レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年02月01日
- 登録日時
- 2016/02/01 17:27
- 更新日時
- 2017/04/24 10:04
- 管理番号
- 京高図司-2015-E1
- 質問
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解決
蛍はなぜすぐ死んでしまうのか
- 回答
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「寿命」「捕獲時の刺激」「水分不足」がすぐに死んでしまった原因として考えられる。また、原作の描写に準拠すると死んだホタルはヘイケボタルの可能性が高い。
- 回答プロセス
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原作での記述によると、防空壕があったのは兵庫県西宮市満池谷貯水池付近。ホタルをつかまえたのは7月6日ごろ。百匹あまりつかまえて壕の中に吊った蚊帳の内側に放ったが、翌朝には半分死に、節子が死骸を埋めたとある。あくまでフィクションの中での描写のため必ずしも現実と一致するとは限らないが、ホタルの生態、および場面から確認できる事柄を考慮すると以下のように推測される。
・寿命
ホタルの成虫について、個人の記録だが人口飼育下において1ヶ月近く生きた例もあるものの、自然状態では1週間ほどしか生きられないようなので、つかまえたホタルの寿命が残り少なかった、ということが考えられる。
・捕獲時の刺激
原作では100匹以上を「手当たり次第につかまえて」と書かれている。捕獲の仕方が乱暴だった場合は、ホタルを衰弱させた可能性がある。映画では清太がホタルをつぶさずにそっと捕まえるシーンもあるが、たくさんのホタルをつかまえるとなると1匹ずつ丁寧にというのは難しかったのでは、と思われる。
・捕獲後の環境の問題
ホタルの成虫は幼虫時代に蓄えた栄養で生きるため基本的にエサをとらないが、乾燥に弱いため夜露などで水分を摂るとのこと。壕は池のそばにあるため湿度はそこまで低くなかったと思われるが、原作、および映画では蚊帳の中に放ったまま水などを与える描写はなかったので、衰弱の原因の一つとして水分不足が考えられる。
※原作では、二人が防空壕へ入る前の6月中下旬頃、池付近の流れでヘイケボタルをつかまえるという記述がある。また、節子が亡くなった後の8月23日夜、壕付近でホタルの群れが飛び交い、清太が「もうじき螢もおらんようになるけど…(以下略)」と言う記述があり、かなり遅い時期まで見ることができるホタルであることがうかがえる。以上から、二人が7月につかまえたのは出現期間が長く9月にも確認されることがあるヘイケボタルである可能性が高い。また、場所は異なるが、清太が神戸市三ノ宮駅構内で死んだ9月21日に同駅付近にまだホタルがいることを示す記述があることからも、作者の野坂氏がイメージしていたのはヘイケボタルではないかと思われる。ただし、映画版のホタルを埋めるシーンでは、ホタルの背中にゲンジボタルの特徴である黒い十字の模様らしきものがある(ヘイケボタルは縦に一本のみ)。
- 事前調査事項
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もともとは「なんでホタルすぐ死んでしまうん?」という生徒からの質問。高畑勲監督によるアニメ映画「火垂るの墓」(スタジオジブリ、1988公開)の登場人物のセリフからと思われるので、同作、および原作となる小説『火垂るの墓』の描写をもとに考察することにした。
- NDC
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- 小説.物語 (913 9版)
- 昆虫類 (486 9版)
- 参考資料
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- 映画『火垂るの墓』高畑勲監督、1988年
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-
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- キーワード
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- 火垂るの墓
- ホタル
- 蛍
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- 蛍+エサ
- 蛍+寿命
- 蛍+飼育
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 高校生
- 登録番号
- 1000187750