レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2019/01/23 10:25
- 更新日時
- 2019/01/23 14:31
- 管理番号
- 横浜市中央2537
- 質問
-
解決
江戸時代に菜種からどのように油を精製していたか知りたい。
- 回答
-
江戸時代における、菜種から油を精製する方法について、「江戸時代」と「製造」「製油」
「精製」「油絞り(搾り)」「搾油」「灯油」「灯火」などのキーワードを用いて調査を行い
ました。
その結果、天保7(1836)年に大蔵永常が書いた『製油録(せいゆうろく)』という資料に、
当時における製法が、作業の現場の様子や使用する器具の図解入りで掲載されていることがわか
りました。
同書には、関東と関西では菜種を炒る手法に違いがあった事なども記述されています。
1 『製油録』を読むための方法としては、以下のものがあります。
(1)『日本農書全集 第50巻(農産加工 1) 製油録』 佐藤常雄/〔ほか〕編集
農山漁村文化協会 1994.08
p.31~136にかけて、『製油録』上下巻を収録しています。本文は上に原文(翻刻)、
下に現代語訳を掲載する対訳形式になっており、挿絵も掲載されています。
(2)『日本科学古典全書 復刻 6 農業・製造業・漁業』 三枝博音/編 朝日新聞社
1978.6
p.305~373にかけて、『製油録』上下巻を収録しています。本文は活字化されていますが、
旧仮名遣いのままで、現代語訳はありません。挿絵も掲載されています。
(3)「製油録」(『薬学雑誌』1904巻266号 日本薬学会 1904年 p.299~311)
※「J-STAGE」一般公開
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi1881/1904/266/1904_266_299/_article/-char/ja/
過去に雑誌に掲載された『製油録』がインターネットで無料公開されており、閲覧すること
ができます。本文は活字化されていますが、旧仮名遣いのままで、現代語訳はありません。
また挿絵はなく、本文の一部については省略されています。
(4)『古事類苑 46 器用部』 神宮司庁/編 吉川弘文館 1979
明治時代に編纂された、当時における百科事典です。「燈火具 下」の章のp.314~318にかけて、
『製油録』の原文の一部(総論、関東の搾り方、諸油垂口の事、菜種子を干事、水車搾りの事)が
収録されています。(一部省略あり)
(5)『日本植物油脂』 辻本満丸/著 丸善 1912
※「国立国会図書館デジタルコレクション」インターネット公開
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/949241
p.345~353(コマ番号185~191)に『製油録』の抜粋が掲載されています。
なおp.264~353に「菜種油」の章がありますが、紹介されている製法は明治時代のものです。
2 『製油録』の内容を簡略化したり、解説したものには、以下のものがあります。
(1)『講座・日本技術の社会史 第1巻 農業・農産加工』 永原慶二/〔ほか〕編
日本評論社 1983.5
p.211~213に、立木による絞油工程を『製油録』の記述に沿ってまとめています。
(2)『燈用植物 ものと人間の文化史』 深津正/著 法政大学出版局 1983.6
「あかり」に用いる植物全般を取り扱った資料です。p.242~253にかけて菜種油を取り上げ、
その中で基本資料として『製油録』の内容を紹介しています。
(3)『江戸のあかり 歴史を旅する絵本』 塚本学/文 岩波書店 1990.2
江戸時代の菜種栽培について、田おこしから刈り取り、油しぼりをへて商品として出荷され、
消費されていく様子が描かれている絵本です。また、巻末(p.54~55)には各場面について
文章で解説されており、油しぼりの場面についても具体的に記述されています。
参考文献として『製油録』をあげており、その記述を元にしていることがわかります。
(4)『ナタネの絵本 そだててあそぼう』 石田正彦/へん 農山漁村文化協会 2001.05
p.8~9に「あかりの油として」として、江戸時代に菜種油が行灯の燃料として用いられた
ことが記述され、行灯を使用している様子や油搾りを行っている様子のイラストが付されて
います。
3 その他、関連する記述のあった資料をご紹介します。
(1)『日本農書全集 第45巻(特産 1) 名物紅の袖(羽前)』
佐藤常雄/〔ほか〕編集 農山漁村文化協会 1993.10
p.129~194にかけて、『製油録』の著者である大蔵永常の『油菜録(ゆうさいろく)』を収録
しています。菜種油の原料となるアブラナの栽培法を『製油録』と同様に図解入りで詳しく解説
したものです。本文の体裁は資料1(1)と同じです。
(2)『東京油問屋史 油商のルーツを訪ねる』 東京油問屋市場 2000.03
p.47に「灘の水車搾り」として、当時関西で行われていた搾油法が紹介されています。
(『製油録』下巻でも紹介されているものです)また、p.74~76にかけて「油関係の古文書」
として、大蔵永常の『製油録』『油菜録』に加え、文化7(1810)年に衢(ちまた)重兵衛が
書いた『搾油濫觴(さくゆらんしょう)』、正徳5(1716)年に大阪の油問屋、浅井快住が書い
た『精油明鑑』を紹介し、概要を記しています。
(3)『搾油濫觴』
※「国立国会図書館デジタルコレクション」インターネット公開
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2535814
上記資料3(2)で紹介されているものです。写本を撮影したもので、本文はくずし字の原文のみ
となります。
(インターネット資料の最終確認日:平成30年11月7日)
回答は以上となります。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 油脂類 (576 8版)
- 工芸作物 (617 8版)
- 衣食住の習俗 (383 8版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 歴史
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000250527