レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年07月17日
- 登録日時
- 2018/03/25 12:34
- 更新日時
- 2020/04/17 14:42
- 管理番号
- 島根郷2016-07-001
- 質問
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解決
松江藩の藩政についてわかる資料がないか。できるだけ当時に書かれたものがよい。
- 回答
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資料1:『出雲私史』桃節山(著)、全12巻、文久2年(1862)成立。
明治以前の出雲の歴史を完述した唯一の史書。
著者は藩医の家に生まれ、儒臣の桃家に養子に入る。
本文は漢文編年体で、日本外史にならい氏別に編集している。
和本(明治25年)、和訳本(大正3年/谷口為次:訳)、和訳本(昭和47年/島根郷土資料刊行会)有り。
資料2:『藩祖御事蹟』桃好裕(著)、全5巻付録2巻。慶応3年(1867)成立。
松江藩初代藩主直政の事蹟録、一代記。
完成後まもなく100部限定で発行。大正5年に『松江藩祖直政公事蹟』として「出雲文庫」で出版。
資料3:『報国』小田切備中(著)、宝暦3年(1753)成立。
6代藩主宗衍(むねのぶ)を補佐して藩政改革を担当した家老・小田切備中の著と言われている。
原本は旧松江藩主の松平伯爵家蔵と言われているが、これとは別の稿本があり、旧松江藩儒臣の桃家の子孫が所蔵している。
その稿本によると、原文は漢文だが、随所に宇佐美恵助(江戸詰めの松江藩儒臣)による書き込みが入っており、増補本かもしれない。
『松江市史』資料編5近世Ⅰに活字化したものが収録。
資料4:『治国譜』朝日丹波郷保(著)、安永4年(1776)成立。
朝日丹波は7代藩主治郷のもとで「御立派(おたては)」と呼ばれる改革を実行した家老。
写本として伝わる。筆写本が島根県立図書館に所蔵。
『日本経済叢書』17、『日本経済大典』26、『松江市史』史料編5近世Ⅰに活字化したものが収録。
資料5:『秘書』朝日丹波恒重(著)。全2巻。
資料4の朝日丹波郷保の息子である恒重が「御立派の改革」について、父郷保からの伝聞に自身の記憶を加えて著述した内容。
原本は島根県立図書館に所蔵があり、写本・類本などは伝わっていない。活字化したものが『松江市史』史料編5近世Ⅰに収録。
資料6:『御用頭書』羽山平七郎重樹(著)。文政2-3年(1862-63)ごろ成立。
「頭書」は文久2-3年ごろ、すでに隠居していた9代藩主松平斉貴と、10代藩主松平定安の身辺の公私の出来事や、江戸・松江の藩内事情などを記録した日記。著者は藩士・羽山家6代目。
原本は個人蔵(現在は松江歴史館)。刊行本はなく、島根県立図書館に複写本がある。
また元所有者により解読本が作られ、「御用頭書(松平斉貴公御側日記)」と題したものの複写本を島根県立図書館が所蔵している(→資料7)。
資料8:『国令』黒沢長顕、松原基(著)。全13巻。
松江藩の法令集。
首巻(1冊)、前編(士・農・工商各1巻3冊、御家中・寺社・郷・町・江戸・道中・鳴物音曲各1巻6冊)、後編(士・農・工商各1巻3冊)で構成。
首巻・前編・後編は松原基の編集によって成立。御家中以降の6冊分は黒沢長顕の編集。
月照寺(松江市・松平家菩提寺)、島根県立図書館、国会図書館、東京大学史料編纂所などに写本がある。
島根県立図書館蔵本は松原基の自筆本とみられる。
島根県立図書館蔵本は首巻・前編3冊・後編3冊の計7冊、
国会図書館蔵本は首巻を欠く6冊、
月照寺蔵本と東京大学史料編纂所蔵本は13冊からなっている。東京大学史料編纂所蔵本は松平伯爵家蔵本の写しである。
『松江市史』史料編6近世Ⅱに活字化したものが収録。
資料9:『雲州松江秘事』霞亭(著)。享保18年(1733)ごろ成立。
著者の霞亭という人物については不明。末尾に「雲州松江遊歴中に之を求む」とあり、霞亭が松江滞在中に筆写したものと思われる。
様々な記事の寄せ集め。成立年代は明記されていないが、内容から享保18年ごろに編集されたと推測。
藩の武士身分に関する事柄が多い。
「江戸藩邸等の坪数」「十郡御制札場」「御国中番所所々」など「雲陽大数録」に似たような記載がある。
武士への給知や諸手当の支給方法、参勤交代に関わる経費、武士に対する法令・通達や武士等から上申があった案件の処理方法等に関する記事が多い。
藩主幸千代(宗衍)が幼少で意思確認が難しく、かつ江戸在府であったため、江戸-国元間で連絡を取り合う事柄を限定し、仕置役などの裁量で処置できることが拡大していったことが推測でき、藩主宗衍が藩政改革に取り掛かる前の18世紀前半の藩の行政機構について解明する手がかりとなる史料である。
原本は大阪市立大学森文庫の写本である。『松江市史』史料編6近世Ⅱに活字化したものが収録。
- 回答プロセス
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1.松江藩の藩政史料は現存しない。
2.それに代わる資料を、【資料10】「山陰の古書」及び、【資料11】『松江市史』を参考に、列記する。
- 事前調査事項
- NDC
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- 中国地方 (217 8版)
- 参考資料
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【資料1】桃好裕 著 ; 谷口為次 和譯 , 桃好裕 , 谷口, 為次. 和譯出雲私史 復刻. 島根郷土資料刊行会, 1972.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069338813-00 (当館請求記号 郷貸出217.3/モ72) -
【資料2】桃好裕 著 , 桃好裕. 藩祖御事蹟 一. 看古堂, 1867.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069535759-00 (当館請求記号 貴重092.8/34/1※貸出禁止資料) -
【資料3】小田切尚足 著 , 小田切尚足. 報國. 1753.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069476198-00 (当館請求記号 貴重092/389 ※貸出禁止資料) -
【資料4】松江市史編集委員会 編 , 松江市. 松江市史 史料編 5 (近世 1). 松江市, 2011.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023313304-00 , ISBN 9784904911129 (当館請求記号 郷貸出217.3/マ/2-5-1) -
【資料5】朝日丹波 , 朝日丹波. 秘書 乾・坤.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069280462-00 (当館請求記号 C1/2114 ※貸出禁止資料) -
【資料6】羽山重樹 , 羽山重樹. 御用頭書(松江藩)1 文久二壬戌年 : 松江市野津家蔵文書 1 複写. 1862.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069235967-00 (当館請求記号 C1/1583 ※貸出禁止資料) -
【資料7】羽山重樹 著 ; 野津隆 解読 , 羽山重樹 , 野津隆. 御用頭書(松平斉貴公御側日記)(解読) : 羽山平七郎重樹記 複写. 1863.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069448658-00 (当館請求記号 C2/2032 ※貸出禁止資料) -
【資料8】松原基 編 , 松原基. 國令 首巻,正編.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069512486-00 (当館請求記号 093.2/4 ※貸出禁止資料) -
【資料9】松江市史編集委員会 編 , 松江市. 松江市史 史料編 6 (近世 2). 松江市, 2013.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I024368881-00 , ISBN 9784904911204 (当館請求記号 郷貸出217.3/マ/2-6-2) -
【資料10】山陰の古書 1~87. 山陰中央新報社, 1977.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069345951-00 (当館請求記号 090.2/146/1 ※貸出禁止資料) -
【資料11】松江市史編集委員会 編 , 松江市. 松江市史 史料編 5 (近世 1). 松江市, 2011.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023313304-00 , ISBN 9784904911129 (当館請求記号 郷貸出217.3/マ/2-5-1)
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【資料1】桃好裕 著 ; 谷口為次 和譯 , 桃好裕 , 谷口, 為次. 和譯出雲私史 復刻. 島根郷土資料刊行会, 1972.
- キーワード
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- 松江藩
- 藩政
- 松平家
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000233159