レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017年4月28日
- 登録日時
- 2017/08/09 15:32
- 更新日時
- 2020/02/25 10:40
- 管理番号
- 2017-016
- 質問
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解決
中島敦「文字禍」(初出=昭和17年(1942年)2月)についての同時代評を探している。
- 回答
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「文字禍」は、昭和17年「文学界」2月号に、「山月記」と共に『古譚』と題して発表されました。
『古譚』に対する当時の批評であれば、いくつか見つかりました。
その中で「文字禍」について言及がされているものもあります。
詳しくは回答プロセスをご覧ください。
- 回答プロセス
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1.「文字禍」の同時代評について言及のある論文を検索
・CiNii Articlesで論文を検索
キーワード「文字禍」
本学今出川図書館で確認できる論文には、同時代の評について言及がない。
・CiNii Articlesを全文検索
キーワード「文字禍」
以下の論文が見つかる。
(1)片岡 純子「中島敦「山月記」について」(『駒沢短大国文』1981, vol.11, p.65-73)
p.65 「「山月記」は昭和十七年に雑誌「文学界」二月号に、他の一篇「文字禍」と共に「古譚」と題して発表された」
p.65-66 「作者の夭折、つまり非常に短い作家生活と、さらに社会的にも戦時下という悪条件が重なって、戦前の論評は数少なく、いずれも断片的な批評がほとんどである」とあって、続いてp.66に、同時代の論評が挙げられている。
(2)木村一信「「山月記」論」(『日本文学』1975, 24(4), p.37-51)
p.38上段に「中島登場時の文壇の反応は、おおよそ右のごとくであった」として、p.37-38の「序」に、『古譚』発表時の評が挙げられている。
芥川賞選評に触れていることを含め(1)とほぼ同様であるが、出典がより詳しい。
上記(1)(2)には、「文字禍」について単独で書かれている評はないが『古譚』についての評ならあり。
出典となる資料の中で、本学今出川図書館で確認できたものを下記に挙げる。
①「三田文学・文学界」(『三田文学』昭和17年3月号, p.151)
「中島敦の『古譚』は、近頃のがさつな文壇には珍らしい理知的な作品であって……」
②河上徹太郎「古典の発想――文藝時評」(『文学界』1942, 9(6), p.5-9)
p.9「本誌二月号所載の『古譚』の短編の如きアレゴリイに、強ひて自分の知性の運命を暫定的に占ひ盛つてゐたのであるが、……」
『中島敦研究』p.88-89に所収あり。
③中野好夫[『古譚』の感想]※表題なし(『中島敦全集2』付録「中島敦全集通信」第2号, 筑摩書房, 昭和23年2月)
※『中島敦全集』(1948, 筑摩書房)は本学に所蔵があるが、付録はなし。
付録「中島敦全集通信」は『中島敦研究』に所収。
p.299「はじめて中島敦の作品を読んだのは、『文学界』に発表された『古譚』であつた。……なにしろ騒然として浮足立つたといつてもよいその頃の文壇に、時風を外にこの中国伝承に取材した幾篇かの小篇は、なにかしぶとく自己の芸境一つを生き貫かうといふ作者の気魄らしいものを思はせて、はつきり私の注意に残つた」
④中村光夫「子供と芸術家と夢」(昭和17年5月『日本読書新聞』/昭和47年4月筑摩書房刊『中村光夫全集5』所収)
『中島敦研究』p.86-87に所収。
p.86「『古譚』はその題名が示すやうに大人の童謡めいた奇怪な昔話であつた。それは二つの独立した短編から成り立つてゐたが、一つは支那の昔の詩人が……他はアッシリアだかバビロニアの博学な博士が……」とあり、「文字禍」というタイトルは出てこないが、「文字禍」についての評とわかる部分がある。
⑤芥川賞候補選評(昭和17年9月『文芸春秋』に掲載/『中島敦研究』p.304-所収)
候補になったのは「光と風と夢」だが、『古譚』についても述べられている。
2.中島敦についての研究文献
(1)中村光夫, 氷上英廣, 郡司勝義編『中島敦研究』(筑摩書房, 1978)
多くの同時代評を収録しているほか、生前の中島敦を知る人の回想なども収録されている。
(2)斎藤 勝著『中島敦書誌』(和泉書院, 1997)
p.83~「参考文献」に評伝や編集後記などの収録あり。
>C 参考文献 (1)新聞・雑誌・紀要・単行本に部分所収等(略年譜含む)(p.134-)
p.141-146に以下の掲載あり。
①昭和17年(1942)【文学界 2月号1日:古譚 山月記、文字禍】
「無署名 六号雑記:三田文学・文学界」[三田文学(三田文学会・編集者 和木清三郎)3月号1日(151/4)]
「中島敦の「古譚」は、近頃の……」と1.の①と同様の記載あり。
②中村光夫「文芸時評:子供と芸術家と夢 」[日本読書新聞 5月11日号(1面)]
「「古譚」の魅力の大半」は、……」という記述あり。1.の④参照。
『中島敦研究』への言及もあり。「日本読書新聞」掲載日・掲載面はこちらで判明。
その他記載あるが、『古譚』を含んだものなのか、『光と風と夢』に関するものだけなのかは、目録だけでは判断困難。
(3)中島敦『中島敦全集』(筑摩書房, 2001)
「内容注記」に「別巻:評論・回想・同時代評:中島敦論/中村光夫[著]」とあり。
本学には所蔵がないため、現物の確認はできず。
同志社女子大学図書館に所蔵あり。
※中村光夫著「中島敦論」(『批評』昭和18年4月, 原題「青春と教養――中島敦について」)は『中島敦研究』p.5-15にも所収。
p.6に「『山月記』を中心とする『古譚』の僕等に与へる或る異様な感銘が、決して一部の人々の疑ふやうな異国趣味と博識の詐術ではない確証を見れば足りる」などとあり。
上記別巻と内容が同じかどうかは不明。
- 事前調査事項
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・ヨミダス歴史館、朝日新聞聞蔵Ⅱビジュアルで「中島敦」「文字禍」で検索するが見つからない。
・『文藝時評大系』の索引で「文字禍」「中島敦」を探すが見つからない。
・『光と風と夢』(『文字禍』を所収する作品集のタイトル。表題作あり)についての書評はあったが、作品集全体ではなく、表題作への書評だった。
- NDC
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- 日本文学 (910 9版)
- 参考資料
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片岡, 純子. 中島敦「山月記」について. 駒澤短期大学国文研究室, 1981-03. 駒沢短大国文 11 p. 65~73, ISSN 02866684
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000025-I002478782-00 -
木村 一信. 「山月記」論. 1975-04. 日本文学 / 日本文学協会 編 24(4) p. p37~51
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I1546077-00 - 三田文学・文学界. 1942. 三田文学 昭和17年3月号 p. 151
- 河上徹太郎. 古典の発想――文藝時評. 1942. 文学界 9(6) p. p.5-9
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中村光夫 [ほか]編. 中島敦研究. 筑摩書房, 1978.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001398843-00 , ISBN 4480820965 (NCID:BN00245375) -
齋藤勝 著. 中島敦書誌. 和泉書院, 1997. (近代文学書誌大系 ; 4)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002600862-00 , ISBN 4870888688 (NCID:BA31323959) -
池内輝雄, 宗像和重 編. 文藝時評大系 昭和篇 1 別巻(索引). ゆまに書房, 2008.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009316876-00 , ISBN 9784843317532 (NCID:BA74622383)
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片岡, 純子. 中島敦「山月記」について. 駒澤短期大学国文研究室, 1981-03. 駒沢短大国文 11 p. 65~73, ISSN 02866684
- キーワード
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- 中島敦
- 文字禍
- 山月記
- 古譚
- 同時代評
- 文芸批評
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 日本文学
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000220172