レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年09月09日
- 登録日時
- 2020/10/30 17:40
- 更新日時
- 2021/02/02 10:50
- 管理番号
- 県立長野-20-057
- 質問
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解決
長野県内の気象俚諺「十二の峰から来る夕立は大雨」の「十二の峰」がどの山のことを指すのか知りたい。また、なぜこのようなことが言われているのかもしりたい。
- 回答
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1.「十二の峰」について
気象俚諺「十二の峰から来る夕立は大雨」の「十二の峰」がどこの山を指すのかについて明確な記述は見つからなかったため、以下を参考に紹介した。
・『東筑摩郡・松本市誌 第1巻 自然編』第5篇気候 第5章気象災害と気象俚諺 第6節気象俚諺・農業俚諺 1気象俚諺p.596-602
(9)地名や方位に係るもの(p.601-602)のなかのp.601に該当の気象俚諺の掲載があり、「十二の峰(乱橋南の山)」とある。
・『本城村誌 民俗編』
本城村は、乱橋が現在の東筑摩郡筑北村に合併する前の村名。
p.213-214に気象予知の項目があり、気象俚諺の記載はあるが、「十二の峰」を含む俚諺の記載なし。いずれも地区の記載はない。
「乱橋の方から黒い雲が出てくると雨が降る」という俚諺あり。
このほか確認できる山名は「聖山[ひじりやま]」、「大洞山[おおぼらやま]」、「四阿屋山[あずまやさん]」、「北アルプス」。
・『本城村誌 自然編』
第2章気象と天体 第4節身近な大気現象 5雷の季節(p.83-84) の中に雷雲の主な経路として以下の記述があり(p.84)。
「村内では聖山方面から、西から、四阿屋山から虚空蔵山[こくぞうさん]から、といろいろな言われ方があるようです。「虚空蔵山」をこえてくる雷は強い」などという話を聞いたりしますが、経路による強弱は明確ではありません」
・「地理院地図」国土地理院 乱橋付近【最終確認日 2021/01/27】
国土地理院が整備した地図や主題図、年代別の空中写真など、様々な情報を重ね合わせて見ることができる地図。
リンク先は、地名や等高線が書かれた標準地図の上に陰影起伏図を重ね、山を見やすくしたもの。リンク先の部分からさらに拡大をすると標高の低い山の地名も表示される。
2.気象俚諺にかかわる気候について
・『東筑摩郡・松本市誌 第1巻 自然編』p.524-529第5篇気候 第3章雑気象 第1節雷雨・雹 2初雷・終雷の頻度と雷の移動
p.524には「第149図 松本における初雷.終雷の方向頻度」が掲載されています。雷の発生方向は、「南西の鉢盛山[はちもりやま]方向が最も多く、これに次いでは西方の黒沢[くろざわ]山・鍋冠[なべかむり]山、北西の常念[じょうねん]・東天井・大天井[おおてんじょう]岳、北東の三才[みさ]山・戸谷峯・南東の鉢伏山[はちぶせやま]の方向」で多く、「北及び南の比較的低山地域からの雷は少ない」と説明がある。
また、p.525-527では、雷の移動型を以下の7つに分け、解説している。
(1) 鉢盛山→塩尻方面→筑摩山脈沿いに北方へ進む。
(2) 黒沢山・鍋冠山・常念岳→南安北安[北安曇郡、南安曇郡]方面
(3) 黒沢山・鍋冠山・常念岳→松本方面
(4) 鉢伏山・王が鼻→塩尻、松本→筑北方面
(5) 三才山・戸谷峯→松本、中川・錦部→筑北
(6) 四阿屋山→麻績・坂井方面
(7) 聖山→麻績・坂井方面
・「地理院地図」国土地理院 松本盆地【最終確認日 2021/01/27】
質問者が県外者であったため、参考に松本盆地の地名の位置関係を確認できるよう地図を紹介した。
- 回答プロセス
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1 利用者調査済の資料を確認する
該当のことわざが伝えられている地域として、「長野県 松本市・塩尻市」とあり。
2 郷土の民族に関する郷土分類N380-N388をブラウジングしたところ、以下の情報を得た。
・『信州の天気のことわざ』篝益夫著 長野県生活気象協会 1965【N388/34】
p.121に該当のことわざの記述あり。
中信の章の「松本市・塩尻市・東筑摩郡」の部分に含まれており、伝えられている地域としては、「本城[ほんじょう]・生坂[いくさか]」の(乱橋[みだればし])とある。
また、参考文献として『東筑摩郡・松本市・塩尻市』が挙げられていた。
3 『東筑摩郡・松本市・塩尻市』を確認したところ、p.601に該当の気象俚諺が掲載されていた。「十二の峰(乱橋南の山)」との記述を確認するも、山名までは特定できず。
4.近隣の山の位置関係を確認する
国土地理院地図で乱橋地区付近を確認するも、山地が連なっているためどの山になるのかは判断できず。この地図もあわせて利用者に紹介することとした。
5.乱橋(筑北村)の気候について、市町村史誌や郡誌などを確認する。
・『東筑摩郡・松本市誌 第1巻 自然編』
・『本城村誌 自然編』
<調査済み資料>
・『信州ふるさと変遷史 新版』 松橋好文原編 一草舎出版 2006【N290.3/46】
江戸時代末期から平成前期までの県内の市町村の合併の様子を系図のようにまとめた資料です。
「乱橋」は現在の筑北村になる前は、本城村にあり、その前は乱橋村として存在していたことが分かります。
また、筑北村の合併の歴史については筑北村のホームページ【最終確認日 2021/01/27】でも確認できる。
・『長野県史 民俗編 第3巻(3)中信地方』 長野県史刊行会編 長野県史刊行会 1990【N209/11-3/3-3】
p.3-7「雨の予兆」に松本盆地を中心とする中信地方の気象俚諺が羅列されていますが、該当のことわざについての記述は確認できなかった。
・『松本市史 第1巻自然編』
次を確認したが、気象に関することわざが紹介されているページは確認できなかった。
自然編第4章気象 第4節松本平の四季 5雨の季節の中で低気圧は長野県内では松本盆地を中心に発生することが多いこと、この低気圧に吹き込む南よりの風が海からの湿り気を運んでいると考えられていることなどの記述あり(p.335)。
・『松本市史 第3巻 民俗編』松本市編 松本市 1997【N233/106/3】
目次、「第1章自然と暮らし」を確認しましたが、気象に関することわざが紹介されているページは確認できなかった。
・『塩尻市誌 第1巻 自然』塩尻市誌編纂委員会編 塩尻市 1991【N233/97/1】
第3章気候と生活 第4編気候 第3節気象俚諺(p.386-387 )に「十二の峰」を含むことわざの記述は確認できなかった。
- 事前調査事項
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『災害予知ことわざ辞典』(参考資料1冊目)に該当のことわざの掲載があるとのことだった。
- NDC
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- 伝説.民話[昔話] (388)
- 気象学 (451)
- 参考資料
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大後美保編 , 大後, 美保. 災害予知ことわざ辞典. 東京堂出版, 1985.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I002422971-00 , ISBN 4490101961 (※利用者調査済み資料) -
東筑摩郡松本市郷土資料編纂会/編 , 東筑摩郡松本市郷土資料編纂会. 東筑摩郡・松本市誌 第1巻 自然編. 東筑摩郡・松本市.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059270652-00 -
本城村誌編纂委員会/編 , 本城村誌編纂委員会. 本城村誌 民俗編. 本城村誌刊行委員会, 1998-03.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I070632154-00 -
本城村誌編纂委員会/編 , 本城村誌編纂委員会. 本城村誌 自然編. 本城村誌刊行委員会, 1998-03.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I070632153-00
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大後美保編 , 大後, 美保. 災害予知ことわざ辞典. 東京堂出版, 1985.
- キーワード
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- 諺
- 諺--長野県
- 観天望気
- 気象俚諺
- 気象諺
- 信州学
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000288824