石井桃子が都立図書館で「ストーリーテラー」の講習会をしたことは、近年の記録にはない。可能性としては、昭和30年代、40年代頃と思われるので、当時の資料を調査したが、見つからなかった。都立図書館の周辺と石井桃子関連の資料から、ストーリーテリングに関する記述を抜書きする。
1 都立日比谷図書館で初めてストーリーテリングの講座が開かれたのは、1958年3月18日で、児童図書館研究会が主催。講師は渡辺茂男、タイトルは「お話のしかたについて」。
*情報の出典:『ひびや 都立日比谷図書館報』 3号(1958年3月)「行事メモ」
『こどもの図書館』 4巻3号 (児童図書館研究会 1958年6月) 渡辺茂男著「図書館とお話」
2 『ひびや 都立日比谷図書館報』 12号 1958年12月に、石井桃子が「たのしい図書室」というタイトルで寄稿しているが、ストーリーテリングには触れていない。
3 石井桃子著『子どもの図書館』(資料1)によると、1963年のかつら文庫の記録に「間崎さんは、私たちの家庭文庫をまわって歩いて、子どもたちへの接し方を示してくれ、外国では、児童図書館員には必須の条件となっているストーリー・テリングの講習を、定期的にはじめてくれていました」という記述がある。
4 資料2『石井桃子集 7』の「こすずめのぼうけんをめぐって」のエッセイで、1962年にアイリーン・コルウェル編纂の『お話をして』をもらい、文庫でこの本のなかにある「こすずめのぼうけん」などのお話をしていたという記述がある。
5 古参の児童図書館員の記憶によると、岩波ホールで1975年頃に、児童文学講座が開催され、そのときに石井桃子が「こすずめのぼうけん」をストーリーテリングで話したということだが、岩波書店の広報誌『図書』には、該当の記事は見つからなかった。