レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年06月30日
- 登録日時
- 2016/03/18 10:25
- 更新日時
- 2016/05/11 16:37
- 管理番号
- 埼熊-2015-188
- 質問
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未解決
「東遊雑記」 (古川古松軒著) の挿し絵の中に「芭蕉翁 早苗とる 手もとや 昔しのぶ摺」と書かれていると思われる句がある。「とる」の所の字体がはっきり見えず、「とる」であっているのか確認したい。所蔵資料に「東遊雑記」の該当すると思われる挿絵(図)の記載があるか調べてほしい。
- 回答
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質問者持参資料の挿画と同じ図が掲載された資料は当館未所蔵のため、挿画に拠って「早苗とる」であるかを確認することはできなかった。
参考情報として次の資料を紹介した。
1 『日本歴史地名大系 7 福島県の地名』(平凡社 1993)のp677〈文字摺観音堂〉(福島市山口)の項に、「元禄二年(1689)文字摺石を訪れた松尾芭蕉は「おくのほそ道」に(中略)と記し、「早苗とる手もとや昔しのぶ摺」と詠んだ。(中略)当地方を旅した古河古松軒は福島から当地に立寄り、「錦石東西一丈一尺六寸、南北六尺九寸六分、この所の図を板として福島にて売るなり」などと記し、歌名所「しのぶもちずり」について考察している(東遊雑記)。」との記述あり。
2 持参資料に近似する図を所蔵する施設として、福島県立図書館、福島県歴史資料館があった。
- 回答プロセス
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1 「東洋文庫」の「東遊雑記」(質問館調査済み)の解説を確認
『東遊雑記 奥羽・松前巡見私記 東洋文庫 27』(古川古松軒著 平凡社 1982)
p37(巻之二)「錦石東西一丈一尺六寸、南北六尺九寸六分、この所の図を板として福島にて売るなり。引き合わせ見るに大方相違あるにより、改めて左に図するものなり(原本に図欠)。福島よりこの所へ一里余」とあり。
p304-305「本書は旧第一高等学校本を底本とした帝国文庫本によったが、誤植等の箇所は内閣文庫本を参照して訂正した。内閣文庫本は四種類あるが、内容はそれぞれ少しずつの差異がある。おそらく古松軒は何度か写し本をつくったと思われ、定本と称すべきものはまだできていなかったと思われる。」「また本書には多くの挿画があるが、それが各種本により異なっている。今回刊行に際して印刷上の都合により不明瞭なもの、さまで必要でないものは割愛することにした。」との記述あり。
2 調査指定資料の確認
『東遊雜記』巻の14,巻之2,巻之3,巻の6,巻の7(古河辰著 出版者 〔製作者不明〕 版年月 〔製作年不明〕)
巻之2に「東遊雑記巻の二下」に上記東洋文庫p37にあった文あり。「この所の図を板として福島にて売家あり。大に齟齬あり故に■■地に於て改図するものなり 福島よりこの所へ一里余」とあり(■■は読み取れない)。「陸奥のしのぶ文字ずり」で始まる文のついた図あり、質問の句は見つからず。
他の巻に該当すると思われる図は見つからず。
3 「東遊雜記」について調査
《日本古典籍総合目録》(http://base1.nijl.ac.jp/~tkoten/about.html 国文学研究資料館)
『日本古典文学大辞典』に解説があること、『近世社会経済叢書 12』に活字のものが掲載されていることがわかる。
4 上記を受けて『近世社会経済叢書 12』(本庄栄治郎〔ほか〕編 改造社 1927)の確認
p30に「忍ふ摺の古跡へ御立寄、二里の曲道也。錦石東西一丈一尺六寸南北六尺九寸六分、此所の図を板行として福島にて売也。
引合せ見るに大方相違有により、改て左に図する者也。福島より此所へ一里余。」との記述はあるが、該当の挿絵なく、句もなし。
5 「東遊雑記」にある挿画のタイトルからの調査
《NDL-OPAC》(http://www.ndl.go.jp/ 国立国会図書館)
〈陸奥國信夫郡 & 文字摺石 & 同観世音 & 境内之図〉で検索するが該当なし。
《Google》(http://www.google.co.jp/ Google)
〈陸奥國信夫郡 & 文字摺石 & 同観世音 & 境内之図〉で検索したところ、次の情報がヒットした。
《福島県歴史資料館》(http://www.history-archives.fks.ed.jp/2014/edonotabi.pdf 福島県歴史資料館)
資料展示「江戸の旅-諸国めぐりと旅文化」のちらしで会期は平成26年4月26日から6月29日となっており、「主な展示資料」に「「陸奥國信夫郡文字摺石同観世音境内之図」(佐藤健一家文書)」とあり。ちらしにも同図が使われている。
6 福島県歴史資料館 資料展示「江戸の旅」の展示図録の所蔵調査をするが、県内図書館・文書館では見当たらず。
7 上記を受けて「佐藤健一家文書」から調査
《福島県立図書館WebOPAC》(https://www.library.fks.ed.jp/licsxp-opac/WOpacMnuTopInitAction.do?WebLinkFlag=1&moveToGamenId=tifschcmpd 福島県立図書館)を書名〈佐藤健一家文書〉で検索したところ次の2件がヒットした。
「歴史資料館収蔵資料目録 2」(福島県文化センター編集 福島県文化センター 1973)
内容細目に「14 佐藤健一家文書(伊達郡霊山町)」とあり。
「歴史資料館収蔵資料目録 14」(福島県文化センター編 福島県文化センター 1984)
内容細目に「2 佐藤健一家文書(伊達郡霊山町掛田)」とあり。
いずれも県立図書館未所蔵。
8 《福島県歴史資料館》ウェブサイトの確認
「収蔵資料の一覧」中「伊達市」に「佐藤健一家文書 14」あり。
「佐藤健一家文書(伊達郡霊山町) 伊達郡掛田村の蚕種製造の先駆者で「養蚕茶話記」 の著者佐藤友信の生家に伝存した文書。
養蚕日誌など養蚕関係の貴重な文書が多数ふくまれている。
また現当主佐藤健一氏が収録された伊達晴宗・ 伊達政宗の文書数点もふくまれ、総点数228点である。
「歴史資料館収蔵資料目録」第2集・第14集所収」とあり。
(http://www.history-archives.fks.ed.jp/index4.html 福島県歴史資料館)
9 上記を受けて「陸奥國信夫郡文字摺石同観世音境内之図」(福島県歴史資料館以外)の所蔵調査
《国会図書館サーチ》(http://iss.ndl.go.jp/ 国会図)を〈陸奥國信夫郡 & 文字摺石 & 同観世音 & 境内之図〉で検索したところ、福島県立図書館所蔵の次の資料がヒットした。
「陸奥国信夫郡文字摺石同観世音境内之図」(〔出版地不明〕〔出版者不明〕〔出版年不明〕)大きさ、容量等:1枚 ; 34×49cm
《福島県立図書館WebOPAC》を〈陸奥國信夫郡 & 文字摺石 & 同観世音 & 境内之図〉で検索したところ上記資料がヒットした。
「陸奥国信夫郡文字摺石同観世音境内之図」(〔出版者不明〕〔出版年不明〕1枚 34×49cm)(資料番号:100015569 L185/M1/1 地域書庫別)
10 『福島県史』資料編の調査
『福島県史 8-10下』(福島県編 臨川書店 1985-1986)
目次と巻末の「資料一覧」を見るが該当の図は見つからず。
11 《Google ブックス》(https://books.google.co.jp/ Google)を〈文字摺石同観世音境内之図〉で検索
『日本歴史地名大系 7 福島県の地名』(前述)
12 自館目録を〈東遊雑記〉で検索
『日本紀行文集成 1 紀行文集』(日本図書センター 1979)
p394-412「巻之二」
前述の『近世社会経済叢書 12』と同じ挿絵2点のみ。該当の挿絵ではない。
13 芭蕉の句の調査
『諸注評釈芭蕉俳句大成』(岩田九郎著 明治書院 1991)
p555-557「早苗とる手もとや昔しのぶ摺」の句の評釈。「東遊雑記」については特に記述はないが、この句であれば、「早苗とる」との表記となっている。
ウェブサイトの最終アクセス日は2015年6月30日。
- 事前調査事項
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質問館調査済み資料
「東遊雑記」(古川古松軒[著] 平凡社 1964)
「日本庶民生活史料集成 3」(三一書房 1969)
「芭蕉事典」(松尾靖秋[ほか]編 春秋社 1978)
「諸注評釈新芭蕉俳句大成」(堀切実編 明治書院 2014)
「奥の細道」(学研 1998)
「おくのほそ道」([松尾芭蕉著] 双文社出版 1991)
「芭蕉自筆奥の細道」([松尾芭蕉著] 岩波書店 1997)
「おくのほそ道」([松尾芭蕉著] 新典社 1975)
「くずし字で「おくのほそ道」を楽しむ」(中野三敏緒 角川学芸出版 2011)
- NDC
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- 詩歌 (911 9版)
- 日本 (291 9版)
- 参考資料
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- 『日本歴史地名大系 7 福島県の地名』(平凡社 1993) , ISBN 4-582-49007-7
- キーワード
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- 奥の細道
- 松尾 芭蕉(マツオ バショウ)
- 東遊雑記
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 地名
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000189580