レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2004年04月07日
- 登録日時
- 2005/02/19 16:17
- 更新日時
- 2015/02/26 18:06
- 管理番号
- 2004-0036
- 質問
-
解決
「チラシ」はなぜカタカナで表記するのか。
- 回答
-
質問者は「“チラシ”の語源は、“散らす”から来ていることは知って
いる。」とのことであった。
思い当たる本をめくっていったが、「広告用語事典」や、「販促辞典」
では、カタカナ表記について触れられていなかった。
下記資料等から、
・江戸では「引札」京阪では「ちらし」と呼ばれていた。
・動詞ではなく名詞であるために、明瞭化を図ろうとしてカタカナの
「チラシ」を常用するようになったものではないかと推測される。
と著者・増田太次郎氏は述べている。
目次
1.カタカナの理由
2.チラシそのものに関する参考資料
1.カタカナの理由
●請求記号:102-MAS
『江戸から明治・大正へ 引札 繪びら 錦繪広告:ブレーン別冊』
(増田太次郎 著、誠文堂新光社 発行、1976)
→ p.26 『「引札」から「チラシ」広告へ』
「なお、ちらしがチラシと書かれるようになったのは、動詞でなく
名詞であるために、字面(ジズラ)の明瞭化を図ろうとして、
期せずしてカタカナの「チラシ」を常用するようになったもので
あろう。」
と記述されている。
これは、この見出しの内容として「引札」が「チラシ」に変わって
いったのはいつか推定した結果、と言う流れで書いてあるので、
「筆者の推測」である。
●請求記号:102-MAS
『引札繪ビラ風俗史 新装版』(増田太次郎 著、青蛙房、2011)
→ p.25 『ビラの歴史』
「名詞としての「びら」がすぐわかるように、本書では以下カタ
カナで「ビラ」と書くことにしよう。(ちらしがチラシと書か
れるように至ったのも同じような理由からであろう。)」
とある。
現資料と前記資料とにも同一著者の推測である。
*これ以外にチラシがカタカナである理由が書いてある資料は
見つからなかった。
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2.チラシそのものに関する参考資料
●請求記号:146.2-INO
『江戸コマーシャル文芸史』(井上隆明 著、高文堂出版、1986)
→ p.28 ・平賀源内の『麦飯報条(ひきふだのフリガナ有り)』
(飛花落葉所収)などを引用
・「守貞漫稿」(嘉永6(1853)年)
「行人集る路上に報帖を携へ出て行人に与へ告ぐ、
蓋し報帖を江戸は引札と云ひ京阪はちらしと云ふ」
よく引用される資料で、江戸の引札を上方でチラシと呼ぶと
する。
●請求記号:142.2-TAN
『江戸のコピーライター』(谷峯藏 著、岩崎美術出版 1986年)
『江戸コマーシャル文芸史』(井上隆明 著、高文堂出版、1986)の
平賀源内の『飛花落葉』などを引用して説明。
→ p.32 たしかに『飛花落葉』の「報條」は「チラシ」のルビがふって
ある。だがそれは上方の影響だったと思われる。
南畝も天明七、八年ごろ刊行の『四方のあか』(後出)に
「酒中花のちらし(報條/ルビ)」として「ちらし」に「報條」と
漢字でルビをふっている。
とすれば、ちらしの名詞は江戸では引札には使わない言葉
だったとしか考えられない」
*「なぜカタカナ表記か」については言及なし。
●請求記号:102-KAR
『田村コレクション 引札』(花林舎 編、紫紅社、2012)
→ p.7 また嘉永六(1853)年頃成立したとされる
『守貞漫稿(もりさだまんこう)』には、
「蓋し報帖を江戸は引札といひ、京坂はちらしといふ」との
記載があり、「チラシ」の語は現代にも引き継がれることとなった。
●請求記号:102-MAS
『引札 繪びら 錦繪廣告 江戸から明治・大正へ ブレーン別冊』
(増田太次郎 著、誠文堂新光社、1976)
→ p.26~ 『江戸では「引札」京阪では「ちらし」』
「定説になっているのだが、実際には引札がはじまった
最初から引札と並んで関西では「ちらし」といわれて
いたのである。」とある。
その根拠となる資料は
『近世風俗史』(原名・守貞漫稿)(喜田川守貞 著)
「行人集る路上に報帖を携へ出て行人に与へ告ぐ、
蓋し報帖を江戸は引札と云ひ京阪はちらしと云ふ」
とある。
→ p.28 『「ちらし」という言葉』
『式亭雑記』(式亭三馬 著、 文化7(1810)年発行 記事)
「並に半紙四ツ切りの小形引札製作、あまねく世上にちらす。」
とある。
引札は配る、配布する、撒き散らすことによって目的を達する
ものだから、引札がいつの間にかちらしといわれるように
なったとしても不思議ではないような気がする。
特にちらしと名付けなくても、だれいうとなくちらしになって
しまったのではないかと思う。
*当館は『原名・守貞漫稿』、『式亭雑記』は所蔵してない。
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参考web情報
・チラシとなった訳けが書いてあるわけではないが、チラシとビラの
違いを紹介している。また、“守貞謾稿”についても言及している。
NHK総合テレビ 「情報まるごと トクする日本語」
(http://www.nhk.or.jp/kininaru-blog/)のホームページに
記事有り
「2012年2月15日(水) チラシとビラ 同じもの?」
(http://www.nhk.or.jp/kininaru-blog/109411.html)
(2015年2月20日 確認)
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 広告.宣伝 (674 8版)
- 参考資料
- キーワード
-
- 引札
- ちらし
- チラシ
- 撒き散らす
- びら
- ビラ
- 絵ビラ
- 守貞漫稿(もりさだまんこう)
- 式亭雑記
- 照会先
-
- NHK総合テレビ 「情報まるごと トクする日本語」
(http://www.nhk.or.jp/kininaru-blog/)
(2015年2月20日 確認)
- NHK総合テレビ 「情報まるごと トクする日本語」
- 寄与者
- 備考
-
このレファレンス事例は、2004年に登録した内容に追記・訂正を加え、
2013年、2015年に更新しています。
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000020427