レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年06月10日
- 登録日時
- 2020/09/16 12:03
- 更新日時
- 2020/12/26 14:32
- 提供館
- 岐阜県図書館 (2110001)
- 管理番号
- 岐県図-2595
- 質問
-
解決
明智光秀が豪華な汁講(汁事)をするために妻の煕子が髪を売り工面したことが『名将言行録』に掲載されている。この記述の元となる文献はあるか。
- 回答
-
当館資料を調査したところ、例として以下の文献に類似の記述があった。
1)『陰徳太平記』
『光秀行状記』(明智滝朗著 中部経済新聞社 1966年)では、『陰徳太平記』を引用してこのエピソードを紹介している。(p.40~41)
当館所蔵の『陰徳太平記』(以下2種)の記述を確認したところ、『名将言行録』と一字一句同じではないが、内容は類似しており、「汁事」という語もみられる。
・『通俗日本全史 第14巻』(早稲田大学出版部、1913年)p.418~419
国立国会図書館デジタルコレクションでも閲覧可能(223コマ目)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/770212
・『陰徳太平記 5 正徳二年板本』(米原正義校注 東洋書院 1983年)p.229~231
『名将言行録』は各記述ごとの出典を明記していないため、これが出典と断定はできないが、『名将言行録』の冒頭には引用書目の一覧があり、その中に『陰徳太平記』も挙げられている。
引用書目の一覧は、国立国会図書館デジタルコレクションでも閲覧できる。
『名将言行録』前編 上巻(「凡例」20~22コマ目、「名将言行録引用書目」22~32コマ目)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1874962
2)『絵本太閤記』
『絵本太閤記』にも類似の記述がある。
当館所蔵の『絵本太閤記(中)』(有朋堂書店 1927年)には次のように記されている。(p.82~83)
---(引用始め)--------
客去て後光秀、「何にして酒肴を調じ来りしや。露計の方便なかりしを」と云ふに、妻答て「自もすべき力のなかりし故、髪を断て鬘とし、代を取て調へ候ひつる」とて、頭に被し帽子を取れば、さし櫛のさしもに黒く麗しかりき髪を、根より切てぞ居たりける。
---(引用終わり)------
汁講(汁事)という言葉はなく、妻の名前が「照子」となっている。
『名将言行録』の引用書目一覧には『絵本太閤記』は挙げられていない。
3)その他の調査済み資料(参考)
以下の資料も確認したが、出典に関する記述は見つからなかった。
【「名将言行録引用書目」に挙げられていた岐阜県関係資料】
・明智軍記(『明智軍記』(二木謙一校注、KADOKAWA、2019年)にて確認)
・美濃明細記(『美濃明細記 美濃雑事紀』(大衆書房 1969年復刻版)にて確認)
・江濃記(『堂洞軍記』ほか(郷土史現代語訳シリーズ3 田中淑紀訳 大衆書房 1995年)収載のものを確認)
・土岐斎藤軍記(同上)
なお、引用書目に「明智日記」という文献も挙げられているが、この書名では存在が確認できなかった。
【当館所蔵の明智光秀関係書籍、郷土史関係資料等】
・『明智光秀のすべて』(二木謙一編 新人物往来社 1994年)
汁事のために煕子が黒髪を断髪したエピソードを「酒買った尻に賢女は髪を切り」という川柳(『柳多留』)を添えて紹介し、「『名将言行録』その他書物に記されている」と書いているが、名将言行録の出典の手掛かりとなる記述は見られない(p.126~127)
・『図説明智光秀』(柴裕之編著 戎光祥出版 2019年)
「自らの黒髪を売ることで酒宴の費用を工面」という表現でこのエピソードを紹介し、その様子として『絵本太閤記』の場面(絵)が引用されている。(p.116~117)
・『明智凞子を訪ねて』(土岐市郷土史同好会 1995年)
p.17-18に関係の記述があるが、出典の記載はない。
・『桔梗 二十周年記念誌』(明智光秀公顕彰会 2008年?)
明智光秀公顕彰会の会誌第1~18号を合冊したもの。第7号に称念寺副住職による「称念寺と明智光秀公」の寄稿があり、黒髪のエピソードとともに、明智光秀と称念寺とのかかわりを『明智軍記』と『遊行三十一祖京畿行状記』の資料名を挙げて紹介している。
『遊行三十一祖京畿御修行記』の内容は以下の論文で確認できるが、『名将言行録』の出典の手掛かりとなる記述は見つからなかった。
橘俊道校註「遊行三十一祖 京畿御修行記」(「大谷学報」52巻1号、大谷大学学術情報リポジトリで公開)(2020年9月確認)
https://otani.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=2439&item_no=1&page_id=13&block_id=28
・『信長を操り、見限った男 光秀』(乃至政彦著 河出書房新社 2019年)
「第四章 越前での牢人生活」を参照したが、関係する記述は見つからなかった。
・『明智物語』(関西大学中世文学研究会編 和泉書院 1996年)
関係する記述は見つからなかった。
・『美濃国諸旧記・濃陽諸士伝記』(国史研究会,1915)
「美濃国諸旧記」の「明智城の事幷地の戦記」(p.167~178)を確認したが、関係する記述は見つからなかった。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 個人伝記 (289)
- 参考資料
- キーワード
-
- 明智光秀
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000287218