レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013年05月17日
- 登録日時
- 2013/11/18 14:55
- 更新日時
- 2014/01/29 17:34
- 管理番号
- 埼熊-2013-051
- 質問
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解決
江戸時代の手紙について、脇付の種類(「人人御中」「申し給え」)、またそれぞれの脇付がどのような相手に対しての敬意であるのか、詳しく知りたい。
- 回答
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「大館常興書札抄」「書札禮之事」「和簡礼経」に、名宛人による脇付の使い分けについて記述あり。以下の各所収資料を提供した。
『群書類従 9 文筆部』(塙保己一編纂 続群書類従完成会 1987)
p645-670「大館常興書札抄」
p666-668「書札のあて所の書様の事」に、名宛人による文言の使い分けあり。ただし、「脇付」の語句は見あたらず。
『群書類従 27 雑部』(塙保己一編纂 続群書類従完成会 1987)
p36-43「弘安礼節」
p36-39「書札禮之事」に、13種の位別に使用すべき文字の規定あり。「脇付」の語句はないが、大納言の条に「人々御中」の文言が見える。
『史籍集覧 11 武家部 故実編』(近藤瓶城原編 角田文衛、五来重編 臨川書店 1967)
p133-152「和簡礼経 第一」に名宛人による「上所」「脇付」の使い分けあり。
- 回答プロセス
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参考図書で確認する
『大言海 新訂版』(大槻文彦著 冨山房 1978)
p2163〈わきつけ 脇附〉の項に、「江戸幕府ノ頃、書状ノ宛名ノ左下ニ記ス文字。身分ノ等級ニ因リテ、参人人御中、人人御中、御宿所、進覧、進之候、ナドト次第ス。返書の脇附ハ、尊答、貴報、御報、御返報、御返事、ナドト次第ス。下輩ヘハ、脇附ナシ、コレヲ一ニ打付書(ウテツケガキ)トモ云フ。」とあり。列記されているが、どのような相手に使用するかは書かれていない。
『国史大辞典 14』(吉川弘文館 1993)
p877-878〈わきづけ 脇付〉の項あり。意味別に分類して列記されているが、宛名の位階等による使い分けの記述はなし。
『日本国語大辞典 13』(小学館 2002)
p1263〈わきづけ 脇付〉の項の記述中に「和簡礼経」の史料名あり。
参考図書に挙がっていた参考文献を調査する
『日本古文書学 上』(中村直勝著 角川書店 1971)
p117に「執下」の脇付例あり。
p118に「何れこうした書留のことは中国の隋唐朝時代の書札様式を学んだものであろう。ここにも脇付があった。なるべく差出人は卑下し、謙遜の意を示し、受取人の氏名を、上の方に記して、その人に直接宛てて出したのではない、という意を含めて、脇付をしておくことは賢明なことである。(中略)本文の最後に用うる言葉を書留というが(後略)」との記述あり。
p121-124に『弘安礼』の「書札礼之事」の引用あり。前掲『群書類従 27 雑部』に同じ。解説に「脇付」ではなく「書留」の語句あり。
p134-135「参人御中、人々御中、御宿所、進之候、遣之候、を順序とするものであると『足利家書法後来合考』はのべておるし、『大館常興書札礼』には、かな書きの文書では、(1)参る人々申給へ (2)たれにても申給へ (3)人々申給へ (4)参る申給へ (5)参る参り申給へ (6)参る参り候 (7)参る (8)参候 と順序附をしておる。僧侶に対しては、侍者御中 侍者禅師 衣鉢閣下 衣鉢禅師 ……机下 床下 案下 閣下 庵下 等があると言っておる。返事のときは脇付として、尊答 貴答 貴報 御返報 御返事 があって、これが上下の順列であろうとする。回章、回鳳という脇付も往々にある。これにも楷行草の区別がある。」とあり、身分の高い順に記載されている。
『日本古文書学 下』(中村直勝著 角川書店 1977)
p258-263「第3項 上所 脇付」
p261「足利家書式後末合考」にあげられた脇付について記述あり。「人人御中、進覧、進献、進上候、と言った脇付があったことを教え、殊に僧侶に対しては侍者御中を最高とし、侍者禅師が中品で、衣鉢閣下、以下庵下までの十八階級を示しておる。」等の記述あり。仮名文の脇付として『大館常興書札礼』から、「申し給え」「申させ給え」の例あり。
『日本の古文書 上』(相田二郎著 岩波書店 1949)
p363に「小舎人所を脇附と申している。(中略)上所と脇附とは、必ずしもあるとは限らない。」とあり。
p392に「次に中世の書札礼で脇附と称するものも用いている。その種類をあげると、侍者謹空、侍者、御曹司迄、足下、従者等中…(以下略)」と種類をあげているが、位の順序は不明。
p569に「(前略)更にその下に敬意を表す為め、若くは書札の性質を表す為めに記す「進之候」、「申給へ」、「人々御中」、「御返報」の如き文言を脇附と云う。」とあり。
p591-605の第1-17表に、「脇附」の項目あり。
「書札礼」から調べる
『国史大辞典 7』(吉川弘文館 1986)
p694-695〈しょさつれい 書札礼〉の項に見られる史料名と収録されている資料は以下のとおり。
「雲州消息」『群書類従 9 文筆部』p390-437
「貴嶺問答」 同上 p438-459
「消息耳底秘抄」 同上 p578-589
「書札礼付故実」 同上 p590-620
「弘安礼節」『群書類従 27 雑部』p36-43
「書礼作法抄」『群書類従 9 文筆部』p622-635
「細川家書札抄」 同上 p635-644
「二判問答」『群書類従 27 雑部』p42-51
「桃華蘂葉」 同上 p1-35
「三内口決」 同上 p52-68
「宗五大草子」『群書類従 22 武家部』(塙保己一編纂 続群書類従完成会 1986)p537-626
「貞丈雑記」『故実叢書 1 貞丈雑記』(明治図書出版 1952)
『江戸幕府の日記と儀礼史料』(小宮木代良著 吉川弘文館 2006)
p244-260に「2 『書札礼』について -附 史料紹介」あり。
p248-255「書札法式」に、名宛人による〈上所〉〈脇付〉等の使い分けあり。
『弘安書札礼の研究』(百瀬今朝雄著 東京大学出版会 2000)
p8に「人々御中」の脇付例あり。
p45-51「弘安礼節」(国立国会図書館所蔵弘安本)の翻刻あり。
『手紙の歴史』(小松茂美著 岩波書店 1976)
p20-35「3 『貴嶺問答』と『消息耳底秘抄と『弘安礼節』」に記述あり。
p34に「人々御中」の実例あり。
p35-51「4 書札礼と往来物の編集」に記述あり。
『概説古文書学 古代・中世編』(日本歴史学会編 吉川弘文館 1983)
p199-208「第8 書状」に〈書札礼〉についての記述があるが、〈脇付〉についての言及なし。
p203-205「弘安書札礼」の官位と書札との関係表あり。
『岩波講座日本文学 〔第16回〕』(岩波書店 1932)
伊木寿一著「書状の変遷」に、弘安礼節中の書札礼に関する記述あり。
- 事前調査事項
- NDC
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- 文章.文体.作文 (816 9版)
- 日本史 (210 9版)
- 参考資料
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- 『群書類従 9 文筆部』(塙保己一編纂 続群書類従完成会 1987)
- 『群書類従 27 雑部』(塙保己一編纂 続群書類従完成会 1987)
- 『史籍集覧 11 武家部 故実編』(近藤瓶城原編 角田文衛、五来重編 臨川書店 1967)
- キーワード
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- 書簡文-日本語
- 日本-歴史-江戸時代
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000140679