レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年6月11日
- 登録日時
- 2021/05/20 17:29
- 更新日時
- 2022/05/11 17:26
- 管理番号
- 県立長野-21-025
- 質問
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解決
大晦日の夜から新年にかけて寺社に詣でる二年参りの歴史について知りたい。
- 回答
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・二年参りの起源について、『年中行事辞典』 p.537「年籠」の項目に、
歳の夜を神社または仏寺に参籠して、新しい年を迎える行事。宵から参って、鶏鳴の下向まで社頭で
参籠する。(中略)信越地方などで二年参りという例のように、12時を期して参拝を行い、越年の目
的を達しようとするものもある。
とあり、また、当館契約データベース「ジャパンナレッジ」で、キーワード「初詣」で検索をすると、『平成ニッポン生活便利帳』に、
年籠りを起源とし、江戸時代頃から、大晦日の午前零時前にお参りして新年を迎えるようにもなり、
これを二年参りという。
とあることから、二年参りが年籠りを起源とする行事であることが分かった。
・平安中期作の『後拾遺和歌集』(春上・六・詞書)、室町期編集の『義経記』(七・大津次郎の事)に「年ごもり」の語句を確認できた。
後拾遺和歌集(1086)春上・六・詞書「年ごもりに山寺に侍りけるに」
義経記(室町中ごろか)七・大津次郎の事「羽黒山伏の熊野に年ごもりして下向し候」
・『初詣の社会史』 p.24-27に初詣の成立についての記述があった。
・『鉄道が変えた社寺参詣』 p.132-155に、都市部郊外における初詣と二年参りについて、
明治の初めのころまでは、初縁日参詣(正月21日)、恵方参り(正月)が一般的で、明治中期に鉄
道の発達(終夜運転、路線網の拡大など)と社会生活の変化(日曜週休制、年頭三が日休業)に伴い、
都市部郊外に、初縁日参詣や恵方を問わない元日の初詣が生まれ、二年参りも広域化されていった。
(大晦日の終夜運転については、明治中期頃の東京市内において、新橋上野浅草間を終夜、品川新橋間
を午前3時までの運転としていた。大正初めころには、山手線、中央線での終夜運転が行われるように
なった。)
との記述(概略)があった。
・当館契約の朝日新聞記事データベース「聞蔵Ⅱビジュアル」で、二年参り等のキーワードで記事検索したところ、二年参りの初出は、1911(明治44)年2月1日付 朝日新聞 朝刊3面 「古峯ヶ原の二年参詣」
・元日の初詣については、『近代天皇制文化史的研究』 p.257に、明治期の宮中儀礼と学校教育をその成立要因としている記述もあった。
・信州に二年参りが定着している理由としては、『信州の年中行事』 p.32に、
初詣を除夜の鐘を聞いてからするようになったのは、江戸時代に入ってから盛んになったもので、そ
れ以前は戸主がお宮に参籠(おこもり)をして、一日の朝まで過ごしたのである。(中略)めでたいこ
とや、お願いことは人より少しでも早くしようという気持ちは、年取りの早や勝ちなどのようにその例
は多い。初詣も同様で、下高井・下水内などでは神様の一の帳面につけてもらえるようにと、人より早
く行くようにし、それによって福徳が余計に入ると考えていた。(中略)
二年参りとか境参りといっているのも、期間が二年間に相当するというが、以前の気持ちは早や勝ち
の考えからきているものである。
とあり、信州人の気質を特徴とする大晦日の慣習をその理由として挙げている。
- 回答プロセス
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1.当館所蔵資料の書誌を全項目にして、キーワード「二年参り」で検索したがヒットしなかったので、「参詣」「初詣」等をキーワードに、神道・民俗関連の参考資料と当館契約データベース「ジャパンナレッジ」をあたったところ、年籠り(としごもり)がその語源であることがわかった。
2.『日本国語大辞典』第二版 で、「としごもり」をあたったところ、語意の記述中に、出典資料として、『後拾遺和歌集』、『義経記』が記されていたので、当館所蔵資料にあたり、両作品中に「年ごもり」の語句を確認した。
3.フリーデータベース「CiNii」で、「初詣」「二年参り」をキーワードに論文検索をしたところ、社寺参詣の研究者として平山昇氏の論文、掲載誌、書籍が掲載されていた。その中から『初詣の社会史』、『鉄道が変えた社寺参詣』等の資料にあたり、明治中期以前の初縁日、恵方詣から、初詣の成立、発展の過程と二年参りについて書かれた記述を確認した。
4.当館の郷土資料で、請求記号N386周辺の、年中行事関連の資料が配架されている書架を探索したところ、『信州の年中行事』の中に、信州人の気質と二年参りの関係について書かれた記述を確認した。
5.当館契約のデータベース「信濃毎日新聞データベース」の記事検索で、二年参りの初出は、1960(昭和35)年12月28日夕刊
(調査資料)
・『長野県史 民俗編 第1巻(1)』長野県編 長野県史刊行会 1986 【N209/11-3/1-1】
・『東都歳事記1』斎藤月岑著 平凡社 1970【385/102/1】
・『歳時習俗語彙』柳田國男編 国書刊行会 1979【386.1/ヤク】
・『歳時の文化事典』五十嵐謙吉著 2006【386.1/イケ】
・『日本庶民生活史料集成 別巻』谷川健一著 三一書房 1984【210.08/85/ベツ】
・『社寺参詣と庶民文化』原 淳一郎著 岩田書院 2009【387/ハジ】
・ 信濃毎日新聞データベース
・『民俗文化』第25号 近畿代諾民俗学研究所【P/316/25】
・『長野県人』藤森栄一著 新人物往来社 1973 【215.2/フエ】
※自然環境、地理的要因、信仰、方言などからの検証も試みたが、それらを裏付ける資料を見つけることが出来なかった。
- 事前調査事項
- NDC
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- 年中行事.祭礼 (386 10版)
- 中部地方 (215 10版)
- 日本史 (210 10版)
- 参考資料
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西角井正慶編 , 西角井, 正慶. 年中行事辞典. 東京堂出版, 1958.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I002092212-00 , ISBN 4490100167 (386.03/ニマ p.537) -
斉藤武雄/著 , 斉藤武雄/著. 信州の年中行事. 信野毎日新聞社, 1981.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I063962152-00 (N386/53/ア p.32) -
佐竹昭広 [ほか]編 , 藤原, 通俊, 1047-1099 , 久保田, 淳, 1933- , 平田, 喜信, 1936-2000. 新日本古典文学大系 8. 岩波書店, 1994.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002327915-00 , ISBN 4002400085 (918/シン/8 p.13) -
岡見 正雄 , 岡見 正雄. 義経記. 岩波書店, 1966. (日本古典文学大系)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I065167706-00 (918/ニホ/37 p.312) -
平山昇著 , 平山, 昇. 初詣の社会史 : 鉄道が生んだ娯楽とナショナリズム. 東京大学出版会, 2015.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I005086089-00 , ISBN 9784130262415 (387/ヒノ p.24-26) -
平山昇著 , 平山, 昇. 鉄道が変えた社寺参詣 : 初詣は鉄道とともに生まれ育った. 交通新聞社, 2012. (交通新聞社新書, 049)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I011055962-00 , ISBN 9784330325125 (p.132-155) -
高木博志著 , 高木, 博志. 近代天皇制の文化史的研究 : 天皇就任儀礼・年中行事・文化財. 校倉書房, 1997. (歴史科学叢書,)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I001180552-00 , ISBN 9784751726709 (210.09/タヒ p.253-257) -
日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編 , 小学館. 日本国語大辞典 第9巻 第2版. 小学館, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003029320-00 , ISBN 4095210095 (813.1/シヨ/9 p.1121)
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西角井正慶編 , 西角井, 正慶. 年中行事辞典. 東京堂出版, 1958.
- キーワード
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- 二年参り
- 二年詣で
- 除夜詣で
- 年越し参り
- 初詣
- 初縁日参詣
- 恵方詣
- 年中行事
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000298522