レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013年06月01日
- 登録日時
- 2013/07/28 00:30
- 更新日時
- 2014/03/27 14:38
- 管理番号
- 所沢本-2013-001
- 質問
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解決
蚕種「小石丸」が飼育されはじめたのは長野県であったと思うが確認したい。
- 回答
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『蚕種要録』(国会デジタル化資料)の p45~46に「天保度の信州種小石丸選出の由来」の記載があります。その内容は、信州種の中で最も古く享保の頃からあったという説、甲州小石和筋の丸山という人が享保年間から養蚕していた金丸の中から選出して評判になりそれを信州人が複製して売り広めた説、信州の小田中源右衛門が又昔の中から胴つまりの丸形なのを選出して名付けた説などが記載されていて、「結局孰れが事実か分からんが…」との記載があります。
また、『郷土の産業 養蚕・製糸』(上田博物館 2000年)26pに、「信州原産の蚕種としては、寛政1年(1789)頃、小県郡伊勢山村(上田市伊勢山)の小田中源右衛門(一説には山梨の小石和助)が、「中如来種」または「又昔」から、病気に強く、糸質のよい系統を選抜し、小石のように固いことから、これを「小石丸」と名付けました。」と記載があります。この本に記述のあった「山梨の小石和助」について記載されている資料は見つからず、山梨(甲州)の小石和筋(こいさわすじ)の名称は『江戸時代 人づくり風土記19 山梨』(農山漁村文化協会 1997年)の本にも記述がありました。
また、インターネットの「旧蚕糸・昆虫農業技術研究所のページ」には、保存蚕品種の小石丸の解説が次のとおり掲載されています。「練木喜三によれば、小石丸の由来は一説には享保の頃(1730)から信州種にあったといい、一説には甲州小石和筋の丸山という人が同家に亨保年間から養い来った金丸の中から飼い易く繭形が短く円い繭を選出し売り出したものが小石丸と称するようになったという。また、一説には小田中源右衛門が又昔の中から胴つまりの丸形のものを選び小石丸と命名したという。・・・以下省略」」(出典、平塚英吉編著:近代蚕品種育種記録(昭和36年)、日本蚕品種実用系譜(昭和44年))
他にも、以下の資料に記載があるようです。
『信濃蚕糸業史 中巻』(信濃毎日新聞社 1975年)p855に「小縣郡伊勢山村小田中源五郎の記載によれば曾祖父小田中源右衛門の時代即寛政の初年中如来種より特別良種を発見し試に是を飼育するに其蟲性強壮にして病感の憂なく而も遺伝力強く眠起斉一繭形稍々小と雖光沢優美解舒良好其質堅硬にして指頭の力を支ふるに足る恰も小石の如し。適々吾家伝来の繭形奇石あり、因て小石丸と名く是れ本邦小石丸種の起源なり。」と記載があります。
『蚕都上田ものがたり』(上田小県近現代史研究会 2008年)P32~P33に「コラム小石丸ものがたり」が掲載、「小石丸の由来について3つの説がある・・」の3つ目の説が小県郡伊勢山村(現上田市上野)の小田中源右衛門となっています。
『蚕都上田を築き支えた人びと』(上田小県近現代史研究会 2010年)P18~P21に「小石丸を発見した小田中家」についての記載があります。
『長野県小県郡史(復刻版)』(長野県小県郡役所 千秋社 1998年)P768に「天保年間伊勢山村小田中源右衛門、又昔の中より丸形の繭を作るものを選別す。名づけて「小石丸」といふ。」と記載があります。
『日本蚕品種実用系譜』(平塚英吉編著 財団法人大日本蚕糸科学研究所 1969年)P.11、『蠶(こ)と蠶飼い(こがひ)外史』(田中茂男 2010年)P.348、『蚕の品種改良と指定制度25年の歩み』(同編纂委員会 1982年)P.161にも、小石丸について記載があるようです。
- 回答プロセス
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1.養蚕関係資料縦覧
〇『近世養蚕業発達史』 庄司吉之助/著 御茶の水書房 1978年
→本文には記載がないが、参考文献として『蚕種要録』、『信濃蚕糸業史』、『養蚕秘録』が掲載
→『養蚕秘録-江戸科学古典叢書13ー』(恒和出版 1978年)には小石丸の記載なし
2.前項参考文献の所蔵館検索
〇『蚕種要録』 蚕業新報社編 蚕業新報社 1913年
→国会デジタル化資料、p45~46に「天保度の信州種小石丸選出の由来」の記載あり(2013/5/31最終アクセス)
〇『信濃蚕糸業史 中巻』 信濃毎日新聞社 1975年
→p855に「小縣郡伊勢山村小田中源五郎の記載によれば曾祖父小田中源右衛門の時代即寛政の初年中如来種より特別良種を発見し試に是を飼育するに其蟲性強壮にして病感の憂なく而も遺伝力強く眠起斉一繭形稍々小と雖光沢優美解舒良好其質堅硬にして指頭の力を支ふるに足る恰も小石の如し。適々吾家伝来の繭形奇石あり、因て小石丸と名く是れ本邦小石丸種の起源なり。」と記載あり、国会図書館、埼玉県立浦和図書館他で所蔵
3.webサイト検索
〇有限会社泉園(長野県上田市)のホームページ、【蚕種「小石丸の生まれし家」】に上田市の記載あり(2013/5/31最終アクセス)
〇「旧蚕糸・昆虫農業技術研究所のページ」に保存蚕品種の小石丸の解説が次のとおり掲載(2013/5/31最終アクセス)
「練木喜三によれば、小石丸の由来は一説には享保の頃(1730)から信州種にあったといい、一説には甲州小石和筋の丸山という人が同家に亨保年間から養い来った金丸の中から飼い易く繭形が短く円い繭を選出し売り出したものが小石丸と称するようになったという。また、一説には小田中源右衛門が又昔の中から胴つまりの丸形のものを選び小石丸と命名したという。・・・以下省略」(出典、平塚英吉編著:近代蚕品種育種記録(昭和36年)、日本蚕品種実用系譜(昭和44年))
4. 国立国会図書館サーチ検索で、前項の出典資料の所蔵館検索
〇『近代蚕品種育種記録』、国立国会図書館、山梨県立図書館、長野県立図書館所蔵
〇『日本蚕品種実用系譜』、国立国会図書館、山形県立図書館、都立中央図書館所蔵
5.関係機関問い合わせ
3.のwebサイトに【蚕種「小石丸の生まれし家」】に上田市の記載があったので、『郷土資料事典20 長野県』 (ゼンリン 1997年)の上田市を確認
→P97「上田市立博物館」の項目に “蚕糸業関係の資料収蔵”との記載があり、問い合わせをして次の資料を送付して頂く。
〇『郷土の産業 養蚕・製糸』 上田博物館 2000年
→p26に「信州原産の蚕種としては、完成1年(1789)頃、小県郡伊勢山村(上田市伊勢山)の小田中源右衛門(一説には山梨の小石和助)が、「中如来種」または「又昔」から、病気に強く、糸質のよい系統を選抜し、小石のように固いことから、これを「小石丸」と名付けました。」と記載
6.長野県立図書館より次の資料に記載と情報提供(長野県立図書館、国立国会図書館所蔵)
〇『蚕都上田ものがたり』上田小県近現代史研究会 2008年
→P32~P33 「コラム小石丸ものがたり」があり、「小石丸の由来について3つの説がある・・」の3つ目の説が小県郡伊勢山村(現上田市上野)の小田中源右衛門となっています。
〇『蚕都上田を築き支えた人びと』上田小県近現代史研究会 2010年
→P18~P21 「小石丸を発見した小田中家」
〇『長野県小県郡史(復刻版)』長野県小県郡役所 千秋社 1998年
→P768 「天保年間伊勢山村小田中源右衛門、又昔の中より丸形の繭を作るものを選別す。名づけて「小石丸」といふ。」
7.山梨県立図書館より次の資料に記載と情報提供(山梨県立図書館、国立国会図書館所蔵)
〇『日本蚕品種実用系譜』平塚英吉編著 財団法人大日本蚕糸科学研究所 1969年 P11
〇『蠶(こ)と蠶飼い(こがひ)外史』田中茂男 2010年 P348
〇『蚕の品種改良と指定制度25年の歩み』同編纂委員会 1982年 P161 (国会図書館は未所蔵)
8.その他、記載の無かった資料は以下のとおり
☓『養蚕の起源と古代絹』 布目順郎著 雄山閣 1979年
☓『蚕とともにあゆむ 』 埼玉県蚕糸業史編纂委員会 2006年
☓『絹の文化誌 』 篠原昭/[ほか]編著 信濃毎日新聞社 1991年
☓『まゆの国』 井上善治郎/著 埼玉新聞社 1977年
☓『桑の文化誌 』 千曲会/編 郷土出版社 1986年
☓『秩父 繭そして信仰』 埼玉県立博物館 1987年
☓『熊谷地方の養蚕』 熊谷市立図書館 2003年
☓『江戸時代 人づくり風土記20 長野』 農山漁村文化協会 1988年
☓『江戸時代 人づくり風土記19 山梨』 農山漁村文化協会 1997年
- 事前調査事項
- NDC
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- 蚕糸業 (630 9版)
- 参考資料
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上田市立博物館/編. 郷土の産業 : 養蚕・製糸. 上田市立博物館, 1981.p.26
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I032314086-00 -
蚕業新報社 , 蚕業新報社 編. 蚕種要録. 蚕業新報社, 1913.p45~46.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001551976-00 (国会デジタル化資料、著作権保護期間満了のため、複写可。) -
上田小県近現代史研究会 編. 蚕都上田ものがたり : 蚕種業を中心として. 上田小県近現代史研究会, 2008. (上田小県近現代史研究会ブックレット ; no.15).p32~33
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009861127-00 -
長野縣小縣郡 [著]. 長野県小縣郡史 復刻版. 千秋社, 1998.p.768
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002670982-00 , ISBN 4884772342 -
上田小県近現代史研究会 編. 蚕都上田を築き支えた人びと. 上田小県近現代史研究会, 2010. (上田小県近現代史研究会ブックレット ; no.17).p.18~21
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000011024426-00 -
平塚英吉 編著. 近代蚕品種育種記録. 蚕糸科学研究所, 1961.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001020895-00 -
平塚英吉 編著. 日本蚕品種実用系譜. 大日本蚕糸会蚕糸科学研究所, 1969.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I001011918-00 - 平塚英吉編著. 日本蚕品種実用系譜. 財団法人大日本蚕糸科学研究所, 1969. p. 11
- 田中茂男著. 蠶(こ)と蠶飼い(こがひ)外史. 2010. p. 348
- 蚕の品種改良と指定制度25年の歩み. 同編纂委員会, 1982. p. 161 (山梨県立図書館所蔵)
-
信濃蚕糸業史 中巻. 信濃毎日新聞社, 1975.p.855
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I001012951-00
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上田市立博物館/編. 郷土の産業 : 養蚕・製糸. 上田市立博物館, 1981.p.26
- キーワード
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- 小石丸
- 蚕種
- 長野県
- 上田市
- 小田中源右衛門
- 照会先
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- 上田市立博物館( 電話0268-22-1274 )
- 寄与者
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- 上田市立博物館
- 長野県立図書館
- 山梨県立図書館
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000134425