レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017年06月04日
- 登録日時
- 2017/09/02 10:51
- 更新日時
- 2017/11/27 15:15
- 管理番号
- 【6】中2017-011
- 質問
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未解決
「日本大百科全書 18」の「ノット」の項目の説明文に「5ファゾム(9.144メートル)間隔の結びこぶが、砂時計の28秒間に通過した数が毎時何海里かを表した」とあるが、5ファゾム、28秒はどこからきた数字か?
- 回答
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砂時計の28秒については、回答プロセスの【資料5】の記述にあるように一海里の長さが決定された際に調整した結果であるといえる。
結び目の間隔については、5ファゾム(9.144m)以外に資料によって7m、47フィート3インチ(14.4018m)などの諸説があり、一つに特定できなかった。おそらくその時代の航海術等の状況に応じて計算しやすいように工夫されていたのではないかと思われる。
- 回答プロセス
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1)『単位の起源事典』 /R609/ 小泉袈裟勝/著 東京書籍 1982 【資料1】
「ファゾム」の項目を調査するとp.64に「両手をひろげた長さ、約180cm」とある。また「ノット」の項目を調査するとp.68に「一時間に一海里の速さで、その昔、船尾から流した紐の結び目で速さを計ったことに由来する。紐には47フィート3センチごとに結び目をつけ(中略)砂時計を用いて28秒間に繰り出す結び目の数をかぞえると、これがノット数になる」と記述がある。しかしこの47フィート3インチという間隔はメートルに換算すると14.4018mであり、今回の質問にある5ファゾム(9.144メートル)とはだいぶ開きがある。また28秒砂時計を使う理由については記述がない。
2)『Webster's third new international dictionary』 /R833/ Merriam-Webster 2002 【資料2】
「Knot」の項目を調査するとp.1252に「one of the lengths marked off on a log line each of which is 47 feet 3 inches in extent and has the same relation to one nautical mile as 28 seconds has to one hour so that the number of such divisions running out from the log reel within a 28-seconds interval will insicate that the identical number of nautical miles will covered within one hour by ship if it maintains the same speed(以下略)」との記述あり。ここでも結び目の間隔が47フィート3インチとされているが、28秒計を使う理由には触れられていない。
3)Googleでキーワード<ノット ファゾム>で検索。ヒットした日本船主協会のホームページ中の「海運雑学ゼミナール004 ロープの結び目から生まれた、船の速力の単位ノット」【資料3】を見ると、「船の速力を表すのに使われる単位としておなじみの「ノット」。(中略)船の速力を表す単位として使われるようになったのは16世紀頃のこと。ロープに5ファゾム(1ファゾムは6フィート、つまり1.82メートル)ごとに結び目をつくっておき、先端にブイをつけてロープを海に流し、30秒間に繰り出す結び目の数で船の速さを計算したというのがその由来だという。」との記述あり。ここでは結び目の間隔は5ファゾムだが秒数は30秒とされている。
4)契約データベース「JapanKnowledge」の全文検索でキーワード<ノット 砂時計>で検索。日本大百科全書の項目2件(「ノット(速さの単位)」「ログ」)がヒットする。そのうち「ログ」の項目【資料4】を見ると、説明文中に「手用測定儀 Hand logを用いた際の時間計測に砂時計を使用。速力五ノット以下の場合に用いるロンググラス(28秒計)と五ノット以上の場合に用いるショートグラス(14秒計)がある」と記述がある。しかしなぜ28秒計を用いるのかの説明はない。
5)航海術について書かれた資料、また船舶全般についての資料の中に説明があるのではと考え、自館OPACでキーワード<航海術>で検索しヒットした資料および書架をブラウジングして見出した資料を見ると、以下のように記述がある。
①『航海術 海に挑む人間の歴史』 /S557/ 茂在寅男/著 中央公論社 1967 (中公新書135) 【資料5】
→砂時計の秒についてはp.137に「砂時計は最初1分のものが使われたが、後30秒ものと15秒ものとになった。(中略)秒時計の時間はさらに後になって28秒ものと14秒ものとに変わった。というのは地球の測定がだんだん正確になってきたため、一海里の長さが6080フィート(1852メートル)と決定された時(1756年)に測程線の長さで調整せずに、砂時計の長さで調整したためである」との記述がある。なお結び目の間隔については同ページに「線の途中一定の長さごとに結び玉をつくり」とあるものの、具体的な長さについては触れられていない。
②『海と船のいろいろ 2訂版』 /550/ 大阪商船三井船舶(株)広報室・営業調査室/共編 成山堂書店 1996 【資料6】
→pp.116-117に「結び目は7m間隔」とあり。
③『海洋船舶の科学』 /550/ 菅野照造/監修・船と海の研究会/編著 日刊工業新聞社 2008 【資料7】
→pp.116-117にやはり「結び目は7m間隔」とあり。
②と③の2冊にある結び目の間隔は質問や【資料1】にある間隔とも異なる。
6)Googleでキーワード<“5ファゾム” カイリ>で検索。検索結果からWikipediaの記事「帝国単位」【資料8】を見ると1ファゾム=6.08フィートの理由として「国際海里が採択される以前の海里の1/1000として定義されたため」との記述がある。
7)英語版のWikipediaでキーワード<Knot>で検索。「Knot(unit)」の記事【資料9】を見ると記事中の「Origin」の項の説明文中に「Knots placed at a distance of 8 fathoms - 47 feet 3 inches (14.4018 m)」とあり、ここでは結び目の間隔は47フィート3インチとなっている。
- 事前調査事項
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『日本大百科全書 18 にほんけ-はな』 /R031/ 小学館 1987 p.432
- NDC
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- 度量衡.計量法 (609)
- 航海.航海学 (557)
- 海洋工学.船舶工学 (550)
- 参考資料
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【資料1】小泉袈裟勝 著 , 小泉, 袈裟勝, 1918-. 単位の起源事典. 東京書籍, 1982. (東書選書 ; 79)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001583510-00 -
【資料2】Gove, Philip Babcock, 1902-1972 , Merriam-Webster, Inc. Webster's third new international dictionary of the English language, unabridged / editor in chief, Philip Babcock Gove and the Merriam-Webster editorial staff. Merriam-Webster, 2002.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007410060-00 , ISBN 0877792062 -
【資料3】「海運雑学ゼミナール004 ロープの結び目から生まれた、船の速力の単位ノット」. 日本船主協会ホームページ.
http://www.jsanet.or.jp/seminar/text/seminar_004.html (2017年9月28日最終確認) -
【資料4】日本大百科全書 24 (りさーん). 小学館, 1988.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001944923-00 , ISBN 4095260246 (JapanKnowledge. http://japanknowledge.com (2017年9月28日最終確認)) -
【資料5】茂在寅男 著 , 茂在, 寅男, 1914-. 航海術 : 海に挑む人間の歴史. 中央公論社, 1967. (中公新書)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001095734-00 -
【資料6】大阪商船三井船舶 (株) 広報室・営業調査室 共編 , 大阪商船三井船舶株式会社. 海と船のいろいろ 2訂版. 成山堂書店, 1996.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002536960-00 , ISBN 4425910524 -
【資料7】菅野照造 監修 , 船と海の研究会 編著 , 菅野, 照造 , 船と海の研究会. 海洋船舶の科学 : おもしろサイエンス. 日刊工業新聞社, 2008. (B&Tブックス)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009335928-00 , ISBN 9784526060533 -
【資料8】Wikipedia記事「帝国単位」.
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%9D%E5%9B%BD%E5%8D%98%E4%BD%8D (2017年9月28日最終確認) -
【資料9】英語版Wikipedia記事「Knot(unit)」.
https://en.wikipedia.org/wiki/Knot_(unit) (2017年9月28日最終確認)
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【資料1】小泉袈裟勝 著 , 小泉, 袈裟勝, 1918-. 単位の起源事典. 東京書籍, 1982. (東書選書 ; 79)
- キーワード
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- カイリ
- ノット(Knot)
- ファゾム(Fathom)
- 砂時計
- 航海術
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000221352