レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2014年10月08日
- 登録日時
- 2017/01/24 18:36
- 更新日時
- 2017/01/26 10:08
- 管理番号
- 千県西-2016-0014
- 質問
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解決
中国では、ウサギ、月、桃はおめでたいものとされているようだが、なぜか。
この3点に関係性はあるか、また陰陽などは関係があるか。
- 回答
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【資料1~9】により、中国ではウサギは長寿、月は不死や豊穣、桃は不死、再生、豊穣、長寿、招福の象徴であることがわかりました。
3点の関係性を表す資料は見つかりませんでしたが、【資料5】によると月とウサギは密接なつながりがあるようです。また【資料4】より月とウサギは陰を表すようです。
【資料1】『中国シンボル・イメージ図典』(王敏編 東京堂出版 2003)
p3「うさぎ ウサギ 兎」の項 「蛇との組み合わせは縁起がいいとされ、その絵は円満を表す。」
月の記述なし。
p114-116「もも モモ 桃」の項 「不死、長寿のシンボル」「桃符といって、桃の板にめでたい言葉や吉祥画を描くとよいとされる。」
【資料2】『世界シンボル大事典』(ジャン・シュヴァリエ共著 大修館書店 1996)
p114-116「ウサギ」の項「〔中国・道教〕月と同じく、死んではよみがえる野ウサギは、その結果として道教では<不死の薬の調合師>となった」
p644-649「月」の項 「〔中国・満月の意味〕姮娥(こうが)という女神の住む月の祭り(仲秋節)は中国の3大例祭の1つで、(中略)月は豊穣のシンボルである」
p989-990「モモ」の項 「〔中国・日本〕(中略)中国では、モモの木を、再生と豊穣のイメージから、結婚のシンボルともしている。」
【資料3】『図説世界シンボル事典』(ハンス・ビーダーマン著 八坂書房 2000)
p306-308「ノウサギ」の項に「また中国では、古くから月のノウサギは(中略)長寿のシンボルとされている。」
p258-260「月」の項 中国の記載はなし。
p439「桃」の項に「古代中国では、桃は不死や長寿のシンボルとされた。」「伝説によれば、女神西王母が崑崙山にもつ庭園では、」「桃の木には悪霊を追い払う力があるとされ、」「桃の花の咲き乱れる林のはずれにある洞窟を抜けると、その先に「桃源郷」とよばれる別世界が広がっているという伝説もよく知られている。」
【資料4】『世界シンボル辞典』(J・C・クーパー著 三省堂 1992)
p122-124「Hare野ウサギ」の項に「野ウサギは月に属する動物で、すべての月の神の持物。」とあり、とくに中国では「【中国】野ウサギは月をあらわす。陰の動物として、女性的な陰の力をあらわす。皇帝の配偶者、長寿。(中略)赤い野ウサギは幸運、平安、繁栄、有徳の支配者、黒い野ウサギは幸運、善政を象徴する。」という意味を持つ。
p170-172「Moon月」の項に、「【中国】月は、自然界の中の女性的すなわち陰の原理の本質。受動的で果敢ないものの象徴であるが、同時に不死をあらわす。」
p204-205「Peach桃」の項に「【中国】桃は、不死、(中略)長寿、招福の象徴。」
【資料5】『世界大百科事典』
『世界大百科事典 3 イン-エン』(平凡社 2007)
p223-224「ウサギ 兎」の項はあるが、おめでたいという意の記述はない。
ただし月との関係性を示した記述がある。p224「[象徴]ウサギを月と結びつける考え方は世界的な現象で、月に見える黒い影をウサギの姿と見てのことである。古代中国では≪楚辞≫天問篇その他に月中にウサギがいることが記されており」
『世界大百科事典 18 チキン-ツン』(平凡社 2007)
p553-542「つき 月」の項はあるが、おめでたいという記述はない。
『世界大百科事典 28 メ-ユウ』(平凡社 2007)
p265-266「モモ 桃」
p266【象徴と民俗】[中国]の項に「桃の枝や棒を死のけがれを払うために用いるという記事は
≪左伝≫≪週礼≫≪例記≫などに見える」「桃を仙果だとし、それを食べることにより長生が得られる」とある。
【資料6】『中華五福吉祥図典 寿 福禄寿喜財』(黄全信編 国書刊行会 2005)
p105「卯兎賀寿」の項
p56,84,92,140,186,198,200,206,210,214,216,232,238,240に桃の記述あり。
解説はないが、図内に桃が記載されているページもある。
【資料7】『中国伝統吉祥図案』(李祖定編 説話社 2009)
p105「三兎紋」
p50「桃」
【資料8】『日本・中国の文様事典』(視覚デザイン研究所・編集室編 視覚デザイン研究所 2000)
p241「兎 うさぎ」
p274「桃 もも」の項に「西王母伝説では、三千年に一度実を付け、食べると寿命を延ばすとされる桃が西王母から漢の武帝に与えられたとされ、桃は長寿を意味する吉祥文となった。」
月の項目なし。
【資料9】『福をよぶ中国の切り紙「剪紙」 暮らしが育んだ幸せを願う形全127図案収録』(上河内美和著 誠文堂新光社 2008)
p57「卯」
p32「桃」
月の項目なし。
【資料10】王秀文「桃の民族誌 : そのシンボリズム(その三)」(『日本研究』20巻 2000.2)p 125-171
PDF版を国際日本文化研究センターの機関リポジトリから閲覧可。(https://nichibun.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=762&item_no=1&page_id=13&block_id=21)
(インターネットの最終アクセス:2017年1月7日)
- 回答プロセス
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まず【資料5】を確認。NDC分類389(民族学、文化人類学)の棚をブラウジング。【資料2~4】を確認した。
世界ではなく、中国だけのシンボル事典があればと思い自館OPACを全項目「シンボル 中国」で検索。【資料1】がヒット。
自館OPACで件名「うさぎ」+全項目「民俗」で『ウサギの日本文化史』(赤田光男著 世界思想社 1997)、『野兎の民俗誌』(天野武著 岩田書院 2000)がヒット。件名「月」+全項目「民俗」で『古代日本の月信仰と再生思想』(三浦茂久著 作品社 2008)、『月からのシグナル』(根本順吉著 筑摩書房 1995)がヒットするが、4冊とも関連する記述なし。件名「桃」+全項目「民俗」ではヒットなし。
【資料1】から得たキーワード「吉祥」から調査。自館OPACを全項目「吉祥 図典」で検索。【資料6】の全5冊がヒット。件名が「図案」とある。自館OPACで全項目「図案 中国」で検索すると、35件ヒットあり。そのうち【資料7~9】を確認した。
3点の関係性があるか調査する。これまで見た資料には載っていなかったので、ヒントを得るためインターネット検索。Googleで「月」「桃」「ウサギ」「中国」をかけあわせて検索するがふさわしい記述が見つからない。【資料6】p56、【資料8】に記述のある、桃と深くかかわりのありそうな西王母(道教の女神)からも調査。Googleで「西王母 月」「西王母 月 ウサギ」等で検索。「西王母 月」で検索すると、3点の関係性の記述はみつからなかったが、中国の桃の民俗について詳しい論文【資料10】がヒットした。
- 事前調査事項
- NDC
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- 民族学.文化人類学 (389 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『中国シンボル・イメージ図典』(王敏編 東京堂出版 2003)(1101871702)
- 【資料2】『世界シンボル大事典』(ジャン・シュヴァリエ共著 大修館書店 1996)(1101508981)
- 【資料3】『図説世界シンボル事典』(ハンス・ビーダーマン著 八坂書房 2000)(1101721302)
- 【資料4】『世界シンボル辞典』(J・C・クーパー著 三省堂 1992)(1101109860)
- 【資料5】『世界大百科事典』(平凡社 2007)(1102074975)(1102075121)(1102075220)
- 【資料6】『中華五福吉祥図典 寿 福禄寿喜財』(黄全信編 国書刊行会 2005)(0105871182)
- 【資料7】『中国伝統吉祥図案』(李祖定編 説話社 2009)(2102296714)
- 【資料8】『日本・中国の文様事典』(視覚デザイン研究所・編集室編 視覚デザイン研究所 2000)(2101135343)
- 【資料9】『福をよぶ中国の切り紙「剪紙」 暮らしが育んだ幸せを願う形全127図案収録』(上河内美和著 誠文堂新光社 2008)(2102178078)
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【資料10】王秀文「桃の民族誌 : そのシンボリズム(その三)」(『日本研究』20巻 2000.2)p 125-171
(https://nichibun.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=762&item_no=1&page_id=13&block_id=21)
- キーワード
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- 中国
- うさぎ(兎)
- 月
- 桃
- シンボル
- 象徴
- 吉祥
- 図案
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事項調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000207248