レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年04月13日
- 登録日時
- 2023/01/13 11:22
- 更新日時
- 2023/01/13 16:21
- 管理番号
- 千県東-2022-0001
- 質問
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解決
なぜ千葉県には前方後円墳が多いのか。全国の前方後円墳の分布も知りたい。
- 回答
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以下の資料に記載がありました。
(1)千葉県に前方後円墳が多い理由
【資料1】白井久美子「<歴史講座> 前方後円墳の話」(『千葉県史料研究財団だより』 通巻2号 1993.8)p6
千葉県が東北進出の基地として絶好の場所にあったため、中央政権が交流を深めようとした、前方後円墳という特殊な墳形を採用することは、お互いに強い結びつきをもつことを意味する、との記述がありました。
【資料2】『千葉県の歴史 資料編考古2 県史シリーズ 10 弥生・古墳時代』(千葉県史料研究財団編 千葉県 2003)
第Ⅰ部p71
西日本では大型前方後円墳がほとんど造られなくなった6世紀後半にも、房総を含む関東地方では100m級の大型後円墳が造られた、群集墳のなかに小型の前方後円墳が数多く造られたことから千葉県は全国一、前方後円墳の多い地域となったとあり、千葉県に前方後円墳が多く造られた理由として、千葉県が東北進出への重要拠点であったため、王権による懐柔策が行われたのではないかと推測しています。
【資料3】『古代の東国 1 前方後円墳と東国社会』(若狭徹著 吉川弘文館 2017)
p198「常総地域では、群集墳の上位層が、前方後円形をした小型墳を採用する。このことが爆発的な前方後円墳の数の底上げにつながっている」
p218-219
中央勢力は豊かな東国の軍事力・経済力に依存するべく、東国は中央との関係を背景に在地におけるイニシアチブを握ろうと、互いに関係を結ぼうとしました。その関係の中で、東国では前方後円墳をつくる一定裁量を許容されたのではないかと推測しています。
【資料4】『古墳時代東国の地域経営』(若狭徹著 吉川弘文館 2021)
p291-292「5 東国前方後円墳の多出の意義」
「中央とのつながりを可視化する前方後円墳という手形を乱発したのが、六世紀後半の倭王権の政策であった。中央側は前方後円墳システムというツールを最大限に利用して東国の各種資源を吸収しようとし、そして坂東の勢力もそれを在地でのせめぎ合いに利用したのである。」
【資料5】『地図で楽しむすごい千葉』(都道府県研究会著 洋泉社 2017)
p36-39「なぜ千葉県内には貝塚や古墳がたくさんあるのか」には、ヤマトの傘下に入った地方豪族は大王と同形の古墳(=前方後円墳)をつくることが許されたとあり、古代の房総半島は、黒潮を利用した海上交通が発達し、西日本と直接的に交流、ヤマト王権と密接に結びついていたため、前方後円墳が多く造られるようになったのではないかと考察しています。
【資料6】『前方後円墳集成 東北・関東編』(近藤義郎編集 山川出版社 1994)
p110-115「第2部 第8章 下総」
p113-114に「下総の前方後円墳が厖大と感じるのは、全国的に見れば前方後円墳造営が衰微する第5段階(10期)における小形前方後円墳の激増に起因する」とし、その理由を「有力家長層にも小形前方後円墳の造営を認めたことが、はなはだしい数の前方後円墳が下総に分布する結果となったのではなかろうか」と書かれていました。
p116-123「第2部 第9章 上総」
p123に、後期後半に小規模前方後円墳の絶対数が増加した理由として「地域勢力の安定が下部勢力の序列化を促進した結果として捉える見方もできよう」ということが書かれていました。
(2)全国の前方後円墳の分布
【資料7】『方格法の渡来と複合形古墳の出現 古墳時代の成立とは』(椚國男著 築地書館 2009)
p58-64「三設計型古墳の全国的分布」に、以下の表と図がありました。
・都道府県別の前方後円墳の表
・設計型や設計比を調べた前方後円墳の比率が記載された日本地図
・前方後円墳の都道府県別収録数が記載された日本地図
【資料8】『標準日本史地図』(児玉幸多編 吉川弘文館 1972)
p5「古墳の分布と国造の配置」
前方後円墳の配置について記載がありました。
- 回答プロセス
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(1)千葉県に前方後円墳が多い理由
1 当館HPで公開している千葉県関係のデータベース「菜の花ライブラリー」(https://www.library.pref.chiba.lg.jp/nanohana/)で「前方後円墳」を検索。
【資料1】を発見。
以下の資料は確認したが千葉県に前方後円墳が多い理由の記載はなかった。
・「<ちばの地理再発見> 古墳ランド・ちば 前方後円墳数は日本一」(『千葉日報』平成 28(2016)年 10月 12日)p11
2 千葉県立図書館ホームページ「図書・雑誌・視聴覚資料検索」、国立国会図書館オンライン、Googleブックスをキーワード「古墳」「前方後円墳」&「千葉」「分布」「地図」の組み合わせを変え掛け合わせて検索。【資料2】を発見。
3 千葉県立図書館ホームページ「図書・雑誌・視聴覚資料検索」を件名「遺跡・遺物-千葉県」&全項目「古墳」で検索したところ、『房総考古学ライブラリー 6 古墳時代』(千葉県文化財センター編集 千葉県文化財センター 1992)が見つかった。
p384では日本全国で最も数多くの前方後円墳があるのが千葉県であることに触れられており、「前方後円墳という墳形がもつ秩序や規制から逸脱して築かれたと思わざるを得ません」と書かれていた。
4 『房総考古学ライブラリー 6 古墳時代』(千葉県文化財センター編集 千葉県文化財センター 1992)の参考資料から【資料6】を発見。
5 書架で辞典類、歴史、郷土資料の棚を確認。【資料3】【資料4】【資料5】を発見。
6 ジャパンナレッジで「前方後円墳」を検索。国史大辞典に参考書の記載あり。
以下の資料を確認したが千葉県には前方後円墳が多い理由の記載が見つからなかった。
『前方後円墳』(上田宏範著 学生社 1996)
『前方後円墳の時代』(近藤義郎著 岩波書店 2020)
7 リサーチナビを「古墳 千葉」「古墳 分布」「前方後円墳」で検索するも、参考になりそうな案件は見つからなかった。
(2)全国の前方後円墳の分布
1 千葉県立図書館ホームページ「図書・雑誌・視聴覚資料検索」、国立国会図書館オンライン、Googleブックスを全項目「前方後円墳 分布」「前方後円墳 地図」で検索。【資料7】【資料8】を発見。
<目次を確認したが記載が見つからなかった資料>
倉橋眞砂斗「房総における前方後円墳秩序」(『国府台』6号 1996.2 p 8‐47)
『前方後円墳の研究』(甘粕健著 同成社 2004)
『最後の前方後円墳 龍角寺浅間山古墳 シリーズ「遺跡を学ぶ」 109』(白井久美子著 新泉社 2016)
『前方後円墳の終焉』(広瀬和雄編 雄山閣 2010)
『前方後円墳の世界』(広瀬和雄 岩波書店 2010 岩波新書 新赤版 1264)
『日本古代史と遺跡の謎 総解説』(自由国民社 1998)
『空からみた古墳』(梅原章一写真 学生社 2000)
『古墳時代像を再考する』(広瀬和雄著 同成社 2013)
『東国から読み解く古墳時代 歴史文化ライブラリー 394』(若狭徹著 吉川弘文館 2015)
『調べ学習日本の歴史 2 古墳の研究』(ポプラ社 2000)
『前方後円墳 その起源を解明する シリーズ<古代史の探求> 3』(藤田友治著 ミネルヴァ書房 2000)
『図説日本文化史大系 1 縄文・弥生・古墳時代』(児玉 幸多[ほか]編 小学館 1965)
『図解楽しく調べる日本の歴史 1 大むかしの日本』(桐谷正信監修 日本標準 2010)
『房総古墳文化の研究』(小沢洋著 六一書房 2008)
『大王墓と前方後円墳』(一瀬和夫著 吉川弘文館 2005)
『千葉県の歴史 県史 12』(石井進編 山川出版社 2012)
『千葉県の歴史 通史編原始・古代1 県史シリーズ 1』(千葉県史料研究財団編 千葉県 2007)
『日本の考古学 4 古墳時代』(河出書房新社 1985)
『日本の考古学 5 古墳時代』(河出書房新社 1981)
『日本古墳大辞典』(大塚初重[ほか]編 東京堂出版 1989)
『日本古墳大辞典 続』(大塚初重編 東京堂出版 2002)
『前方後円墳とはなにか』(広瀬和雄著 中央公論新社 2019)
『古墳時代東国政治史論』(松尾昌彦著 雄山閣 2002)
『前方後円墳の起源を考える』(近藤義郎著 青木書店 2005)
『前方後円墳と吉備・大和』(近藤義郎著 吉備人出版 2001)
『考古学から学ぶ古墳入門 The New Fifties』(松木武彦編著 講談社 2019)
『古墳と古墳群の研究』(白石太一郎著 塙書房 2000)
『大和朝廷の源流 新・神武天皇実在論 歴研<古代史>選書』(馬場範明著 歴研 2018)
『古墳辞典』(大塚初重編 東京堂出版 1996)
『古墳文化の成立と社会 古代日本の陵墓と古墳 1』(今尾文昭著 青木書店 2009)
『比較考古学の新地平』(菊池徹夫編 同成社 2010)
『日本古墳文化資料綜覧 続 1 文献篇』(斎藤忠編 臨川書店 1985)
『日本古墳文化資料綜覧 続 2 遺跡篇』(斎藤忠編 臨川書店 1988)
『日本古墳文化資料綜覧 [正] 明治初年~昭和26年』(斎藤忠編 臨川書店 1982)
『千葉県の歴史 資料編考古4 県史シリーズ 12 遺跡・遺構・遺物』(千葉県史料研究財団編 千葉県 2004)
大塚 初重「房総の古墳分布とその特徴」(『成田史談』22号 1997.3 p 3‐14)
『前方後円墳と社会』(都出比呂志著 塙書房 2005)
※参考資料末尾の数字は当館の資料番号です。
(インターネット最終アクセス:2022年6月16日)
- 事前調査事項
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『神話となった日向の巨大古墳』(本郷泰道著 鉱脈社 2017)p102に「千葉県が全国で最も前方後円墳の数が多いことで知られ」とある。
- NDC
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- 歴史 (200 9版)
- 日本史 (210 9版)
- 関東地方 (213 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】白井久美子「<歴史講座> 前方後円墳の話」(『千葉県史料研究財団だより』 通巻2号 1993.8)p6
- 【資料2】『千葉県の歴史 資料編考古2 県史シリーズ 10 弥生・古墳時代』(千葉県史料研究財団編 千葉県 2003)(2101730018)
- 【資料3】『古代の東国 1 前方後円墳と東国社会』(若狭徹著 吉川弘文館 2017)(2102784739)
- 【資料4】『古墳時代東国の地域経営』(若狭徹著 吉川弘文館 2021)(2102945885)
- 【資料5】『地図で楽しむすごい千葉』(都道府県研究会著 洋泉社 2017)(2102810820)
- 【資料6】『前方後円墳集成 東北・関東編』(近藤義郎編集 山川出版社 1994)(1101274720)
- 【資料7】『方格法の渡来と複合形古墳の出現 古墳時代の成立とは』(椚國男著 築地書館 2009)(2102245457)
- 【資料8】『標準日本史地図』(児玉幸多編 吉川弘文館 1972)(9101872867)
- キーワード
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- 古墳(コフン)
- 千葉県-歴史-古墳時代(チバケン レキシ コフンジダイ)
- 前方後円墳(ゼンポウコウエンフン)
- 日本-歴史-古墳時代(ニホン レキシ コフンジダイ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000327282