レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年02月06日
- 登録日時
- 2020/02/07 16:30
- 更新日時
- 2022/07/17 16:16
- 管理番号
- 2019-48
- 質問
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解決
1 北宇和郡鬼北町に伝わるノツゴ、又は赤子の泣き声の怪に関する伝承について、資料を探している。特に、旧日吉村のこれらに関する資料があれば教えてほしい。その他、愛媛県南予地方の山間部において、同様の伝承があれば知りたい。
2 南予地方における子返し(マビキ)に関する資料があれば、教えてほしい。特に、マビキの方法や遺体等の処理について、記載されたものを探している。
- 回答
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1 【資料1】
第5章信仰上 5憑きもの・妖怪伝承
p812~813
(抜粋)さて、宇和地帯の憑きもの信仰の実態を調査した桜井徳太郎によると、憑きもの信仰は、(1)憑きもの伝承と(2)憑き神信仰に二分される。前者は、鳥獣など動物の形をとって出現し、人間に憑いていろんな怪異現象をひきおこす妖怪の一部をさし、山犬・川獺(かわうそ・カワソ)・狸・蛇・夜雀・エンコ(河童)などの憑依伝承のことであり、後者は、峠や寂しい場所といった一定の場所に出現する妖怪のことを指し、それにはジキトリ・ガキボトケ・オクヨサマ・柴神様(柴折様)・ヒダリガミなどがあり、これらはその出現する場所に神として祀られている。また妖怪のうち非業の死をとげた幼児の亡霊とされるノツゴもよく人に取り憑くものといわれている。
p825
(抜粋)宇和島市豊浦からエビガ峠を越えて津島町岩松へ出る山道がある。その峠の中腹に柴折様とよばれる石仏がある。ここには狸・山犬・ノツゴなど妖怪がよく出るので、これらに憑かれないために、青草を手折って供えて行く。内海村油袋・平碆の峠の柴神様は足軽様とよばれている。西海町小浦の上の旧往還にテンヤ(店屋)があって、そのそばにも柴折様があった。
p832 ノツゴ
夜、山道を歩いていると、足がもつれて歩けなくなる。その状態を「ノツゴに憑かれた」という。内海村油袋では、ノツゴが「草履をくれ」といって追っかけてくると、急に足が重くなって歩けない。草鞋のチ(乳)か草履の鼻緒を切ってやると、ようやく足が動くようになる。同村平碆では、ノツゴが人に憑くと頭がぼうっとなって、手足がしびれ艪をこぐことができなくなる。大年の晩に煎った豆を撒くとよいといって、ノツゴ落としの呪いに漁師はその豆をオキバコに入れて船にそなえておく。
桜井徳太郎によれば、ノツゴがワァワァとかオギァオギァという赤子の泣き声を立てたり、母乳が出ないために栄養失調で死んだ乳呑児をノツゴと考えているという諸事象から、ノツゴとは野の子、つまり行先きを失ってあたりをさ迷い回る子どもの亡霊とみてもよい。
ところで松山地方(松山市中村・同市森松・砥部町高尾田)で五月五日に牛を休め、牛神を祭るのをノツゴ祭といった。土地神や牛馬・家畜の守護神を野神とかノツゴとよぶのはその他香川・徳島のいわば東四国地方にひろがっているが、宇和地帯から高知県幡多郡にかけてのノツゴは人々を襲う妖怪である。
四国西南部は、戦国時代に非業の死をとげたものが数多く実在し、ひときわ御霊信仰が濃厚な地域となった。元来、田野の神として土地の守護にあたった「野神」が、耕作に牛馬の役割がますにつれ牛馬守護の神へと分化した。しかし、その信仰の衰退にともなって牛馬の息災を祈ることよりも、この地域では牛馬の死霊が崇るという要素が強くなり、さらにその御霊信仰的要素が強調され、間引きや堕胎によって横死した嬰児の亡霊が重なり合った結果、妖怪としてのノツゴ伝承が成立したのである。つまり、農業の神としての野神が、信仰的零落の果てに、ノツゴという妖怪と化したといわれるのである。
【資料2】
第3章民間信仰の実態
p230~233 ノツゴ
この章の著者が桜井徳太郎になっており、欄外に「註1 ノツゴのついては別に詳論した(拙稿「ノツゴ考―民間信仰の歴史・民俗学的考察―」「史潮」74参照」とあるので、内容が重なるかもしれない。
2 【資料3】
第八章人の一生 第一節産育と成人
p284~285 かつて生活の貧困の中で、人が生きるために、新しい生命を断つ因習が存在した。女が水を飲んで性交した時は、妊娠しない(今治市)。松山市の太山寺へ自宅の針を持って詣で、捨ててくると避妊ができるという。堕胎は妊娠二、三か月目に行うのが普通で、ツワブキ・ゴボウ・フキ・ミョウガの根を一〇mほどに切って、それを局部に挿入する方法が採られた(一本松町ほか)。高い所から妊婦が飛び降りるとか、孟宗竹をゆがいて食べると、オロスことができた(西条市西之川)。間引きは、かつて道徳的に罪悪視されない時代があり、県下でも大正時代ころまで行われていた。子供が生まれると、相談の上、産婆が濡れ紙を用いて窒息死させたり、父親が石臼を抱かせて圧迫死させたという。
遺体等の処理については発見できなかった。
「愛媛県史」は、全文がweb公開、以下で閲覧可。
http://www.i-manabi.jp/system/regionals/regionals/search
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
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- 【資料1】『愛媛県史 民俗 上』 愛媛県 1983 <当館請求記号:K200-31>
- 【資料2】『宇和地帯の民俗』 吉川弘文館 1974 <当館請求記号:K382-2> ※貸出可
- 【資料3】『愛媛県史 民俗 下』愛媛県 1984 <当館請求記号:K200-31>
- キーワード
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- ノツゴ
- マビキ
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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質問1につきまして、情報をいただきましたので、以下のとおり追加します。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベース
国際日本文化研究センター(日文研)
https://www.nichibun.ac.jp/
怪異・妖怪伝承データベース
https://sekiei.nichibun.ac.jp/YoukaiDB3/index.html
ノツゴ 愛媛県
https://sekiei.nichibun.ac.jp/cgi-bin/YoukaiDB3/msearch/msearch.cgi?index=&config=&hint=%E3%81%B2%E3%82%89%E3%81%8C%E3%81%AA&set=1&num=100&query=%E3%83%8E%E3%83%84%E3%82%B4%E3%80%80%E6%84%9B%E5%AA%9B%E7%9C%8C
- 調査種別
- 書誌的事項調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000273766