レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年11月19日
- 登録日時
- 2022/02/02 15:03
- 更新日時
- 2022/03/11 11:27
- 管理番号
- 企-210006
- 質問
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解決
中日辞典、越日辞典のように、書名に「日」を使うものと英和辞典、独和辞典のように「和」を使うものとがあるが、この違いはどこからくるのか。
- 回答
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・『漢語辞書論攷』今野真二著 港の人 2011
p.16~「第1節 辞書体資料としてみた漢語辞書」より、山田忠雄氏(国語学者、辞書編纂者)が「漢和辞典の成立」(一九五九年『国語学』第三十九輯)の中で漢和辞典について書いた下記の記述がある。
「シナ語と日本語との対訳辞典なら、中日もしくは華日、ならびに日中あるいは日華と現在称する一群の書が真にそのなにあたひする。(中略)漢和辞典は、結果的にいへば漢語と和語との辞典であるともいふべきであるが、編纂者の意図がそこにはなかったことはいふまでもなく、所詮はおよそ漢字をもって表記する習慣のある国語の辞典、もしくは漢字の字典のうち、特に部首びきのものである(節用集類がいろはびきであるに対し)という前代からの根本性格はうごかないものというべきであらう。」
このことを受け著者は「漢和辞典が「漢語と和語との辞典である」ということがむしろ否定的に語られているが、「英和辞典が対訳辞書」であるように、漢と和とが対置していることを「対訳」とみて、漢和辞書も対訳辞書であるとまずとらえておきたい。」という記述がある。
・『百年前の日本語』今野真二著 岩波書店 2012
p.156「第五章 辞書の百年」より「英語に中国語=華語に対置させた「英華辞書」を傍らに置いていたとすれば、真の意味合いで「英和辞書」を名乗るためには、英に和を対置させる必要があった。」という記述がある。
・『辞書をよむ』今野真二著 平凡社 2014
p.23「辞書の類別 一言語辞書・対訳辞書・多言語辞書」より、『伊呂波字引和英節用』を取り上げ、「この辞書は「和英」という表現が書名に含まれていることからわかるように、和英辞書である。「和」すなわち日本語を見出し項目として、それに対応する英語を示している。」
以下、関連する記述がある。
p.25~28「「漢和辞書」と呼ばれる辞書は、漢字を見出し項目としている。(中略)現代中国語と日本語との対訳辞書は「中日辞書」と呼ばれる。(中略)「漢和辞典」と「中日辞書」とが重なり合うのだとすれば、「漢=中国語」、「和=日本語」ということになって、「漢和辞典」とは中国語と日本語との対訳辞書であることになる。」
p.148「語を見出し項目とする辞書」より、「『日葡辞書』は、日本語とポルトガル語との二言語対照辞書であるので、見出し項目が(漢字ではなく)語であることは当然のことであるが、ここまで採りあげてきた辞書がいずれも漢字列を見出し項目としていたことからすれば、語を見出し項目にすることはむしろ適切であるといえよう。(中略)日本語を母語とする人物が編集した辞書としては、いくぶんなりとも漢字から離れ、語あるいはそれに近い言語単位を見出し項目とする辞書は江戸時代までなかったといってよいであろう。」
辞書編纂時期によって、見出し項目の和語、日本語の考え方が異なり、簡潔な回答をすることが難しいことがわかる。この3冊は広範囲で和語、日本語について解説している。
・『目で見る明治の辞書』惣郷正明編 辞典協会 1989
第二部「外国語対訳辞書の発展」(p19-40)にて、明治時代に出版された主な対訳辞書を写真付きで解説しています。「英和」「仏和」「独和」など「和」を使う辞書が大半ですが、ロシア語に関しては「和」を使う『露和字彙』等のほかに「日」を使う『日露辞典』が、イタリア語に関しても『伊日小辞書』が紹介されています(P39)。また、巻末に主な辞・事典のリストが出版社別・初版年順に掲載されている。
なお、当館所蔵資料の他にインターネットで検索したところ、以下の資料がヒット。
・第152回常設展示 辞書を片手に世界へ--近代デジタルライブラリーにみる明治の語学辞書 国立国会図書館 2008年
https://rnavi.ndl.go.jp/kaleido/entry/jousetsu152.php#01
過去に国立国会図書館で行われた「明治時代の語学辞書」に関する展示の記録。当時の辞典や参考文献を紹介。
・「日本における英和辞書発達小史」井田 好治著 横浜国立大学学術情報リポジトリ
1980年
http://hdl.handle.net/10131/2709
p1「日本の英語辞書に付けられた名称はさまざまであって、「和解」「語林大成」「五林集成」
「字彙」…(略)…「英和辞典」と見える。「辞典」が一般化するのは明治後半期に入ってからである」との記述がある。また、西欧語辞書の変遷について記されている。
・国立国会図書館所蔵の戦前期の語学辞典
https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-honbun-101075.php
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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『世界の辞書』竹林滋編 研究社 1992
『日本国語大辞典』小学館、2002
- NDC
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- 参考図書[レファレンスブック] (803)
- 日本語 (810)
- 辞典 (813)
- 参考資料
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惣郷正明 編 , 惣郷, 正明, 1912-1993. 目で見る明治の辞書. 辞典協会, 1989.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001989977-00 , ISBN 4915216349 -
今野真二 著 , 今野, 真二, 1958-. 百年前の日本語 : 書きことばが揺れた時代. 岩波書店, 2012. (岩波新書 新赤版 ; 1385)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023928961-00 , ISBN 9784004313854 -
今野真二 著 , 今野, 真二, 1958-. 漢語辞書論攷. 港の人, 2011.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000011304858-00 , ISBN 9784896292398 -
今野真二 著 , 今野, 真二, 1958-. 辞書をよむ. 平凡社, 2014. (平凡社新書 ; 760)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I025951724-00 , ISBN 9784582857603
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惣郷正明 編 , 惣郷, 正明, 1912-1993. 目で見る明治の辞書. 辞典協会, 1989.
- キーワード
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- 辞典
- 書名
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 高校生
- 登録番号
- 1000311671