため、カメラの持参も必要。
- 回答プロセス
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1 長野県立歴史館を含めた長野県内図書館の検索をするが、依頼者の事前調査のとおり、所蔵館しているところはない。取りまとめの主体であった県環境自然保護課(現・環境部自然保護課)へ照会したところ、残部があり資料を入手することができたので、受け入れ登録し対応することとした。
2 「ビーナスライン」「中信高原スカイライン」で、当館蔵書を検索する。
3 郷土分類N514(道路)、N682(交通史)等の書棚で資料を確認していく。
4 県の政策として、総合計画や中期計画などに含まれている可能性があるので、郷土分類N317(県政)の資料を見ていく。『長野県政史 第3巻』に建設促進期成同盟会が、「過疎対策の手段」と位置付けている旨の記述を見つける。
5 当館契約の「信濃毎日新聞データベース」で当時の記事を検索し、論調を確認する。
6 長野県庁内にある長野県行政資料情報センターが所蔵するものを、ホームページ上に公開しているファイルから関係しそうな資料を探す。『長野県の開発発展に関する長期構想(昭和44年3月答申)』を当館が所蔵していたので、内容を確認する。
7 後日、利用者から『中信高原の開発・破壊の実態ならびに哺乳動物相』に『県観光開発基本要綱』の記述がp.6-7にかけてある旨連絡があり、これの所蔵先を調査する。
8 県内図書館、NDLサーチ、CiNii booksにも所蔵先はない。観光開発審議会の答申のようなので、県観光部へ照会するが不明とのこと。長野県行政情報センターの蔵書リスト、長野県立博物館の所蔵目録を探すが、同資料は確認できない。ただし、長野県立歴史館で、ほぼ同時期に出された『長野県における観光開発の夢と現実 地域開発としての観光開発』を所蔵していることを発見。内容を確認してもらったところ、求めるものを含んでいるようにも見られたので、案内することとした。
<調査資料>
・『長野県の道路』 1968-1980 長野県土木部編 長野県 1968-1980 【N685/8】
・『伸びゆく長野県』 長野県総務部文書広報課編 長野県 1964 【N317/56】
・『長野県の都市計画 1971』 長野県編・刊 1971 【N317/76/1】
・『グラフ長野県1967』 長野県編・刊 1967 【N317/44/1】
・『霧ヶ峰の陸水』 長野県 1973 【N452/31】
・『ビーナス・ライン』 長野県企業局 1974 【290.2/270】
・『霧ヶ峰、蓼科山、八ヶ岳地域地下水調査報告書』 長野県土木部 1975 【N452/19/1】
・『霧ヶ峰、蓼科山、八ヶ岳地域地下水調査報告書 追補資料』 長野県土木部 1975 【N452/19/2】
・『美ヶ原高原の植生と荒廃地回復に関する研究』 長野県 1976 【N472/47】
・『霧ヶ峰有料道路美ヶ原線 森林関係調査報告書』 長野県企業局, 日本林業技術協会 1977 【N652/5】
・『霧ヶ峯牧野荒廃防止並びに改良に関する調査報告(第一報)』 長野県草地協会 1960【643/2】
長野県行政資料情報センターが所蔵するもの
・『霧ヶ峰有料道路美ヶ原線沿線の動物政体に関する調査報告書』長野県上小 1978 【22782】
・『霧ヶ峰の自然』 霧ヶ峰自然保護センター 1993 【22781】
・『美ヶ原高原植物調査報告書』 美ヶ原の自然と風土を考える会 1978 【22421】
※長野県の発行物ではない
- 事前調査事項
- NDC
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- 地方自治.地方行政 (318 10版)
- 観光事業 (689 10版)
- 環境工学.公害 (519 10版)
- 参考資料
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長野県生活環境部環境自然保護課/編集 , 長野県生活環境部環境自然保護課 , 長野県生活環境部環境自然保護課. ビーナスライン沿線の保護と利用のあり方研究会提言 : 最終報告書. 長野県生活環境部環境自然保護課, 2004-03.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I109548273-00 (【N519/357】) -
長野県総合開発審議会/編 , 長野県総合開発審議会. 長野県の開発発展に関する長期構想(昭和44年3月答申). 長野県総合開発審議会, 1969-00.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059197581-00 (【N601/18】) -
長野県. 長野県政史 第3巻. 長野県, 1973.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001207143-00 (【N317/74/3】 p.393-394) -
長野県/編 , 長野県 , 長野県. あすへの進路 : 県勢発展五ヶ年計画. 長野県, 1971-00.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059397564-00 (【N317/71】 p.50-64)
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長野県生活環境部環境自然保護課/編集 , 長野県生活環境部環境自然保護課 , 長野県生活環境部環境自然保護課. ビーナスライン沿線の保護と利用のあり方研究会提言 : 最終報告書. 長野県生活環境部環境自然保護課, 2004-03.
- キーワード
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- 中信高原スカイライン
- ビーナスライン
- 霧ヶ峰
- 美ヶ原
- 過疎対策
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査 所蔵機関調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000306048