レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021/03/30
- 登録日時
- 2021/04/02 00:30
- 更新日時
- 2021/04/23 10:28
- 管理番号
- 9341826
- 質問
-
解決
鹿児島県にある「カクイ株式会社」が,昭和23年に衛生家庭綿指定工場になったことの裏付け資料を探しています。
カクイ株式会社のHPの“カクイの歴史”( https://kakui.co.jp/company/ )には「1948年(昭和23年)3月 衛生家庭綿指定工場に」とあります。(口頭では「家庭用綿製造指定工場」ともいわれました。)
このHP記述の裏付けとなる社内資料は、平成初期の水害により喪失しているとのことで,他に該当の資料がないかを探しています。
①昭和23年に「衛生家庭綿指定工場」もしくは「家庭用綿製造指定工場」というものがあったことが分かる資料
②①の資料が無い場合,昭和23年5月の商工省繊維局による「全國製綿指定工場」の通牒で,指定された工場名が分かる資料
- 回答
-
迅速に調査を行うため、照会事項を2分割しました。
ここでは「昭和23年に「衛生家庭綿指定工場」または「家庭用綿製造指定工場」が存在したことが分かる資料」について回答します。
「全国製綿指定工場」に関する商工省の通牒については、別に回答します。
【 】内は当館請求記号です。インターネットの最終アクセス日は2021年3月24日です。
末尾に「*」が付された資料は、国立国会図書館デジタルコレクションに収録されており、インターネット上で公開しています。
末尾に「**」が付された資料は、国立国会図書館デジタルコレクションに収録されており、国立国会図書館および図書館送信参加館内で公開しています。
末尾に「***」が付された資料は、国立国会図書館デジタルコレクションに収録されており、国立国会図書館内で公開しています。
お尋ねの「衛生家庭綿指定工場」や「家庭用綿指定工場」の存在が分かる資料等は見当たりませんでしたが、関連する情報が以下の資料に記載されていました。ご参考までにご案内します。
・厚生省薬務局療品課. 療品. 翠波書房, 昭和24
当館では未所蔵ですが、インターネット上でPDF画像を閲覧できます。
( http://www.tga-j.org/documents/i/1427/detail.html )(東京化粧品工業会ホームページ)
『療品』では、「医療並に保健衛生のために専ら使用されるところの物」を「療品」と一般的に定義し、その一例として、医師または家庭で使用する「衛生材料」を挙げています(p.19)。
続いて、「衛生材料の沿革」(pp.24-31)では、明治以降の衛生材料についての記載があり、「衛生家庭綿」については、次の記載があります(pp.27-28)。
(1)脱脂綿の代用として製造されていた「家庭綿」の所管が、昭和23年1月1日に商工省から厚生省に移管されたこと(原材料の保健衛生上の問題のため)
(2)「家庭綿」は、昭和23年9月21日に「衛生家庭綿」として国民医薬品集に収載され、規格が定められたことおよびその規定内容
国民医薬品集とは、[旧]薬事法(昭和23年7月29日法律第197号)に基づき、日本薬局方とともに公定書とされていたものです。
「薬事法によってしなければならない諸手続」(p.75-86) では、 [旧]薬事法で規定された「療品」関係の諸手続が解説されています。特に「衛生家庭綿」(国民医薬品集収載のため医薬品と考えられる)については、次のような記載があります。
(3)製造業者として登録が必要であること(p.76)ただし、衛生材料については製造許可は不要であること(p.79)
(4)販売業登録が必要であること(p.78)、年1回の登録更新が必要であり、提出する2通の更新申請書のうち1通は地方庁(都道府県)が控えとして持つこと(p.79)
なお衛生材料については、当時、原材料の割当や販売に関する配給制度等があったようです。
p.249以降に関連法令とともに記載されています。
また、カクイ株式会社に関連する情報として、当時の社名である山形屋産業合名会社の広告も掲載されています(517コマ目(ページ付けなし))。会社の肩書として、次の4つが記載されていましたので、ご参考までに紹介します。
「脱脂綿、衛生家庭綿製造」「製綿、特殊紡績製造」「衛生材料中央販売業者登録店」「製綿指定工場」
(調査済み資料およびデータベース)
・日本薬局方調査会 編. 国民医薬品集. 薬事振興会, 昭和23.7 【499.1-N77ウ】*
8ページで「衛生家庭綿」について定めています。
・厚生省 監修. 国民医薬品集. 第2改正. 日本薬学会, 1955 【499.1-Ko657k】**
第2改正では、「衛生家庭綿」の項目は見当たりません。
・社団法人日本衛生材料工業連合会50年の歩み. 日本衛生材料工業連合会50周年行事実行委員会, 2000.1【D3-J558】
24ページ「生理処理用の「衛生家庭綿」が登場」において、以下の記載がありました。
「同じ年[1949年]、厚生省薬務局は戦後の物資不足の中で(中略)保健衛生上危険と思われる不良衛生材料の徹底的な取り締まりを、薬務局長名で全国都道府県知事あてに通知しています。物価庁では、1949(昭和24)年4月7日付けで、脱脂綿不足を補うために、局方脱脂綿とは別に、落綿を原料とした「衛生家庭綿」という分類を新たに設けました。」
物価庁は1949年4月7日に告示第212号を出していますが、同告示は棉花の販売価格の統制類の指定を行うのみで、「衛生家庭綿」に関する記載は見当たりませんでした。また、物価庁が「衛生家庭綿」の分類を新設した事実も確認できませんでした。
・徳島県総務部県民統計課 編. 徳島県統計書. 昭和24年 第二編(第二部). 徳島県, 1951【351.81-To453t】**
106ページの「25 生產動態(製綿及び衛生材料製造業)」に脱脂綿(家庭用)の記載があります。
・10年史. 九州経済調査協会, 1956 【330.6-Ky999z】**
九州経済調査協会の20年史である『九州経済20年譜』に参考情報が掲載されている可能性がありますが、当館未所蔵のため確認できませんでした。同資料は貴館に所蔵があるようです。直接ご確認ください。
・西部衛生材料協会編「衛生材料業界沿革史」. 東洋紡績株式会社経済研究所月報. 東洋紡績経済研究所, (27)(1952.3) (マイクロ資料【YA-1743】で確認)
こちらは「衛生材料業界沿革史」の書評記事です。同資料は当館未所蔵ですが、福岡県立図書館等で所蔵しているようです。
・東京工場通覧. 下. 工業新聞社, 1947 【503.5-Ko5212t】**
衛生繊維製造業、製綿及打直業の項目があますが、指定工場については特に記載はありません。
・藥事日報社編集部 編. 醫藥品等統制額表 : 昭和24年9月20日現在. 藥事日報社, 1949.9 【AZ-581-H169】**
44-45ページ「6 衛生材料」において、脱脂綿、ガーゼと並んで「衛生家庭綿」の記載があります。これらの製品の統制額は、物価庁告示第1274号(昭和23年12月18日)で規定されましたが、その時点では「脱脂綿又衛生綿」と規定されており「衛生家庭綿」の用語は、次の改正である物価庁告示第547号(昭和24年7月29日)から使用されているようです。
・経済復興計画委員会報告書. 第2部. 経済安定本部経済復興計画委員会, 1949【332.1-Ke1163k】
・緒方章 監修. 国民医薬品集解説. 薬事日報社. 1949. 【a494-46】**
・日本薬局方. 第5改正. 朝陽会. 昭和7 【50-224ハ】)*
・日本薬局方. 第6改正. 厚生省 1951 【499.1-Ko657n】***
・厚生省20年史編集委員会 編. 厚生省20年史. 厚生問題研究会, 1960 【317.28-Ko657】**
・日本経済新聞社 編.経済教室.日本経済新聞社, 1949 【a330-555】***
・鹿児島県史 第5巻. 鹿児島県, 1967 【219.7-Ka177k2】***
・年報. 第1(昭和24年度). 東京都立衛生研究所. 1950 【498.076-To458n】**
・薬業経済研究所 編. 薬事年鑑. 昭和26年版. 日本薬業新聞社, 1951 【499.059-Y152-Y】**
・衛生行政業務報告 : 厚生省報告例. 昭和22年. 厚生省大臣官房統計情報部, 1951 【498.1-Ko657e】**
・日刊工業新聞社 編. 日本工業大観. 日刊工業新聞社, 1950 【502.1-N715n】**
・通商産業省 編. 商工政策史刊行会, 1965 【509.1-Tu783s】***
・日本纎維協議会 編. 纎維年鑑 昭和23年版. 纎維年鑑刊行会, 1948 【586.059-Se182-N】**
・日本纎維協議会 編.日本綿業講座. 日本銀行調査局, 1956 【586.221-N684n】**
・鹿児島商工会議所六十年史. 鹿児島商工会議所, 1954 【671.7-Ka177k】**
・厚生省 : 30年のあゆみ. 厚生省, 1968 【AZ-541-1】**
・西部衛生材料協同組合30年史. 西部衛生材料協同組合, 1985.2 【DH75-107】
・綿花百年. 日本綿花協会, 1969 【DL634-1】
・商工省纎維局纎政課 編. 纎維産業の現況. 纎維年鑑刊行會, 1949.2 【Y994-J3543】**
・日本繊維協會新聞局. 纖維産業要覧 1946年刊 .日本繊維協會新聞局, 1946 【AY-0249】**
・衛生. 衛生通信社, (72)-(73)(19549.11) 【Z498.05-E3】**
・通商産業省福岡通商産業局 編. 九州商工時報. 九州商工協会, 3(1)-3(10)(1949.7-10) 【Z3-1101】**
・九州経済調査協会 編. 九州経済統計月報. 九州経済調査協会, (33)(1949.10) 【Z3-284】**
・社会保険旬報. 社会保険研究所, (133)(1947.2)【Z6-271】***
・南日本新聞. 南日本新聞社, 1948年4月11日-5月10日, 6月15日-6月25日
(マイクロ資料【YB-152】で確認)
・官報. 物価号外第29号, 1949.4.17, 物価号外第60号. 1949.7.29 【YC-1】*
・官報. 物価号外第157号. 1948.12.18 【CZ-2-2】
・都道府県統計書データベース [当館契約データベース]
鹿児島県統計書:鹿児島県統計書 (鹿児島県/1946), 鹿児島県統計年鑑:鹿児島県統計年鑑 (鹿児島県/1951)
・NDLサーチ ( https://iss.ndl.go.jp/ )
・Cinii Books ( https://ci.nii.ac.jp/books/ )
・ヨミダス歴史館 [当館契約データベース]
・聞蔵IIビジュアル [当館契約データベース]
・毎索 [当館契約データベース]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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①について,「衛生家庭綿指定工場」「家庭用綿製造指定工場」をレファレンス協同DB,国立国会図書館デジタルコレクション,CiNii,インターネット等で調べましたが,このキーワードに合致するものを見つけることはできませんでした。また,鹿児島県公報の昭和23年3~5月,鹿児島市史,鹿児島県史,『鹿児島県蚕糸業史』『本邦綿糸紡績糸第1巻』には合致及び類似する記述がありませんでした。
②について,“指定工場”ד綿”ד昭和“でインターネットを調べたところ,類似情報として,日本ふとん製造協同組合のHPの“JFMA 沿革・歴史”( https://www.futon.or.jp/jfma-history/ )に「昭和23年5月 商工省通牒により,製綿指定工場制度が設定され,全国352工場,6月追加で452工場となる。」との記述を確認しました。
「製綿指定工場」で国立国会図書館デジタルコレクションを検索したところ,「繊維速報6」(通商産業省大臣官房調査統計部 編 (商工協会, 1948-06)Z586.05-Se2書誌ID000000013520)に「全國製綿指定工場を決定」という記事がありました。しかし,「九州(35)」と工場数が書かれているのみで,カクイ株式会社が含まれているかどうかは確認できません。
その後,リサーチ・ナビを参考に商工省の通牒について確認できないか調べましたが,見つけることはできませんでした。
①と②で名称や該当月が若干異なるため,2つは別物なのか判断がつかなかった。
- NDC
-
- 繊維工学 (586 10版)
- 参考資料
- キーワード
-
- 衛生家庭綿指定工場
- 家庭用綿製造指定工場
- 繊維工業
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 経済社会(レファレンス)
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 公立図書館 図書館
- 登録番号
- 1000296402