レファレンス事例詳細(Detail of reference example)
提供館 (Library) | 立命館大学図書館 (3310012) | 管理番号 (Control number) | L19-005 | ||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
事例作成日 (Creation date) | 2020年2月6日 | 登録日時 (Registration date) | 2020年04月10日 16時34分 | 更新日時 (Last update) | 2020年07月15日 15時37分 | ||||||||||
質問 (Question) | 1931年7月17日に斉魯大学の教員と学生が和歌山を訪問し、拝日学校(日曜学校)で交流した という記録がある。また、この拝日学校は「小笠原」により開設されたとのこと。 この組織・人物について知りたい。 | ||||||||||||||
回答 (Answer) | 1. 拝日学校(日曜学校)について (1)大阪朝日 和歌山版 昭和6(1931)年7月18日(本学契約データベース「聞蔵IIビジュアル」より) 「和歌山城の豪華に驚く 日華親善につとむ齊魯大學教授一行」という記事があった。 日付、地域、大学名から、これが質問の「拝日学校」に関する記事と思われる。 この記事では、齊魯大學教授一行の7月18日の行程が詳細に記載されていた。 齊魯大學教授一行は国際親善視察団として大阪商工会議所の職員付添いで和歌山市を訪問し、 和歌山の商工会議所、和歌山城、経済会の座談会に出席の後に小笠原邸を訪れたとある。 「拝日学校」に該当すると思われる部分の記述は以下の通りである。 >十七日 [中略] 午後一時半豐原町小笠原誉至夫氏邸を訪ふたのちさらに >吹上小學校講堂における國際聯盟和歌山支部児童部の歓迎會に出席、 >可愛い兒童たちの唱歌に打ち興じ 齊魯大學教授一行についての記述は以下の通りである。 >同大學教授エス・ラウテン・シュラウゲル氏夫妻以下外人六名、支那男學生十一名、 女學生三名であった。 (2)歓迎会主催である国際聯盟協会の報告書にもこの歓迎会についての報告はあったが、 概要のみの記載であり、規模や内容についての情報は無かった。 『国際聯盟協会会務報告』昭和6年度 (国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1711657 ) >十五 地方支部 〇和歌山支部 歡迎會 七月十七日、支那済南斉魯大學教授學生一行の 歡迎會を商工會議所に於て開催す。(p.75) 兒童部大會 同日兒童部大會を吹上小學校講堂に開催す。 (p.76) (3)上記-1,-2の情報に拝日学校および日曜学校という記述はないが、 小笠原誉至夫氏の著作『竹馬の友へ : 小笠原誉至夫宛書簡 自由民権・御進講・孫文関係新資料』 (立命館大学図書館 書誌ID:TT40438500) 巻末の小笠原誉至夫略年譜、1929(昭和4)年 (六二歳)の項に >七月、国際連盟協会和歌山支部の小学生向け国際日曜学校を自宅に開設 との記載があった。 なので、上記-1,-2が質問の拝日学校(日曜学校)の記録であると判断できる。 2.小笠原誉至夫氏について 小笠原氏の経歴や業績が分かる文献を紹介した。 (1)『近代日本社会運動史人物大事典』第1巻. 1997年. 近代日本社会運動史人物大事典編集委員会編. (立命館大学図書館 書誌ID:TT40063309)P.700-701に「小笠原誉至夫」の項目あり。 (2)武内善信「ユニテリアン社会主義者小笠原誉至夫と南方熊楠」キリスト教社会問題研究. 37号. P.621-634 同志社大学学術リポジトリ http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000008431 (3)『和歌山市史』第3巻 (近現代) 和歌山市史編纂委員会編纂.1990年 (立命館大学図書館 書誌ID:TT40037977)第二章 第三節 2社会運動の発生 P.280-282 (4) 和歌山市立博物館で小笠原誉至夫氏資料展が開催されていたという記事が見つかったため あわせて紹介した。 -1.毎日新聞2015年12月11日地方版 和歌山県 芸術・文化(本学契約データベース「毎索」より) 「熊楠と小笠原誉至夫、交流しのぶ手紙や写真」 -2.「紀州藩士小笠原庄大夫家と小笠原誉至夫―生誕150年―」開催 和歌山市立博物館Twitter https://twitter.com/w_city_hakubuts/status/1048446550223937539 | ||||||||||||||
回答プロセス (Answering process) | 1.当時の新聞記事を調査 交流の日付が分かっているため、近辺の日付の新聞記事を検索した。 本学契約データベース「聞蔵Ⅱビジュアル」で1931年7月の記事を検索したところ 昭和6(1931)年7月18日の大阪朝日和歌山版に 「和歌山城の豪華に驚く 日華親善につとむ齊魯大學教授一行」という記事があった。 日付、地域、大学名から、これが質問の「拝日学校」に関する記事と思われる。 >十七日 [中略] 午後一時半豐原町小笠原誉至夫氏邸を訪ふたのちさらに >吹上小學校講堂における國際聯盟和歌山支部児童部の歓迎會に出席、 >可愛い兒童たちの唱歌に打ち興じ 記事中のこの一文から、拝日学校開設者の小笠原氏の氏名は「小笠原誉至夫」、 歓迎会の主催は「國際聯盟和歌山支部」、開催地は「半豐原町」であることが分かった。 2.本学契約データベースや国立国会図書館サーチ、検索エンジンで検索 上記1.の検索結果から、「小笠原誉至夫」「國際聯盟協會」を検索キーワードに 設定して検索をしてみたところ、以下の情報がヒットした。 (1)國際聯盟協會および1931年7月17日の交流について -1.『竹馬の友へ : 小笠原誉至夫宛書簡 自由民権・御進講・孫文関係新資料』 南方熊楠, 小笠原誉至夫[著] ; 長谷川興蔵, 小笠原謙三編. 1993年 巻末の小笠原誉至夫略年譜、一九二九 昭和四年 (六二歳)の項に >七月、国際連盟協会和歌山支部の小学生向け国際日曜学校を自宅に開設 との記載があった。 -2.小笠原誉至夫「國際聯盟協會日曜學校に就て」『国際知識』12巻6号, 1932.6. P.15 >どうしても子供の時から國際聯盟の教育をしなければならんと斯ふ決心をしまして 一昨年の一月から之を始めたのであります。」との記載があり、生徒数や活動についても 述べられている。 →国立国会図書館書誌ID:000000008361 国立国会図書館デジタルコレクション(図書館送信参加館限定公開)にて利用可能 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10985857 (掲載コマ番号11) -3.『国際聯盟協会会務報告』昭和4年度 国立国会図書館デジタルコレクションにて一般公開 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1711642 >九、兒童部 …和歌山支部等に兒童部成立され、…(p.29, 掲載コマ番号11) >一四、地方支部 兒童部 九月廿八日 小笠原氏邸に於て兒童部設置協議會を開く。 (p.45, 掲載コマ番号25) -4.『国際聯盟協会会務報告』昭和6年度 国立国会図書館デジタルコレクションにて一般公開 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1711657 >十五 地方支部 〇和歌山支部 歡迎會 七月十七日、支那済南斉魯大學教授學生一行の 歡迎會を商工會議所に於て開催す。(p.75, 掲載コマ番号41) 兒童部大會 同日兒童部大會を吹上小學校講堂に開催す。 (p.76, コマ番号42) (2)小笠原誉至夫氏について -1.『近代日本社会運動史人物大事典』第1巻. 1997年. 近代日本社会運動史人物大事典編集委員会編. →「小笠原誉至夫」の項がある(P.700-701)。武内善信氏による署名記事であり、 小笠原誉至夫氏の経歴についての記述が1頁ほどある。参考文献も挙げられている。 -2.武内善信「ユニテリアン社会主義者小笠原誉至夫と南方熊楠」キリスト教社会問題研究. 37号. P.621-634 同志社大学学術リポジトリ http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000008431 →上記-1.の著者である武内善信氏の論文。小笠原誉至夫氏の半生に触れており、 参考となる文献も複数挙げられている。 -3.『和歌山市史』第3巻 (近現代) 和歌山市史編纂委員会編纂.1990年 第二章 第三節 2社会運動の発生 のうちP.280-282に小笠原誉至夫の和歌山市での社会主義活動に 関する記載があり、日本基督教会和歌山教会のメンバーと交流があったことにも触れられている。 (立命館大学図書館 書誌ID:TT40037977) →国立国会図書館デジタルコレクション(図書館送信参加館限定公開)で利用可能 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9576608 3. その他関連情報:小笠原誉至夫に関する博物館展示 小笠原氏についてインターネット検索をする中で、和歌山市立博物館の資料展やコーナー展示の 情報が複数見つかったため、関連情報として紹介した。 -1.毎日新聞2015年12月11日地方版 和歌山県 芸術・文化 「熊楠と小笠原誉至夫、交流しのぶ手紙や写真」 本学契約データベース「毎索」で全文利用可能。(テキスト形式のため、写真図版は収録なし) -2.「紀州藩士小笠原庄大夫家と小笠原誉至夫―生誕150年―」開催(2018年10月2日~2019年1月6日) 和歌山市立博物館Twitter https://twitter.com/w_city_hakubuts/status/1048446550223937539 | ||||||||||||||
事前調査事項 (Preliminary research) | 依頼者は参考文献として、王墨園著『東亞遊記』斉魯大学国際問題研究会.中華民国22(1933)年 を持参された。 この資料の(pp.66-67)に、1931年7月17日に斉魯大学の教員・学生らの訪問団が和歌山を訪問して、 学生1000余人の「拝日学校」で交流した旨が記載されている。 また、「拝日学校」は「小笠原」により開設された「日本唯一之和平運動組織」とある。 依頼者によると、斉魯大学は中国のミッション系大学であり、 「拝日学校」は日本語でいう「日曜学校」のことで、おそらくはキリスト教会関連の組織では ないかとのことであった。 | ||||||||||||||
NDC |
| ||||||||||||||
参考資料 (Reference materials) |
| ||||||||||||||
キーワード (Keywords) |
| ||||||||||||||
照会先 (Institution or person inquired for advice) | |||||||||||||||
寄与者 (Contributor) | |||||||||||||||
備考 (Notes) | |||||||||||||||
調査種別 (Type of search) | 文献紹介 事実調査 | 内容種別 (Type of subject) | 質問者区分 (Category of questioner) | 教員 | |||||||||||
登録番号 (Registration number) | 1000280483 | 解決/未解決 (Resolved / Unresolved) | 解決 |