レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20211225
- 登録日時
- 2021/11/25 11:44
- 更新日時
- 2024/04/26 17:11
- 管理番号
- 北九2021中央080
- 質問
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解決
天正遣欧少年使節のメンバーの一人中浦ジュリアンと小倉との関わりが分かる資料はありますか。
中浦ジュリアン以外のメンバーで小倉に関りがある人・小倉がキリスト教寵遇の地であった特別なエピソードがあったら教えてください。
- 回答
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『日本切支丹宗門史』には禁教も進んだ寛永10(1633)年10月、小倉城下の郊外で中浦ジュリアンと三人のキリシタン信者(トマス了寛、フェルナンデス神父の伴侶ルイス・カフク、ヨハネダ・コスタ神父の伴侶ディオニシオ山本)が捕縛されたことが記されています。
1625年長崎で迫害が厳しくなった頃から中浦ジュリアンは小倉に移動、潜伏し水面下でキリスト教宣教を行なっていました。(『福岡県地域史研究 第19号17頁』)信者の三人は小倉で火あぶりの刑に、中浦ジュリアンは長崎に送られ、苦痛を長引かせる残忍な「逆さづり穴の刑」に処され殉教しました。享年66歳。
(中浦ジュリアンが小倉では足立山麓の曹洞宗の寺の下の小さな隠れ家にいたという話がありますが典拠資料はありませんでした。(『西海の聖者』205頁/0013902978)
【その他小倉に関りがある事項】
*外国人宣教師の小倉城造営に関する寄与:「天守閣造営に基督教宣教師の説を入れ希臘風を加味したる由」とある。(『鵜の真似/小島礼重』36頁』)
*細川忠興の妻ガラシアの殉教ののちも忠興自身はキリシタンではなかったがキリシタン擁護の向きがあり小倉は布教が盛んでした。1610年(慶長15)小倉は信者が2000人いる全国有数のキリスト教の街になりました。
忠利(小倉藩第二藩主、正室三男、キリスト教信者)の時代には肥前熊本移封までぶどう酒造り(嗜好品というよりは薬酒、聖餐式・洗礼式の儀式に用いた。葡萄酒はキリシタンを勧める飲み物であると公認が広まりその後禁教が進むとぶどう酒造りを辞めざるを得なくなった)を命じていました。(『永青文庫研究創刊号2018.3』)
*細川家の有力大名家中キリシタン重臣だった加賀山隼人と中浦ジュリアンが信仰をささえていたといわれる小笠原玄也(父はガラシャを介錯して自害した小笠原少斎(しょうさい)。妻は加賀山隼人(はやと)の娘マリヤみや。)一家の弾圧・殉教事件がある。(『北九州市史近世』942~943頁)
*島原の乱で総大将の天草四郎の首は細川家の一家臣によって挙げられたが、見せしめのため天草四郎の首を小倉に送りさらし首にした逸話がある。(『豊津町史上巻』809頁:島原の乱の首謀者たち(つまり天草四郎時貞、有江藍物など)の首が小倉に送られ獄門にかけられた。(「小笠原文庫/御當家續史第二巻」より 同月寛永十五年三月、島原一揆張本大矢野四郎次ニ有江監物ノ首、小倉へ到来 原町ト清水寺ノ間、往還ノ西カワニ獄門ニカケル。)
*踏み絵に用いた絵像の一つは、島原の乱の際、天草四郎の四天王の一人であった森宗意軒の所持品で戦利品として小倉藩の手中におさめたものとの記載がありました。(『記録』第1冊84頁に『宗門改像踏』(内山円治遺稿)を引用したもの、『鵜の真似』には「宗門改めに踏み候切支丹の絵像は一つは島原陣の節取帰りし由・・」との引用あり)
【中浦ジュリアン以外の少年使節メンバーで小倉に関りがある人:伊東マンショ】
慶長9(1604)年頃(徳川家康の時代)
当時の小倉にいた司祭はカミュ・コンスタンツ師とグレゴリオ・セスペデス師(小倉で没)の二人。細川忠興に擁護されていた小倉教会セスペデス神父の助司祭として1608年(慶長13年)伊東マンショが司祭に叙階されると小倉教会に助任。
3年ほど小倉を起点に布教活動をしていましたが、1611年(慶長16年)セスペデスの死をきっかけに忠興が禁教政策をはじめました。伊東マンショらは小倉にコンフラリア(信徒組織)を組織して、信徒の相互扶助を確立。教会は破壊され祭司たちは小倉を追放されました。伊東マンショは忠興の子忠利が藩主である中津へ向かいクリスマスのミサに参加したのち長崎へ。その後1612年11月3日、長崎のコレジヨに於いて病で死去、原マルチノ,メスキータ神父が看取りました。享年43歳。(『福岡県地域史研究 第19号 』)
- 回答プロセス
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- 事前調査事項
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今年2月、加賀山隼人の処刑と、小笠原玄也の追放を小倉藩主細川忠興が命じたことを示す書状が熊本大学付属図書館寄託「永青文庫」史料より発見され、その関連調査。
熊本大学HP「一次史料を発見」https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/zinbun/20210202
(これまではイエズス会宣教師のローマへの報告書でしか知ることができず、今回、処分を下した細川家の組織内で作成された一次史料がはじめて発見されたことによって確定的な事実が知られることになったもの。)
- NDC
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- 日本史 (210)
- 参考資料
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日本切支丹宗門史 上 レオン・パジェス/[著] 吉田 小五郎/訳
(岩波文庫) 4-00-334331-X 岩波書店 1983 分類:198.221 タイトルコード:1000001507477 (0011562493) -
北九州市史 近世 北九州市史編さん委員会/編集
マーク番号:93150078
北九州市 1990 分類:219.1 タイトルコード:1009110035490 931~945頁 (0012388443) -
毛利・細川・小笠原の領主三代のキリシタン政策と中浦ジュリアンの処刑 田郷 利雄/著
(シリーズ門司と小倉の歴史から九州がわかる話)
田郷利雄 1997 分類:219.1 タイトルコード:1009910016194 46~50頁 (0014176408) -
西海の聖者 浜口 賢治/著
小説・中浦ジュリアン 4-7512-0716-4 マーク番号:98029796
葦書房 1998.7 分類:913.6 タイトルコード:1009810033560 (0013902978) - 九州キリシタン新風土記 浜名 志松/著 葦書房 1989.6 分類:198.221 タイトルコード:1008910025476 「北九州市」612~617頁、 (0011438322)
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日本キリシタン殉教史 片岡 弥吉/著
時事通信社 1979.12 分類:198.221 タイトルコード:1000001560023
「中浦ジュリアンの殉教」86~89頁、「伊東マンショの生涯」81~82頁、「細川藩の殉教者」303~319頁、
「邦人司祭一覧」148~149頁、「人名・地名索引-小倉」あり -
福岡県地域史研究 第19号 西日本文化協会福岡県地域史研究所/編集
福岡県 2001.3 分類:219.1 タイトルコード:1000001216345
「筑前、筑後、豊前における中浦ジュリアンと伊東マンショの活躍/結城了悟」 (0014748677) - カトリック小倉教会「殉教の歴史」 http://www.kokuracatholic-church.com/history.html
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小倉
小倉市役所 1950 分類:291.91 タイトルコード:1000002375521「城」91~96頁、「きりしたん物語」97~104頁 (0011084043) -
小倉郷土史学 第1巻 小倉郷土会/編 記録
国書刊行会 1982.5 分類:051 タイトルコード:1007010050204
一巻76頁~85頁「小倉の切支丹について/末岡作太郎著」86頁~101頁「小倉のきりしたん遺蹟/木島甚久著」 (0015633498) -
永青文庫研究 創刊号 熊本大学永青文庫研究センター/編集
熊本大学永青文庫研究センター 2018.3 分類:219.4 タイトルコード:100000228388 「小倉藩細川家の葡萄酒造りとその背景」「熊本城の被災修復と細川忠利」ともに後藤典子著 (0018433391) -
北九州市立自然史・歴史博物館研究報告B類歴史 第15号 北九州市立自然史・歴史博物館/編集
北九州市立自然史・歴史博物館 2018.3 分類:210.04 タイトルコード:1000002172428
「細川小倉藩の葡萄酒製造/永尾正剛」 (0018317792) -
鵜之眞似 小島 礼重/著(小倉叢書)
静観堂 1926.3 分類:219.1 K211.3 タイトルコード:1007010041562 36頁 (0014569933) -
豊津町史 上巻 豊津町史編纂委員会/編集 豊津町 1998.4 分類:291.91 タイトルコード:1000001624468
809頁 (0014216873) -
全国かくれキリシタン研究会会誌 第27号 全国かくれキリシタン研究会/編
創立30周年記念号 全国かくれキリシタン研究会 2019.6 分類:198.221 タイトルコード:1000002392662
「加賀山隼人と細川忠興」31~47頁 (0018548172) -
全国かくれキリシタン研究会会誌 第29号 全国かくれキリシタン研究会/編
全国かくれキリシタン研究会 2021.5 分類:198.221 タイトルコード:1000002497667
「豊前国細川藩におけるキリシタン禁教政策の展開」104~127頁 (0018662320) -
全国かくれキリシタン研究会会誌 第28号 全国かくれキリシタン研究会/編
大会30回記念号 全国かくれキリシタン研究会 2020.5 分類:198.221 タイトルコード:1000002392663
「小倉キリシタン史序説」90~110頁 (0018548206) -
かわら
[香春町教育委員会] 潜伏キリシタン 0285-564X タイトルコード:2990000318695
2020年第90集 20200930 「香春キリシタン史私考/安東邦昭著」「田川キリシタン小史/小川研次著」 (0018548206) -
郷土誌南小倉周辺の歴史と風俗 中村 博/編集[中村博] 1998.4 分類:219.1 K211.31 タイトルコード:1009810021667
「天草四郎の首」82~85頁/(『小倉藩史余滴』 米津 三郎/著からの引用 2022/03/25追加) (0016704082) -
きりしたんの愛と死 上 助野 健太郎/編著 山田 野理夫/編著
その歴史と風土と マーク番号:95205316 東出版 1967 分類:198.221 タイトルコード:1000001947790 (0010538916) -
小倉城 北九州市教育委員会/編
小倉城調査報告書 北九州市の文化財を守る会 1977.3 分類:521.823 タイトルコード:1008910000434 5~7、15頁 (0012525705) -
小倉藩史余滴 米津 三郎/著
4-87415-099-3 マーク番号:95008147
海鳥社 1995.2 分類:219.1 K211.3 タイトルコード:1000001054061 「天草四郎の首」202~204頁 (0014193940) -
新・熊本の歴史 4
熊本日日新聞社 1979 分類:219.4 タイトルコード:1007010044711 207~216 (0011037835) -
新・熊本の歴史 5
熊本日日新聞社 1980 分類:219.4 タイトルコード:1007010044712 108~122「細川氏と切支丹たち/花岡興輝」 (0011037850) -
クアトロ・ラガッツィ 若桑 みどり/著
天正少年使節と世界帝国 4-08-775326-3 マーク番号:03053801
集英社 2003.10 分類:210.48 タイトルコード:1003310061423 (天正遣欧少年使節に関する資料 0015121973) -
日本とヴァチカン 結城 了悟/著
フランシスコ・ザビエルから今日まで 4-7896-0308-3 マーク番号:89004267
女子パウロ会 1989.2 分類:198.221 タイトルコード:1008910007604 51-56頁 (天正遣欧少年使節に関する資料 0011381571) -
日本キリシタン物語 田中 将/著
(角川新書) マーク番号:85-57352
角川書店 1966 分類:198.221 タイトルコード:1000002307543 79-83頁 (天正遣欧少年使節に関する資料 0011033271) -
世界史のなかの天正遣欧使節 伊川 健二/著
4-642-08325-6 978-4-642-08325-6 マーク番号:17045602
吉川弘文館 2017.10 分類:210.48 タイトルコード:1000002089359 (天正遣欧少年使節に関する資料 0018204750) -
天正遣欧使節 新版 松田 毅一/著
(松田毅一著作選集) 4-88695-206-6 978-4-88695-206-6 マーク番号:08002045
朝文社 2008.1 分類:210.48 タイトルコード:1000000186792 (0016130007) - 全国かくれキリシタン研究会会誌 第30号 全国かくれキリシタン研究会/編 創刊30周年記念号 全国かくれキリシタン研究会 2022.6 分類:198.221 タイトルコード:1000002595520「小倉藩小笠原時代の宗門改政策と踏絵/安東邦明著」113~158頁 (0018766220)
- 小倉市誌 補遺マーク番号:97218606福岡県小倉市役所 1955 分類:291.91 タイトルコード:1000002326551 「小倉のキリシタン」80頁~124頁 (0015519150)
- かわら2024年第97集 [香春町教育委員会] 2024.3 (0018900308)
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日本切支丹宗門史 上 レオン・パジェス/[著] 吉田 小五郎/訳
- キーワード
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- 中浦ジュリアン
- 伊東マンショ
- 天正遣欧少年使節
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 所蔵調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000307998