レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020/10/16
- 登録日時
- 2020/11/03 00:30
- 更新日時
- 2020/11/19 12:48
- 管理番号
- 8305625
- 質問
-
解決
戦前から明治にさかのぼり、日本酒の「ラベルの起源」について書かれている資料、具体的には「樽貼り」に関する資料を探している。
「樽貼り」に関する資料が見つからない場合は、下記に関する資料を紹介してほしい。
1.明治初期の商業デザイン(チラシ・パッケージ類)の中で、木版多色刷りのものに関する資料。
2.明治期の東京の木版印刷所の業容や盛衰を記した資料。
(「金花堂印刷」がこの種の印刷物をかなり刷っているようで、現物が残っている。)
※「樽貼り」とは
一升瓶が流通するまで、酒は樽で運ばれたが、その樽に直接貼った木版多色刷りのラベルのこと。発祥は明治初年と思われる。
- 回答
-
下記の資料、データベース、インターネット情報などを確認しましたが、日本酒の樽貼りのラベルの起源について明言している資料は見当たりませんでした。
日本酒の樽貼りのラベルについて記載のある資料1から3までをご紹介します。
また、「明治初期の商業デザイン(チラシ・パッケージ類)の中で木版多色刷りのものに関する資料」、「明治の東京の木版印刷所の業容や盛衰を記した資料」については、調査の過程で確認した資料4から6までを参考までにお伝えします。
なお、明治時代のチラシ・パッケージ類の商業デザインの図集については、国立国会図書館オンラインで件名「包装 図集」、「パッケージ 図集」、「チラシ 図集」などで検索する、「商標」、「引き札」、「引札」、「明治」などのキーワードを掛け合わせて検索することで探すことができます。
【 】内は当館請求記号です。インターネットの最終アクセス日は2020年10月13日です。
末尾に「*」が付された資料は、国立国会図書館デジタルコレクションに収録されており、インターネット上で公開しています。
末尾に「**」が付された資料は、国立国会図書館デジタルコレクションに収録されており、国立国会図書館および図書館送信参加館内で公開しています。
資料1 時事通信社編. 吟醸酒・純米酒情報事典. 時事通信社, 1998.2【DL687-G119】
pp.6-13に石田信夫「日本酒票私史―ラベルは語る」が掲載されており、樽貼り以降の日本酒のラベルの紹介や、ラベルの発生についての考察などを行っています。pp.7-9で、ビジネスの気運が高まった当時の世相から、菰印とは別に銘柄を目立たせようとするアイデアが出て、菰を外した後の樽本体にラベルを貼りつけるようになったのではないか、蔵元ではなく酒を商う都市の問屋がその町の工房に依頼して始まったのではないか、浮世絵が振るわなくなった時代であるので浮世絵の関係者から問屋への積極的な売り込みによって生まれた可能性もある、など考察しています。ただし当時の文献からの引用などは記載されていません。
なお当該論稿では、幕末から明治にかけての食品の包装紙やラベル類を集めている専門機関として、「ケンショク食資料館」を紹介しています。同館は『専門情報機関総覧 2018』【UL2-L15】のpp.609-610に記載されておりますが、WEBサイトがなく現在の運営状況は不明であるため、参考までにお伝えします。
資料2 白鶴酒造株式会社社史編纂室編. 白鶴二百三十年の歩み. 白鶴酒造, 1977.10 【DH22-886】
p.203に「明治十七年に商標条例が発令されてはじめて「白鶴」が登録され、そのころより酒樽の鏡板へ鏡張りをするようになって、それを貼付したのである。右上写真はこの最初の鏡張りであって、口栓にはやはり前掲写真の「白嘉納」の印を押していた。」という記載が、p.202に「白嘉納」の印と最初の鏡張りの紙の画像の記載がありますが、樽本体に貼付されていた、という記述はありません。
資料3 京都市文化観光局文化観光部文化財保護課編. 伏見の酒造用具. 京都市, 1987.3 【DL687-E75】
p.123に「樽貼レッテル」が記載されており、「裸樽に直接銘柄を刷込む方法は古くから行なわれていたが、明治中頃には洋紙に活版印刷したレッテル(以前は木版手摺り)を貼ることを併用するようになった。この樽貼レッテルは基本的には印菰の図柄を踏襲したもので大型である。」と記載されています。木版手摺りについては詳細には記載されていません。
資料4 青木茂 監修 ; 町田市立国際版画美術館編輯. 近代日本版画の諸相. 中央公論美術出版, 1998.12 【KC227-G2】
pp.89-118に岩切信一郎「明治期木版文化の盛衰」が掲載されています。ただし商標ラベルの印刷については詳細な記載はありません。
資料5 張交帖 【本別9-24】* ( https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2610716 )
資料6 廣告商標張交帖 【W373-N34】**
日本酒の商標などを張り付けたスクラップブックです。例えば資料5は根岸武香旧蔵の「冑山文庫」に含まれるものですが、1巻の8コマに、「沢の鶴」と思われるラベルが貼り付けられています。なお、資料6のデジタル画像は白黒のため、色合いは確認できません。
(調査済資料、データベース、インターネット情報など)
・福田鹿蔵編. 全国醸造物登録商標便覧表. 太田竹次郎, 明36.2 【39-85】*
・日本登録商標大全. 第1-6編,摺附木之部. 東京書院, 明38 【特55-33】*
・佐藤虎雄編. 日本酒銘大鑑 : 登録商標称呼字別 三交堂出版部, 大正14 【537-96】*
・島屋政一. 日本版画変遷史. 大阪出版社, 昭14 【732.1-Sh44ウ】**
・浜政一. 新讃岐酒史. 香川県酒造組合連合会, 1967 【DL687-21】**
・信州の酒の歴史. 長野県酒造組合, 1970 【DL687-5】
・尼崎市立地域研究史料館編. 地域史研究 : 尼崎市立地域研究史料館紀要 : Bulletin of the history of Amagasaki 4(2) 尼崎市立地域研究史料館, 1974 【Z8-530】
・伊丹市立博物館編. 地域研究いたみ. (8) 伊丹市立博物館, 1978 【Z8-1042】
・加藤弁三郎編. 日本の酒の歴史 : 酒造りの歩みと研究 協和醗酵工業, 1976 【DL687-24】
・加藤弁三郎編 ; 加藤百一 [等]共著. 日本の酒の歴史 : 酒造りの歩みと研究 研成社, 1977.8 【DL687-32】
・月桂冠株式会社社史編集委員会編. 月桂冠三五〇年の歩み. 月桂冠, 1987.10 【DH22-E87】
・秋田県酒造組合編纂. 秋田県酒造史. 秋田県酒造組合, 1988.8 【DL687-10】
・穂積忠彦著. 新編・日本酒のすべてがわかる本. 健友館, 1995.3 【DL687-E209】
・酒とともに : 酒造りの正道を歩んで 朝日酒造, 1995.5 【DH22-L604】
・群馬県酒造組合, 群馬県酒造協同組合編. 群馬県酒造誌. 群馬県酒造組合, 1998.11 【DL687-G221】
・和歌山県酒造史編纂委員会編. 和歌山県酒造史. 和歌山県酒造組合連合会, 1999.1 【DL687-G228】
・月桂冠株式会社社史編纂委員会編. 月桂冠史料集. 月桂冠, 1999.2 【DH22-G351】
・藤原隆男. 近代日本酒造業史. ミネルヴァ書房, 1999.3 【DL687-G178】
・月桂冠株式会社社史編纂委員会編. 月桂冠三百六十年史. 月桂冠, 1999.6 【DH22-G350】
・広島市郷土資料館編. 広島の酒造史. 広島市教育委員会, 2002.10 【DL687-H2】
・柚木学. 酒造りの歴史. 新装版. 雄山閣, 2005.4 【DL687-H123】
・山形県酒造組合編. 山形酒の昨日・今日・明日 : 山形県酒造史 山形県酒造組合, 2005.5 【DL687-H136】
・日本包装技術協会編. 包装の歴史. 復刻・増補版. ピー・ディークリエイティブセンター, 2008.11 【DH451-J1】
・[高橋正人] [著]. 日本のしるし : 伝承デザイン資料集成. 第3巻 (商品・業種のしるし) 日本図書センター, 2009.1 【GB43-J70】
・岩切信一郎. 明治版画史. 吉川弘文館, 2009.8 【KC227-J3】
・鈴木芳行. 日本酒の近現代史 : 酒造地の誕生 吉川弘文館, 2015.5 【DL687-L88】
・近代化への夜明け前 : 明治の「商標」を見る. 第1巻 (登録商標明治18年). ネオテクノロジー, 2015.6 【M351-L424】
・近代化への夜明け前 : 明治の「商標」を見る. 第2巻 (登録商標明治19年). ネオテクノロジー, 2015.7 【M351-L425】
・近代化への夜明け前 : 明治の「商標」を見る. 第3巻 (登録商標明治20年). ネオテクノロジー, 2015.7 【M351-L426】
・月桂冠大倉記念館( https://www.gekkeikan.co.jp/enjoy/museum/ ) > フロアガイド > 屋号「笠置屋」・酒銘「玉の泉」( https://www.gekkeikan.co.jp/enjoy/museum/floorguide/history1/ )
樽貼ラベルと類似した、印菰の原図を紹介しています。
・国立国会図書館オンライン( https://ndlonline.ndl.go.jp/ )
・国立国会図書館サーチ( https://iss.ndl.go.jp/ )
・国立国会図書館デジタルコレクション( https://dl.ndl.go.jp/ )
・CiNii Books( https://ci.nii.ac.jp/books/ )
・CiNii Articles( https://ci.nii.ac.jp/ )
・ディープライブラリー( https://dlib.jp/ )
・リサーチ・ナビ( https://rnavi.ndl.go.jp/rnavi/ )
・レファレンス協同データベース( https://crd.ndl.go.jp/reference/ )
・国立公文書館デジタルアーカイブ( https://www.digital.archives.go.jp/ )
・アジア歴史資料センター( https://www.jacar.go.jp/ )
・Google Books( https://books.google.co.jp/ )
・雑誌記事索引集成データベース ざっさくプラス(皓星社)[当館契約データベース]
・企業史料統合データベース[当館契約データベース]
・聞蔵IIビジュアル[当館契約データベース]
・ヨミダス歴史館[当館契約データベース]
・毎索[当館契約データベース]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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関連する地域の図書館のレファレンスにて「ラベルの起源」について調べたが、一般書で該当するものは見当たらなかった。また、酒造記念館や博物館でも調べたが、瓶ラベル以降の資料しか見つからなかった。
(調査済み資料)
・「日本の酒文化総合辞典」(荻生待也編著, 柏書房, 2005/11)
・「酒蔵の町・新川ものがたり」(高木藤夫他編, 清文社, 1991.4-8)
・「東京新川の今昔」(岡村岑三郎著, 岡村岑三郎, 1963.8)
レファレンス協同データベースで「ラベル」「樽貼り」と検索したが、該当するものは見当たらなかった。
- NDC
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- マーケティング (675 10版)
- 参考資料
- キーワード
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- 日本酒
- ラベル
- 樽貼り
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 経済社会(レファレンス)
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 大学図書館 図書館
- 登録番号
- 1000288935