レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2014年08月08日
- 登録日時
- 2018/11/30 00:30
- 更新日時
- 2020/04/09 00:30
- 管理番号
- 3A18002403
- 質問
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解決
『越組弄筆(えっそろうひつ)』(中井履軒,懐徳堂)は、麻田剛立(あさだごうりゅう)が獣体解剖を行い、人体との対照確認を行なった経験を基に、人体解剖図十五葉を彩色筆写し、これに解説を加えた医書と言われている。しかし、獣体解剖ではなく、麻田剛立が自ら3体の人体解剖を行ったという情報もある。
はたして麻田剛立は自ら人体解剖を行ったのだろうか。
- 回答
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関連する記述のある資料をご紹介します。
『麻田剛立 福田平八郎』(上原 久/著 大分県教育委員会,1976)
p.37-41「五 医学研究」の章の、p.37「1 序」の項に、「剛立の医学的研究は、何よりも解剖学ということになる。この点について従来ほとんど唯一の研究家として知られる人は、剛立と同じ杵築市出身で、しかも同じく藩医の家の出である解剖学者小川鼎三博士(東大名誉教授・学士院会員)である。」とあり、「以下その多くを小川博士による。」として、
p.40「3. 越爼弄筆」の項に、「これによると、剛立は人体解剖を三度も見たことになるが、小川博士によれば、そのような事実を証明すべきものは何もなく、剛立は遂に人体の解剖を見たことはないのである。」「人体解剖の報告は、安永二年頃までに三回見ている訳であって、ここはそのことではないかと思う。」とあります。
『医学史話 : 杉田玄白から福沢諭吉』(藤野 恒三郎/著 菜根出版,1984.1)
p.137に「越爼弄筆」についての解説があり、小川鼎三氏の「明治前日本解剖学史」の内容より、「剛立がそれまでに三回も人体解剖を行っていることが書かれているが、その事実を証明する別の記録は見当たらない。また、同じ時期に剛立が三浦梅園に送った手紙に、他人の人体解剖のことだけを書いていて、自家経験を書いていないので、小川氏は履軒の思いちがいの可能性を考えている。しかし、越爼弄筆の内容は明らかに剛立人体解剖経験の記録である。」との記載がありました。
「明治前日本解剖学史」につきましては、『明治前日本医学史 第一巻』(日本学士院/編 日本学術振興会 1955) に所収されており、国立国会図書館デジタルコレクション(図書館送信参加館内公開)に収録されています。
竹林庄太郎/著「大阪と麻田剛立」 『大阪経大論集』第117・118号 (大阪経大学会, 1977)p.63-83
p.67に「麻田剛立が人屍体解剖に立ち会ったという表現は誤認であろうと指摘している。」とあります。
『中井竹山・中井履軒』(小堀 一正/[ほか]著 明徳出版社,1980.7)
p.201-209「五、中井履軒の生涯 5友人たち」のp.206に、「麻田剛立の伝記を詳しく調べられた上原久氏は、この書を履軒の著述ではないとする。「人体解剖を直接見たはずのない剛立の説明から、」とあります。
『日本洋学史の研究 1』(有坂 隆道/編 創元社,1977)
p.41-53有坂隆道「大阪の洋学-その勃興期の様相-」内のp.43-44に「剛立は三たび人屍をみており」とあります。
『大阪名医伝』 ( 中野 操/著 思文閣出版,1983)
p.40-42「麻田剛立と解剖学」の章、小川博士の研究を踏まえたうえで、p.41に「いつごろどこで行ったものかは明らかでないが、三度も人屍を解いたりしたということである」との記述がありました。
- 回答プロセス
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1.商用データベース「JapanKnowledge」を“麻田剛立”ד解剖”で全文検索するが、人体解剖については記載なし。
2.フリーワード“麻田剛立”で当館所蔵を検索し、資料1が見つかる。
3.大阪府立中之島図書館「おおさかポータル」( http://www.library.pref.osaka.jp/site/osakaportal/ )(2019.1.13確認)でキーワード“麻田剛立”を検索し、資料2、3が見つかる。
4.Google Booksで“麻田剛立”ד人体解剖”を検索し、資料4、5、6が見つかる。
- 事前調査事項
- NDC
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- 科学史.事情 (402 9版)
- 医学 (490 9版)
- 参考資料
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- 当館書誌ID <0080169143> 麻田剛立(郷土の先覚者シリ-ズ 第6集) 上原久/著 大分県教育委員会 1976 (資料1)
- 当館書誌ID <0080260324> 大阪経大論集 117・118号 菅野和太郎博士追悼号 大阪経大学会/編 大阪経大学会 1977 (資料2)
- 当館書誌ID <0000185153> 大坂名医伝 中野 操/著 思文閣出版 1983 (資料3)
- 当館書誌ID <0000176761> 医学史話 -杉田玄白から福沢諭吉- 藤野 恒三郎/著 菜根出版 1984.1 (資料4)
- 当館書誌ID <0000253272> 中井竹山・中井履軒(叢書・日本の思想家 24) 小堀 一正/[ほか]著 明徳出版社 1980.7 9784896196245 (資料5)
- 当館書誌ID <0080101441> 日本洋学史の研究 1(創元学術双書) 有坂 隆道/編 創元社 1977 (資料6)
- キーワード
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- 麻田剛立
- 中井履軒
- 小川鼎三
- 懐徳堂
- 人体解剖
- 獣体解剖
- 越組弄筆
- 医書
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000246688