以下の資料に関連記述を確認しました。
・『栃木県史 通史編7』(栃木県史編さん委員会/編 栃木県 1982)
「第5章 大正・昭和前期の産業 第3節 鉱工業」より「2 大谷石」の項(p.721-735)があり、概要は次のとおりです。
p.722-723「第一次世界大戦後の大谷」
大戦終結後における石材業の状況や帝国ホテルの完成、関東大震災に伴う需要の高まり、その後の不況について記述があります。また、この時期の販売状況については、「屏風岩石材部営業報告」という史料をもとに記されています。「屏風岩石材部」については、『宇都宮市史 第7巻 近・現代編1』(宇都宮市史編さん委員会/編 宇都宮市 1980)p.809-811「一 石材会社のあゆみ」の項にも記述を確認しました。
p.723-726「恐慌下の大谷」
「大谷石材は大震災の直後は建築界の需要が増え中間景気と呼ぶ好況がもたらされたが、大正十四年に至ると一転して石材界始まって以来の不況に転ずることとなった」とあります。「需要数の減少」「価格の下落」「緊縮経済のために建築が繰延」「セメントの値下がり」等、不況の状況と原因に関する記述が散見されます。
・『栃木県史 史料編 近現代6』(栃木県史編さん委員会/編 栃木県 1977)
p.116-127「四 営業報告」の項で、大正13年から大正15年までの「屏風岩石材部営業報告」が掲載されています。
・『栃木県鉄道史話』(大町雅美/著 落合書店 1981)
「Ⅵ 大谷石輸送と軌道」より「石材専用軽便鉄道」の節に「鉄道敷設の結果」の項があります。(p.199‐200)
関東大震災後の需要の高まりにより販路が拡大し、「阪神地方、仙台地方にも及んだ」と記述されています。
・『宇都宮石材軌道株式会社営業案内 大正4年』(宇都宮石材軌道/編 1915)
「販賣石材の品質及販路」の項で大谷石について記述があります。
・「官報」
1920年07月06日から1922年03月18日までの「廣告」の欄に「大谷石採掘販賣」とあり、「中央石材株式会社」が広告を出しています。併記されている住所は東京にある会社ですが、販売促進を行っていた時期と重なります。
(参考)「国立国会図書館デジタルコレクション」(1920年07月06日)より
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2954491 [2020年8月2日最終アクセス]
「国立国会図書館デジタルコレクション」からは、以下の関連記事も確認しました。
・『世態調査資料. 第三十九號』(司法省調査部 1938-1943)
p.123-142「大谷石に關する座談會」の中で、大谷石の販路に関する記述があります。
(p.130「販路は東京が第一番で、…(中略)…北は北海道、南は沖縄迄で、…(後略)…」)
(参考)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1909106/69 [2020年8月2日最終アクセス]
なお、大谷石業界の不況については宇都宮市史にも記述を確認しました。
・『宇都宮市史 第7巻 近・現代編1』(宇都宮市史編さん委員会/編 宇都宮市 1980)
「第7章 大谷石材 第3節 営業報告にみる石材業界の変容」が詳細です。
p.809-815「1 石材会社のあゆみ」
なお、大正十三年の商況については、「収支は黒字で、震災による中間景気に支えらえた大谷石材企業の一旦がうかがえる。」とまとめられていますが、本文中には「大口利用の停滞、石価格の値上げ断行、石価格値上げに対する東京問屋側の反対不払い運動など経営の難かしさ(原文ママ)を経験している。」等と記されています。(p.810内)
これ以降については、「大正十四年から昭和四年までは、不況の連続でこの時期は、大谷石材企業の体質改善を迫られた時期であった。」とあり、「これらの不況打開のため、大正十四年十月には当企業が中心に「大谷石材案内」が出版され配布されている。」と記述があります。(「大谷石石材案内」は当館未所蔵)
p.815-838「2 石材組合のあゆみ」
宇都宮石材問屋組合について、「大正末から昭和初期にかけての不況」に奔走したとあり、官公用工事での大谷石採用を求めて活動したことが記されています。(p.817)
以下の資料は、お調べしましたが情報を確認できませんでした。
・『宇都宮石材軌道営業報告書 第40期』(宇都宮石材軌道/編、発行 1916)
・『大谷石材鉄道株式会社設立趣意書,起業目論見書,起業費予算書,収支概算書,会社仮定款』(1926)
・『宇都宮石材軌道株式会社営業案内 昭和4年』(宇都宮石材軌道/編、発行 1929)
・『宇都宮商工會議所五十年史』(宇都宮商工會議所史編纂会/編、発行 1944)
・『年表による栃木県鉄道史』(萩原恵一/著 出版者不明 1982)
・『大谷石むかし話』(大野登士/著 地芳社 1980)
・『幕末からの大谷石』(栃木県立宇都宮中央女子高等学校/編、発行)
・『大谷石今昔物語 全国砥粒加工事情 8』(日野裕/著、発行 1999)
・『栃木の人車鉄道』(栃木県立文書館/編、発行 2009)
・『なるほどthe大谷』(永森庄仁/監修 うつのみやシティガイド協会 2014)
・『大谷石の来し方と行方 大谷石をめぐる連続美術講座,論集』(橋本優子/編 宇都宮美術館 2015)
・『建築家が選んだ名建築ガイド』(日経アーキテクチュア/編,安藤忠雄/〔ほか〕著 日経BP社 2005)
・『石の街うつのみや 大谷石をめぐる近代建築と地域文化』(橋本優子/編 宇都宮美術館 2017)
・『産業発展と石切場 全国の採石遺構を文化資産へ』(日本遺跡学会/監修,高田祐一/編 戎光祥出版 2019)