レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2021/04/28 13:58
- 更新日時
- 2021/04/28 15:55
- 管理番号
- 福参-1164
- 質問
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解決
明治期の九州において、西洋式水車(木造ではないタービン等)が使われだしたのはいつ頃か。
- 回答
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◆参考資料1『九州水車風土記』p171-172「集成館事業のなかの水車」に下記の記載あり。
「島津斉彬のつくった集成館は、文久三年(一八五三)の薩英戦争で灰燼に帰したが、この戦争で西洋文明の威力をまざまざと実感した薩摩藩は、集成館事業の再興を図った。<中略>また、西南戦争(一八七七)後、事業が民営に移ってからは、ペルトン式水車を設置して機械工場を動かした。」
◆参考資料2『九州地方電気事業史』p23に下記の記載あり。
「1892年、島津家では紡績所を含む集成館事業を再整理し、鉱山用機械の製作・修繕、刀剣・陶器・小道具などの製造を行う就成所を設置したが(注35)、その動力源として小規模な水力発電所が建設された。具体的には、邸内を流れる保津川の上流に取水口を設け、導水路で受水升→調整池→石造タンクと順に導き(注36)、タンクからの放水で小型のペルトン水車を回して発電したと思われる(注37)。これを機会に島津家では、自家用発電の電源を紡績所の火力から就成所の水力に切り替えることになった(注38)。
注35:島津忠重『炉辺南国記』島津出版会、1983年、p124
注36:水田丞「集成館事業に関わる近代化遺産の研究」(2002年度鹿児島大学大学院理工学研究科修士論文)
注37:前掲『炉辺南国記』p25
注38:「はじめは蒸気を原動力としていたが、のちに水力に改められた」前掲『炉辺南国記』p25」
p34の表1-14「九州の電気事業者の発電力・需要(1904年)」に11社の開業年月、原動力等の記載あり。原動力が火力の事業者は8社、水力の事業者は3社で、水力の事業者の中で開業年月が一番早いのが鹿児島電気で、「鹿児島電気 1898.8月 水力」の記載あり。その他、「竹田水電 1900.7月 水力」「日田水電 1901.12月 水力」の記載あり。
p44に下記記載あり。
「鹿児島電気は、株式の分割払込だけでは不足する資金を借入金で補いながら、発電所などの建設工事を進めた。1898(明治31)年7月には早くも小山田発電所が完成し、同年8月から鹿児島市内への送電を開始した。小山田(第一)発電所の設備は、水車がペルトン式、発電機がGE社製の三相交流であり<後略>」
p47に下記記載あり。
「日田水電の発電所建設工事は、洪水などの影響で若干遅れたが、1901(明治34)年10月には第一発電所が竣工した。第一発電所は、筑後川水系三隈川に設けられ、マコーミック・タービン水車(120馬力)と芝浦製作所製の三相交流発電機(60KW)を備え、2200Vの電圧で隈町大字庄手の発電所へ送電した。日田水電は、1901年12月から営業を開始した。」
p51の表1-35「九州のおもな自家用発電(1904年)」に24事業所の事業所(企業)名、県、使用許可年月日、電気力、発電方式、周波数の記載あり。発電方式が水力の事業所は3社で、その中で使用許可年月が一番早いのが槇峰鉱山(三菱合資)で、「槇峰鉱山(三菱合資 宮崎 1898.10 水力」の記載あり。その他「五木鉱山 熊本 1900.6 水力」「波佐見鉱山 長崎 1900.4月 水力・火力」の記載あり。
p56-57に下記の記載あり。
「槇峰鉱山は、<中略>シーメンス社製の直流発電機(50KW)と、それに直結するフォイト社製のスパイラル・タービン水車(75馬力)だけではなく、調整器などの付属機器もすべてシーメンス社から購入しており<中略>少なくとも翌1901年には運転を開始しており、成績はきわめて良好であった。」
p110-111に下記の記載あり。
「1912(明治45)年4月、九州水力電気は大分県日田郡中川村大字女子畑の玖珠川(筑後川水系)で、<中略>女子畑発電所の建設に着手した。それは、フォイト社製フランシス・スパイラル水車5600馬力、GE社製三相交流発電機3750KVAをそれぞれ5台(うち予備1台)設置した、九州で最初の1万KW超大容量水力発電所であった。<中略>こうして、13年12月15日には女子畑発電所および黒崎変電所の使用許可が下り、翌14年2月6日から八幡製鉄所への送電が開始された。」
◆参考資料3-6には明治期の九州での西洋式水車の使用について記載なし。
- 回答プロセス
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「水車」で自館検索し、参考資料1及び3-6を確認。
参考文献1の記載内容から西洋式水車は水力発電で使用されていたことがわかる。
「電気 九州 史」で自館検索し、参考資料2を確認。
- 事前調査事項
- NDC
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- 電気工学 (540 10版)
- 参考資料
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平岡昭利 編著 , 平岡, 昭利, 1949-. 九州水車風土記. 古今書院, 1992.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002212660-00 , ISBN 4772216308 (p171-172) -
九州電力株式会社 編集 , 九州電力. 九州地方電気事業史 : 1887明治20年〓2005平成17年. 九州電力, 2007.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I054123145-00 (p23,34,44,47,51,56-57,110-111) -
出水 力/著 , 出水‖力. 水車の技術史. 思文閣出版, 1987.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005645962-00 , ISBN 4784204997 -
平岡昭利 編 , 平岡, 昭利, 1949-. 水車と風土. 古今書院, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003011249-00 , ISBN 4772240284 -
前田清志 著 , 前田, 清志, 1930-. 日本の水車と文化. 玉川大学出版部, 1992.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002190771-00 , ISBN 4472101513 -
黒岩俊郎 [ほか]編 , 黒岩, 俊郎, 1926-. 日本の水車. ダイヤモンド社, 1980.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001454660-00
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平岡昭利 編著 , 平岡, 昭利, 1949-. 九州水車風土記. 古今書院, 1992.
- キーワード
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- 水車
- 水力発電
- 九州
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000297662