1.参考図書の確認
・『Chronologisch-thematisches Verzeichnis sämtlicher Tonwerke Wolfgang Amadé Mozarts』
K.218(第4番)が「Strassburger」であると書かれている。
・『モーツァルト大事典』
「ヴァイオリン協奏曲ニ長調(第4番) K.218」の説明の中に「いわゆる《シュトラスブルク協奏曲》(モーツァルト自身が手紙で用いた表現)と考えられているが、研究者によってはK.216がそれだという者もいる。1777年10月にブルネッティが演奏したことを、レーオポルトが手紙で報告している。」とある。
・『モーツァルト全作品事典』
「K.216 ヴァイオリン協奏曲ト長調第3番」の説明の中に「ほとんどのモーツァルトに関する文献において、「シュトラスブルク」協奏曲は《協奏曲第4番ニ長調》K.218と考えられている。しかし、ハンガリーの音楽学者デーネシュ・バルタの研究では、K.216がモーツァルトの「シュトラスブルク」協奏曲であるという結論が示されている。・・・この陽気な旋律は、バルタの研究によれば、モーツァルトの時代に「シュトラスブルガー」という題名で知られていた歌(残念なことに、再発見されたのは旋律だけで歌詞は判明していない。歌ではなく舞曲だったのかもしれない)である。」とある。
・『作曲家別名曲解説ライブラリー モーツァルト』
「ヴァイオリン協奏曲(第3番)ト長調K.216」の第3楽章の説明の中に「旋律的に2つの部分に分けられるこのアレグレット主題は「シュトラスブルガー」という古い旋律とほとんど同一なため、「第4番」ではなく、「第3番」を《シュトラスブルク協奏曲》とする説が有力になっている。」とあり、主題の譜例が掲載されている。また「ヴァイオリン協奏曲(第3番)ニ長調K.218」の中でレオポルトの手紙の経緯説明のあとに「この協奏曲が「第3番」のト長調であるか、あるいは「第4番」ニ長調のこの曲であるか論議の的となっている。ニ長調のほうのロンドー中のミュゼット主題が、ディッタースドルフ作曲の《謝肉祭交響曲》の中の「バルロ・ストラスブルゲーゼ Ballo Strassburghese」と呼ばれたミュゼットに似ていることがあきらかにされたため、《シュトラスブルク協奏曲》という名は、この「第4番」ニ長調の作品に対してあたえられていたが、「第3番」説をとる研究者もいる。」とあり、主題の譜例も掲載されている。
上記の各図書の出版年を考慮すると、『モーツァルト全作品事典』の説明が新しい見解と思われる。
2.『モーツァルト全作品事典』の説明にあるデーネス・バルタの論文について
OPACで検索したが、未所蔵。
3.RILMを検索。キーワードは「mozart Strassburger concerto」。
・デーネス・バルタDenes Barthaの論文「Zur Identifikation des Strassburger Konzerts bei Mozart」がヒットし、フリードリヒ・ブルーメの記念論文集『Festschrift Friedrich Blume zum 70. Geburtstag』に掲載されていることがわかった。所蔵している。
・Sybylle Dahmsの論文「Nochmals Mozarts Konzert mit dem 'Strassburger'」もヒット。この論文にシュトラスブルクのメロディーがついていることがわかった。『Mozart Studien, 7』に掲載されていて、所蔵している。RILMで全文を見ることが可能。
論文を確認したところ、どちらの論文にも元の楽譜が掲載されていた。歌詞は不明。
4.録音資料についてOPACを検索。
未所蔵。
5.インターネットを「モーツァルト シュトラスブルク」で検索し、下記の論文がヒット。(2021.5.18現在)
『モーツァルトのシュトラースブルク協奏曲について / 野口秀夫』
その1
http://mozart.music.coocan.jp/213.pdf ・・・K.216説の確定について述べられている。
その2
http://mozart.music.coocan.jp/214.pdf ・・・K.216に至るまでの各説の由来について述べられている。