レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年08月25日
- 登録日時
- 2016/12/13 14:54
- 更新日時
- 2017/03/15 13:18
- 管理番号
- 埼久-2016-080
- 質問
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解決
江戸後期の手紙に載っていた「清昭 季文」という人物を知りたい。可能であれば、下記2作の和歌も見てみたい。
(質問者が書き写した手紙の内容)
大納言の君、長月十八日
紅葉山のお宮、日吉の社に初て詣ふでさせ給へる御願に
読て奉る祝い哥、
「わけそめてちりぬ紅葉の山口に八千代もちぎれなヽの御社」
同じ日、通御の折しも、靏(たづ)の鳴たりければ、
「いつもきけ雲井のたづも折々に逢てけふハまての千代の諸声」
清昭 季文 上
- 回答
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人物について記述のある資料、質問の和歌が掲載されている下記資料および情報を紹介した。なお、「清昭」ではなく「法眼」と記載されている。
『江戸文人辞典 国学者・漢学者・洋学者』(石山洋〔ほか〕編 東京堂出版 1996)
「北村季文」の項目中、「文政八年法眼、天保九年法印に叙せられた。(中略)天保・弘化以後は、公儀歌学者として柳営歌壇の中心的存在」との記述あり。
『内閣文庫所蔵史籍叢刊 32 文政雑記』(汲古書院 1983)
国立公文書館内閣文庫所蔵『文政雑記』が影印版で収録されている。
p85 質問内容と同内容とみられる記述あり。この頁は、p7「文政雑記 目次」によれば、『文政雑記』第三冊「家祥公初宮参賀歌」の項に該当する。
『続日本随筆大成 別巻 7 近世風俗見聞集 7』(吉川弘文館 1982)
p147-148に類似の和歌あり。出典は「宝暦現来集 巻之十五」、名は「北村季斎法眼」となっている。
《東京大学史料編纂所 近世編年データベース》(http://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/ 東京大学史料編纂所)
「No.313 文政12年9月18日 己申、家祥、初めて紅葉山諸廟及ひ山王社に詣し、遂に井伊直亮第に莅む、」の項あり。典拠となっている「史料稿本」の画像データを確認したところ、44コマ(https://clioimg.hi.u-tokyo.ac.jp/viewer/view/idata/T38/1829/32-4-2/12/0044?m=all&s=0002&n=20 )に、質問者が提示したものとほぼ同文が原稿用紙に筆写されている。末尾は「法眼 季文 上」と判読できる。
- 回答プロセス
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1 和歌および「清昭」「季文」から自館資料を調べるが、人物と和歌が合致するもの見つからず。
2 《Google ブックス》(http://books.google.co.jp/ Google)を〈八千代もちぎれ〉〈千代の諸声〉で検索する
「続日本隨筆大成: 近世風俗見聞集」に類似の和歌が掲載されている。名は「北村季斎法眼」とのこと。
3 「北村季斎法眼」について調べる
『江戸文人辞典 国学者・漢学者・洋学者』(前掲資料)
「季斎」「清昭」に関する記述なし。
4 「清昭」が氏姓と官職名の省略記述か確認する
『寛政重修諸家譜 第18』(東京 続群書類従完成会 1984)
p359-361 北村季文の家系は源氏で、清原氏ではない。
『近世史用語事典』(村上直編 新人物往来社 1993)
「しょう」で検索するが、「昭」を頭文字とする単語を確認できない。
5 「法眼」位の異称が「清昭」かを確認する
『日本仏教語辞典』(岩本裕著 平凡社 1988)
p641「法眼(ほうげん・ホフゲン)」の項あり。異称に関する記述、「清昭」に関する記述なし。
『日本国語大辞典 第11巻(はん-ほうへ)』(日本国語大辞典第二版編集委員会編 小学館国語辞典編集部編 小学館 2001)
p1390-1391 「ほうげん【法眼】」の項あり。異称に関する記述、「清昭」に関する記述なし。
6 北村家以外の幕府歌学方の人物について調査する
『近世史用語事典』(村上直編 新人物往来社 1993)
p61「かがくかた 歌学方」の項あり。北村季文への言及なし。北村家以外の人物が歌学方に存在したとの記述なし。
『江戸役人役職大事典』(新人物往来社編 新人物往来社 1995)
p176-177「歌学方北村家」の項あり。北村季吟の事績と、北村家の子孫が幕府歌学方を世襲したとの記述あり。北村季文への言及なし。北村家以外の人物が歌学方に存在したとの記述なし。
7 《東京大学史料編纂所 近世編年データベース》を〈紅葉山〉で検索する(回答情報)
8 『文政雑記』の内容を確認する
『内閣文庫所蔵史籍叢刊 32 文政雑記』(回答資料)
ウェブサイト・データベースの最終アクセスは2016年8月25日。
- 事前調査事項
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調査済資料
「人物レファレンス事典 古代・中世・近世編〈1996-2006〉 Ⅱ」(日本アソシエーツ編 2007)「和歌文学大辞典」(「和歌文学大辞典」編集委員会編 2014)「新日本古典文学大系5 古今和歌集」(佐竹昭広ほか編集委員 岩波書店 1989)「新日本古典文学大系6 後撰和歌集」(佐竹昭広ほか編集委員 岩波書店 1990)「新日本古典文学大系7 拾遺和歌集」(佐竹昭広ほか編集委員 岩波書店 1990)「新日本古典文学大系10 千載和歌集」(佐竹昭広ほか編集委員 岩波書店 1993)「新日本古典文学大系67 近世歌文集(上)」(佐竹昭広ほか編集委員 岩波書店 1996)「新日本古典文学大系74 歌合集」(佐竹昭広ほか編集委員 岩波書店 1977)「新日本古典文学大系93 近世和歌集」(佐竹昭広ほか編集委員 岩波書店 1976)
調査済事項
「清昭(せいしょう)」ならば平安時代中期、延暦寺の僧、「季文(きぶん)」ならば江戸時代後期の歌人「北村季文」がいることは判明済み。
- NDC
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- 詩歌 (911 9版)
- 日本 (281 9版)
- 参考資料
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- 『内閣文庫所蔵史籍叢刊 32 文政雑記』(汲古書院 1983)
- 『続日本随筆大成 別巻 7 近世風俗見聞集 7』(吉川弘文館 1982)
- 《東京大学史料編纂所 近世編年データベース》(http://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/ 東京大学史料編纂所 2016/08/25最終確認)
- キーワード
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- 和歌
- 北村 季文(キタムラ キブン)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000203113