人文科学関連、言語辞典類、百科事典類の3方向から調査。
人文科学関連では、ニューヨーク市に関する地理や旅行案内書に分類される資料の中から調査。また、競馬やジャズから生まれたとの説があるとのことから、競馬や音楽の用語辞典の記述も調査した。
これらの調査の結果、以下のような諸説があり、どれが起源かはっきりしていないようである。
1.競馬説
資料1:
「Big A」の項: “(訳)アクェダクト競馬場 (説)ニューヨーク州にあり、全米最大の規模と施設を誇ることからついた俗称。”
「Big apple」の項: “(訳)1大競馬場。2大レースを実施する競馬場”
資料2:「ひとかじり」というコラムがあり、その要旨は、以下のとおり。
長い間「ビッグアップル」と名づけたのはジャズミュージシャンと思われていたが、アマチュア歴史家のバビー・ポピックが調査して、この言葉が最初に登場したのは、1920年代、ジョン・フィッツジェラルドが「モーニング・テレグラフ」紙に書いた競馬の記事の中だったそうだ、とあり。ニューオリンズの馬屋番たちの間では、ニューヨークの競馬場に行くことが、優秀なサラブレッドにとって最高のご褒美「ビッグアップル」であるといわれていたらしい。
2.ジャズ説
資料3:「Big apple, the ビッグアップル(大きなリンゴ)」の項目。
“ニューヨーク市の愛称。語源は第1次世界大戦から第2次世界大戦の間にジャズメンたちが呼んでいたのが一般化したと言われている。ニューヨーク市のあだ名としては、他にthe Big Town, Big Onion, Fun City, the Naked City, Gotham, Bagh-dad‐on-the-Hudsonなど。それらの中ではthe Big apple が最も使われている。赤いリンゴはニューヨーク市の象徴である。 ”
資料5:「もうひとつの新しい時代が音楽にやってきたのだ。この瞬間、その中心はビッグ・アップル/ニューヨーク シティだったのだ。」との文章があるが、説明はなし。
資料7:「Big Apple,the」の項
“ニューヨーク市のニックネーム。ジャズの音楽家達が米国北部の市のことを、appleと呼び、その中でも最も大きな市ニューヨークをthe Big Appleと呼んでいたから。定冠詞のtheをつける必要がある事に要注意。”
3.スローガン説
資料6:「Big Apple」項目末尾の語源欄。
“1928.1970年代に旅行者用スローガンとして広められた。おそらく、以前のthe Apple(ジャズ演奏家の間の隠語でNew York市の意)にBigがついて再び用いられたもの。”
*巻頭の凡例より、先頭の「1928.」は初出年
資料8:「Big Apple」の項
「[1920s+] New York City (cf. APPLE n.5).[in the New Yorker of 6 August 1984 Charles Gillett, the president of the New York Convention & Visitors Buresu, Inc., spoke on the value of the image of New York as the 'Big Apple'. It was his organization that plucked the term from the jazz lingo of the 1920s. The phrase in the jazz world, he said, had been playing 'the Big Stem in the Big Apple, the Big Stem being Broadway.' For an exhaustive study of 'big apple' see Cohen (1993,1995)]」
*上記項目末尾で指示されている「Cohen(1993,1995)」を巻末の「Bibliography」(p.1314)で確認すると、書誌情報が次のように記載されている。
・Cohen,G.L.,Studies in Slang Part 3(Frankfurt-am-Main, 1993)
・Cohen,G.L.,Studies in Slang Part 3(Frankfurt-am-Main, 1995)
これらの資料には詳しい記述があるようだが、残念ながら都立図書館では所蔵していない。国立国会図書館でも所蔵なし。
4.成功説
資料9:「the Big Apple」の項。
“American the nickname for New York City. It seems to have originated among jazz musicians, perhaps from the notion of 'a bite of the apple' meaning a chance of success.”
このほか以下の資料にも、数行程度の説明があった。
資料10:「the Big Apple」の項。
資料11:「the Big Apple or the Apple」の項。
『Oxford English Dictionary』では、資料12「Big」の項に、「Big Apple」の2つ目の意味として、「slang, the city of New York」とあるが、語源はなし。
また、以下の資料も調査したが、該当項目が見つからなかった。
・資料4:「the Big Apple」の項目なし。
・『The Encyclopedia Americana』Grolier c1991 (RF0330/E56/E14-1~E14-30)
・『Collier's encyclopedia 』 P.F. Collier c1987 (RF0330/C69/C5-1~C5-24)
・『The New Encyclopaedia Britannica in 32 volumes』Encyclopaedia Britannica c1990 (DRF0330/N53/N9-1~N9-2-31)
*このうち『Britannica』には、ダンスの「big apple」についてのみ記載あり。