レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2011/08/04
- 登録日時
- 2013/01/23 02:00
- 更新日時
- 2013/08/29 15:22
- 管理番号
- 6000005062
- 質問
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解決
名神高速道路の豊中インターチェンジ付近に行基がたてた寺が昔あったと聞いたが、このあたりの地域の過去の様子についてわかる資料はあるか。
- 回答
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『とよなか歴史・文化財ガイドブック』『文学にみる豊中の古迹』『庄内と庄内周辺史跡散歩』などに、豊中インター付近にかつて存在した島田の集落や、行基作と伝わる本尊のある観音堂(勧進寺)などについての記載があり。
- 回答プロセス
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郷土資料の書架を探す。
『とよなか歴史・文化財ガイドブック』(豊中市教育委員会)p65「天王山観音堂霊蹟碑」によると、名神高速豊中インターチェンジのそばに同名の碑があり。かつてこの地には勧進寺(通称観音堂)という大伽藍を持った寺院があり、行基作の観世音菩薩像を本尊としていたが、中世には1つの小堂が残るのみとなっていた。応永32(1425)年に摂津国椋橋(くらはし)嶋堂の勧進寺の鐘として鋳造され、嘉吉3(1443)年に丹波の西楽寺(さいらくじ)に買い取られたと記された梵鐘が、現在尼崎市寺町の如来院にあるとのこと。また勧進寺の南には旧島田村の稲荷神社があった。なおp65「島田遺跡記念碑」によると、昭和35(1960)年のインターの工事の際に調査が行われ、豊中インター付近には弥生時代後期から中世まで続いた集落があったが、鎌倉時代にはこのあたりは水田などになっていたことが判明したとの記載があり。
また『文学にみる豊中の古迹』(鹿島友治)p50「嶋堂勧進寺と稲荷神社」によると、豊中インターの敷地はもと島田字古屋敷といい、島田村の原集落であったが、水害のために集落は堤防内の現在地に移転したとの伝承があるとのこと。勧進寺跡碑・稲荷神社跡碑の副碑文の一節が引用されているほか、如来院にある梵鐘の鋳銘もあり。
『とよなかの史跡巡り』(瀧健三)p118「島田遺跡」には、島田の村落は古くは豊中インターの西にあったが、大水のたびに水害に悩まされるため防水堤の内側(東側)に移転し、村の跡は畑としたとあり。村の跡は堀で囲まれた環濠集落であった。また江戸・室町・鎌倉・平安・奈良・飛鳥・弥生期それぞれの遺物が出土しており、水害のたびに村を離れては戻っていたことがわかるとの記載もあり。
『新修豊中市史第9巻 集落・都市』(豊中市)p62「河辺の集落」に、川中の集落の例として島田の集落が挙げられている。猪名川下流域の低湿地では、堤防による河川管理がなされるまでは水路が縦横に走っており、島田ではその名のとおり川に囲まれた島に集落があったとのこと。また勧進寺の梵鐘について、小型でよく響くものだったため兵団に携行され戦時の合図に用いられて、西岡の川嶋(京都市西京区)・丹波桑田郡太田村西楽寺(京都府亀岡市)から尼崎市如来寺へと移ったとの記載もあり。また『新修豊中市史第4巻 考古』(豊中市)では、p177(古墳時代)およびp467(飛鳥・奈良・平安時代)で島田遺跡の出土品を扱っている。
『庄内と庄内周辺史跡散歩』(森本吉道)p14「環濠集落『島田』は『島堂』ともよばれていた」には、猪名の入江の中で島になったところに勧進寺の観音堂があったところから「島堂」の名がついたとあり。勧進寺には弁慶伝説・観音伝説があるとのこと。p13「庄本町、庄内宝町、庄内栄町等には条里制の遺構が残る」には、尼崎市戸ノ内の治田寺(椋橋荘の総氏寺)や椋橋総社の東南にあり保元・平治の乱で廃絶したとされる新福寺(現在は豊中市二葉町に再興)は行基が開基であると伝わっているとあり。また新福寺の東には西大寺という寺院もあったとのこと。
『豊中の伝説と昔話』(鹿島友治)p14「島堂観音堂の梵鐘」には、源義経の平氏追討の際、武蔵坊弁慶が勧進寺の大梵鐘を尼崎に持ち出して兵を集まるために用いたとの伝承の記載があり。また勧進寺は承久の乱で焼失したとの伝承もあり。『島田村のあゆみ』(下村弘)p8「勧進寺の観音様」には、聖武天皇が国分寺を建立した際、古屋敷にも伽藍が建てられ、行基の作った聖観音菩薩が本尊となったとあり。また勧進寺は織田信長と荒木村重が戦った際に全焼して観音堂のみが残ったとの記載があり。なお『角川日本地名大辞典27 大阪府』(角川書店)p589「しまだ 島田<豊中市>」によると、大阪府全志にも勧進寺は承久の乱で焼失したとあり。
またこのほか、『豊中の史跡たずね描き』(豊中市立教育研究所)p118-199には、島田遺跡・天皇山観音堂・島田稲荷神社の碑のスケッチなどがあり。
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
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- 『とよなか歴史・文化財ガイドブック』豊中市教育委員会生涯学習推進室地域教育振興課/編集 豊中市教育委員会生涯学習推進室地域教育振興課
- 『文学にみる豊中の古迹』鹿島 友治/著 鹿島 友治
- 『とよなかの史跡巡り』瀧 健三/編集 瀧 健三
- 『新修 豊中市史 第九巻』豊中市史編さん委員会/編集 豊中市
- 『新修 豊中市史第 四巻』豊中市史編さん委員会/編 豊中市
- 『庄内と庄内周辺史跡散歩』森本 吉道/編・著 森本 吉道
- 『豊中の史跡たずね描き』福西 茂/著 豊中市立教育研究所
- キーワード
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- 島田(シマダ)
- 島堂村(シマドウ)
- 庄内(ショウナイ)
- 勧進寺(カンシンジ)
- 豊中(トヨナカ)
- 地名(チメイ)
- 由来(ユライ)
- 遺跡(イセキ)
- 歴史(レキシ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 一般
- 登録番号
- 1000127058