レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年09月11日
- 登録日時
- 2016/06/02 12:58
- 更新日時
- 2016/06/16 14:17
- 管理番号
- 宇南16-00246
- 質問
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解決
小学3年生に紹介できる「鬼怒川の名前の由来」についての本はないか。
- 回答
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小学生でも理解できるような資料が見つからなかったため,下記の資料1~5の資料により回答した。
・古くは毛野川(けぬがわ)((続日本紀),「下野国誌」),毛野河(けののかわ)(「常陸風土記」)とある。
・古代・中世には「衣川」,「絹河」「絹川」が使われ,明治以降に「鬼怒川」の字が使われるようになった。
・由来としては,現在の栃木の地名が「毛野国」とあること,絹の産地を流れていることがあげられるようである。
・「鬼怒」に関しては川がしばしば氾濫し,多くの被害をもたらしたところから,この字が使われたと推測されている。
1『角川日本地名大辞典 9 栃木県』
p.347 鬼怒川
「鬼怒川は「下野国誌」に「往古に毛野川と唱う」とあり,下野の古称毛野国の第1の河川として「毛野川」が変化したものと考えられる。平安期には絹川,中世には衣川とも書かれた。」
2『栃木県の地名』
p.23 鬼怒川
「毛野(けぬ)川を鬼怒川の古称と推定する説もある。古代・中世には衣川・絹河とも書かれた。」
「鬼怒川の字があてられるようになるのはずっと遅く,明治九年(1876)の頃と思われる。」
3『とちぎの地名を探る』
p.67-68 氾濫・決壊河川の鬼怒川と小貝川
・「鬼怒川の古い呼び名は「毛野(けぬ)河」であった。」
723年ころに成立した『常陸風土記(ひたちのふどき)』の中に,「毛野河」の名がみえる。
・「『倭名類聚鈔』には毛野河を「衣(きぬ)川」と記し,中世から近世の文献には「衣川」とか「絹川」と記している。これは衣は絹を原料とするので,衣川・絹川を混用したのであろう。今日の「鬼怒川」の字は,明治初期になってから使われるようになった。」
4『栃木「地理・地名・地図」の謎 : 意外と知らない栃木県の歴史を読み解く!』
p.182-183 「鬼怒川」の名称は栃木独特のなまりから生まれた?
・「「けぬかわ」の発音が「きぬがわ」になり,やがて漢字表記も「鬼怒川」と書かれるようになったのではないかと考えられているのである。」
・「鬼怒川はしばしば氾濫し,まるで鬼が怒ったようになることから,「鬼の怒る川」→「鬼怒川」になったという説がある。」
・「絹の産地を流れていたことから「衣川」「絹川」と呼ばれ,それが鬼怒川になったという説もある。」
5『栃木の水路』p.123-124
「鬼怒川は『続日本紀』には「毛野川」と記され,後には「衣川」とか「絹川」が用いられているが,近代になってから「鬼怒川」と書かれるようになった。鬼怒川の名称の由来は明確ではないが,沿岸の田畑や人家を流し,多くの人命をも奪って,沿岸住民に大きな災害を与えたから,沿岸住民の恐怖心や怒りから生まれたのであろうか。」
[追加資料]
1『風土記 : 現代語訳付き 上』
p.24 常陸国風土記 新治郡
「新治郡(にひがりのこほり)。東は那賀郡(なかのこほり)との堺の大き山,南は白壁郡(しらかべのこほり),西は毛野河(けののかは),北は下野・常陸の二つの国の堺,波太(はだ)の岡。」
2『下野国誌』
二之巻 衣川(キヌカハ)
「往古ハ国名をさへ負ハせて,毛野(ケヌ)川としも唱へしなり」
- 回答プロセス
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質問者の小学校の学校司書の方から,「学校の資料を見たが,紹介できるような資料がない。」との話があった。
所蔵資料から鬼怒川に関する記述を探した。
鬼怒川の由来について記述があった資料を基に回答した。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本 (291 8版)
- 参考資料
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「角川日本地名大辞典」編纂委員会 , 「角川日本地名大辞典」編纂委員会. 角川日本地名大辞典 9 栃木県. 角川書店, 1978.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I045456089-00 , ISBN 4040010906 -
平凡社地方資料センター編集 , 平凡社地方資料センター. 栃木県の地名. 平凡社, 1988-08. (日本歴史地名大系)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000074-I000001650-00 , ISBN 4582490093 -
塙静夫 著 , 塙, 静夫, 1932-. とちぎの地名を探る. 随想舎, 1996.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002637308-00 , ISBN 4938640872 -
篠﨑茂雄 監修 , 篠﨑, 茂雄, 1965-. 栃木「地理・地名・地図」の謎 : 意外と知らない栃木県の歴史を読み解く!. 実業之日本社, 2014. (じっぴコンパクト新書 ; 218)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I025865604-00 , ISBN 9784408455327 -
栃木県文化協会. 栃木の水路. 栃木県文化協会, 1979.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001443779-00 -
中村啓信 監修・訳注 , 中村, 啓信, 1929-. 風土記 : 現代語訳付き 上. KADOKAWA, 2015. ([角川ソフィア文庫] ; [A116-1])
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I026420312-00 , ISBN 9784044001193 -
河野守弘/著. 下野国誌. 関東史料研究会, 1975.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I050293497-00
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「角川日本地名大辞典」編纂委員会 , 「角川日本地名大辞典」編纂委員会. 角川日本地名大辞典 9 栃木県. 角川書店, 1978.
- キーワード
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- 鬼怒川
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土 地名
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000192871