レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013年02月11日
- 登録日時
- 2013/03/12 16:27
- 更新日時
- 2013/06/05 13:30
- 管理番号
- 埼熊-2012-261
- 質問
-
解決
『新渡戸稲造全集 8』のp400「一日一言」に収載されている歌「いくたびか 思ひさだめて変るらん 頼むまじきは我が心なり」は、最明寺(北条)時頼の歌となっているが本当か。また、この歌の出典は何か。
- 回答
-
質問の歌は『道歌教訓和歌辞典』に「可笑記」「塩尻」を出典として掲載されていた。
作者は「可笑記」では「最明寺時頼」、「塩尻」では「最明寺入道」とされている。
『典拠検索新名歌辞典』では上記「可笑記」「塩尻」の他に「続近世畸人伝」も出典としている。「続近世畸人伝」では、作者は明記されずに「古人」とされていた。
以下の資料の記述を紹介した。
『道歌教訓和歌辞典』(木村山治郎編 東京堂出版 1998)
p183に該当の歌に近いもの2首あり。
幾度か思い定めてかわるらん 頼むまじきは心なりけり (最明寺時頼『可笑記』四)
いくたびか思いさだめてかわるらん たのむまじきは我こころなり (最明寺入道『塩尻』一八)
『典拠検索新名歌辞典』(中村薫編 久保田淳新訂 明治書院 2007)
p82に以下の記述あり。
「幾度(いくたび)か思ひ定めて変るらむ 頼むまじきは心なりけり
可笑記・巻四・昔さる人の云へるは、最明寺時頼公御つれゞの御当座なり
続近世畸人伝・巻四・浪花鶴女
塩尻・巻一八・最明寺入道のうたに、巻五三・最明寺入道のうたに」上記辞典で出典とされている史料
「可笑記」(『仮名草子集成 14』(朝倉治彦、深沢秋男編 東京堂出版 1993)所収)
p280(巻第4-18)に以下の記述あり。
「むかし さる人のいへるハ 最明寺時頼公、御つれゝの御当座なり(ナシ)とて 幾度か思ひ定てかハるらん頼まじきハ心なりけり(後略)」
「塩尻」(『日本随筆大成 3-13』(日本随筆大成編輯部編 吉川弘文館 1977)所収)
p379に以下の記述あり。
「最明寺入道のうたに、いくたひか思ひさためてかはるらんたのむましきは我こゝろなり」
「続近世畸人伝」(『近世畸人伝・続近世畸人伝 東洋文庫』(伴蒿蹊、三熊花顛著 平凡社 1984)所収)
p412「浪華鶴女」中に以下の引用あり。
「いくたびかおもひ定めてかはるらんたのみがたきは心なりけり。と古人も嘆かれき。」
- 回答プロセス
-
その他の調査経過
最明寺(北条)時頼についての調査
『武士はなぜ歌を詠むか 鎌倉将軍から戦国大名まで』(小川剛生著 角川学芸出版 2008)
時頼の名前は出てくるが、時頼が詠んだ歌についての記載なし。
『北条時宗の時代』(北条氏研究会編 八木書店 2008)
p662「北条氏と和歌」中に「北条時頼 安貞元年~弘長三年(1227~63) 兄経時と同様、将軍歌会には参加しているし、「尊卑分脈」には「歌人賦和歌百首」とあって、歌は作ったのであるが、残っていない。(後略)」との記述あり。
以下3冊は、歌についての記述が見つからなかったもの
『時頼と時宗』(奥富敬之著 日本放送出版協会 2000)
『史伝鎌倉源家北条記』(山口俊章著 未知谷 2009)
『執権時頼と廻国伝説』(佐々木馨著 吉川弘文館 1997)新渡戸稲造についての調査
『新渡戸稲造 1862-1933』(草原克豪著 藤原書店 2012)
質問の出典である「一日一言」について、p285に「これは道徳に関する小文を366編選び、一日一つずつ一年間で読み終えるようにしたもので、多くの人名が引用されているが、そのほとんどが日本人である。また、それぞれ簡潔な文章に続いて、内容に見合った自作を中心とする和歌が添えられているところにも、読者の心に訴えようとした新渡戸の工夫が見られる。」とある。
以下3冊は、関連の情報のなかったもの
『新渡戸稲造と武士道』(須知徳平著 青磁社 1984)
『新渡戸稲造論集 岩波文庫 』(新渡戸稲造〔著〕 鈴木範久編 岩波書店 2007)
『永遠の青年新渡戸稲造』(内川永一朗著 新渡戸基金 2002)「吾妻鏡」からの調査
『和歌が語る吾妻鏡の世界』(大谷雅子著 新人物往来社 1996)
p13に、「吾妻鏡」には23首の和歌が拾録されている旨の記述あり。
p14-15に表「吾妻鏡二十三首の和歌」あるが、質問の歌はなし。
『吾妻鏡の思想史 北条時頼を読む』(市川浩史著 吉川弘文館 2002)
質問に結びつく情報なし。インターネット情報
《国立国会図書館サーチ》で〈最明寺時頼〉をキーワードに検索したところ、以下の資料が全文閲覧可能。ただし該当の歌なし。
「最明寺殿教訓百首」(北条時頼著 文廼家主人校 中近堂 1893)
(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/755582 国立国会図書館 2013/2/10最終確認)
- 事前調査事項
-
「国歌大観」(旧版)には、載っていなかった。
- NDC
-
- 詩歌 (911 9版)
- 個人伝記 (289 9版)
- 参考資料
-
- 『道歌教訓和歌辞典』(木村山治郎編 東京堂出版 1998)
- 『典拠検索新名歌辞典』(中村薫編 久保田淳新訂 明治書院 2007)
- 『仮名草子集成 14』(朝倉治彦、深沢秋男編 1993)
- 『日本随筆大成 3-13』(日本随筆大成編輯部編 吉川弘文館 1977)
- 『近世畸人伝・続近世畸人伝』(東洋文庫)(伴蒿蹊、三熊花顛著 平凡社 1984)
- キーワード
-
- 北条 時頼(ホウジョウ トキヨリ)
- 最明寺 時頼(サイミョウジ トキヨリ)
- 和歌
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000128783