レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2011/11/01
- 登録日時
- 2012/01/13 02:00
- 更新日時
- 2012/01/13 02:00
- 管理番号
- 1000000427
- 質問
-
解決
ジュゴンが首里城に献上されたという記録はあるか。
- 回答
-
下記の資料を提供する。
『沖縄民俗辞典』(渡邊欣雄、吉川弘文館、2008年)
p263「ジュゴン」の項によると、
ジュゴンは儒艮・需艮と表記され、人魚、犀魚、ザン、ザンノイユ、アカンガイユ、ヨナタマなどと称されている。琉球王府の文献では、中国名の海馬として記録されている。
琉球王朝は八重山諸島の新城島にジュゴンの捕獲を許可し、干し肉を貢納税として納めさせていた。ジュゴンは王だけが食べることが許される特別な食料であり、首里城発掘調査からジュゴンの骨が発見されている。
『使琉球記』(李鼎元、榕樹書林、2007年)
p278 「嘉慶5年(1800年)6月15日丙寅」の項に、「食品に海馬があった。肉のスライスは、鉋屑のようにクルクルと巻き、色は片茯苓のようである。最高級品は、いつも手に入るといったものではなく、捕獲すると、まず国王に献上する。・・・」と記述あり。
『中山傳信録』(徐葆光、榕樹書林、1999年)
p538 「海馬」の項に、「頭は馬で、体は魚であるが、鱗はない。肉は豚のようで、なかなか手に入らない。手に入ると、まず国王に進上する。」という記述あり。
『南島風土記』(東恩納寛惇、沖縄財団、1950年)
p451?453 「新城島」に、『李朝実録』を典拠として、「食品に海馬肉あり、・・・常に得易からず、得れば則ち先づ以て王に献ず」との文章を紹介している。
また、明治21年3月、『西南海洋中央部水産調査員誌』に掲載された農商務技師松原新之助氏の報告として下記の文章も紹介している。
「需艮は海馬とも称す、・・・旧藩政の時に於ては皮を藩王より幕府及び支那国政府に貢する為め漁民に課して之が捕獲を命ぜり、而して該獣の捕獲の便は沖縄県地方に於ては八重山島の内新城島を以て最も善しとするが故に年々該島民に於て之を捕獲し其課當に充てたり」。
『石垣市立八重山博物館紀要 第16・17号合併号』(石垣市立八重山博物館、1999年)
p88 「酉年蔵元御格護之等5写之也 八重山嶋諸物代付帳 錦芳氏 用義」の項に、
p91 ④「鱗甲部代付之事」として「海馬」、「海馬塩肉」、「海馬干肉」を納めていたと記録されている。
『石垣市史 叢書2 与世山親方八重山島規模帳』(石垣市総務部市史編集室、石垣市、1992年)
p61 「新城村之儀、諸役人海馬并亀抔毎度所望入有之・・・」と記述あり。
『石垣市史 叢書7 翁長親方八重山島規模帳』(石垣市総務部市史編集室、石垣市、1994年)
p108 「御用物海馬之儀、新城村ニ限リ手形入候付・・・」と記述あり。
『新城島(パナリ)』(安里武信、1976年)
p63「ザヌ(じゅごん)漁労」の項によると、旧藩時代、新城島は琉球王府から海上権を与えられて、ジュゴンを献納するように示達された。捕獲したジュゴンは、皮と肉は煮て日光にさらし、国王に献納したのであるが、頭蓋骨などは、磯嶽に祭った、と記述あり。
『南方熊楠全集 6』(南方熊楠、平凡社、1973年)
p305?311 「人魚の話」の項に、「琉球王府ではまた、儒艮をザンノイオとも言い、むかしは紀州の海鹿同様、御留め魚にて、王の外これを捕え食うこと能わざりし由。」との記述あり。
『八重山の人頭税』(大浜信賢、三一書房、1971年)
p163?173 「海馬―新城島の人頭税」
著者が1969年に新城島に行き、新城島のジュゴンが人頭税の一種として琉球王府に納められていた史実を調査した際の記録。ジュゴンの骨や捕獲に使われた道具の写真、住民に伝わるジュゴン捕獲の民謡、住民に聞き取り調査をした結果などが記してある。
著者によると、新城島の周辺は、古代から海馬が好んで食する海藻が豊富なため、海馬の捕獲に適していた。したがって同島は人頭税として米穀の他に、海馬を捕獲しその肉を塩漬けにして王朝に上納することを命じられていた、とのこと。また、ジュゴンを人頭税として献上していたのは八重山諸島の中でも新城島のみとのこと。
『八重山語彙』(宮良當壯、東洋文庫、1930年)
p93 「ザン」の項に、「儒艮。人魚。脂肪を富めるをもって旧藩時代には毎年これを捕獲し王府に貢納せり。新城島民もっぱらその捕獲の任に當り、片帆船を操りて巧みにこれを漁せり。島にザン・ヌ・オンと称する神社あり。儒艮の骨を祭れり。」との記述あり。
『あじまぁ 11号』(名護博物館、2003年)
p1?14 「沖縄県のジュゴン捕獲統計」の項に、沖縄でジュゴンがどのように捕獲され減少したかの推移が記してある。
「八重山諸島新城島ではジュゴンは首里王府への供養物として捕獲され、同島にはジュゴンの骨を祀った御嶽も知られている。」との記述あり。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
-
- 1 沖縄民俗辞典 渡邊 欣雄∥ほか編 岡野 宣勝∥編 吉川弘文館 2008.7 K38/O52/ 263
-
2 使琉球記 李/鼎元∥著 原田/禹雄∥訳注 榕樹書林 2007.4 K200.8/R32/ 278-279 -
3 中山傳信録 徐 葆光∥著 原田 禹雄∥訳注 榕樹書林 1999.5 K200.8/J56/ 538 -
4 南島風土記 東恩納 寛惇∥著 沖縄財団 1950.3 K29/H55/ 451-453 -
5 石垣市立八重山博物館紀要 第16・17号合併号 石垣市立八重山博物館∥編 石垣市立八重山博物館 1999.3 K06/I73/16.17 91 -
6 石垣市史叢書 2 石垣市総務部市史編集室∥編 石垣市 1992.3 K25/I73/2 61 -
7 石垣市史叢書 7 石垣市総務部市史編集室∥編 石垣市役所 1994.3 K25/I73/7 108 -
8 八重山の人頭税 大浜 信賢∥著 三一書房 1971.11 K345/O27/ 163-173 -
9 新城島(パナリ) 安里 武信∥著 安里武信 1976.8序 K25/A88/ 63 -
10 南方熊楠全集 6 南方 熊楠∥著 平凡社 1973.6 A081.6/MI36/6 305-311 -
1 八重山語彙 宮良 當壯∥著 東洋文庫 1930(昭和5).11 K85/MI79/ 93 -
2 あじまぁ 名護博物館∥[編] 名護博物館 2003.3 K06/N26/11 1-14
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 書誌調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000099682