レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016/07/18
- 登録日時
- 2016/10/01 00:30
- 更新日時
- 2016/10/01 00:30
- 管理番号
- 6001017216
- 質問
-
未解決
非嫡出子の相続分差別について知りたい。
特に、平成7年7月5日と平成25年9月4日の判決で最高裁判所の結論が分かれた決め手は何だったのかについて、参考になる資料があれば教えてほしい。
- 回答
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参考になるかと思われる資料は次のとおりです。
<論文>
当館で所蔵している雑誌に掲載されている論文を確認しました。
・二宮 周平「家族法と戸籍を考える(37)婚外子相続分差別を違憲とした最高裁大法廷決定を学ぶ」
『戸籍時報』(703)(日本加除出版 2013.10)p.2-12
「2 本決定の意義」(p.3-4)で、平成25年決定での違憲判断の理由が次のとおり記載されています。
「本決定の違憲判断は、長期にわたる社会状況の変化に照らし、本件規定がその合理性を失ったことを理由として、その違憲性を当裁判所として初めて明らかにするものである」(p.3)
また、「(1)判例の動向」(p.4-5)において、平成7年決定から平成25年決定に至るまでの、その他の判例(全て合憲判断)の補足意見や反対意見等の流れがまとめられています。
・村重 慶一「戸籍判例ノート(259)民法900条4号ただし書の規定は遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたとされた事例[最高裁大法廷平成25.9.4決定] 」
『戸籍時報』 (703)(日本加除出版 2013.10)p.104-107
平成25年決定に関する解説の中で、平成7年決定での合憲判断について述べられています。
・斎藤 一久「最新判例演習室 憲法 嫡出でない子の法定相続分を定める民法900条4号但書の合憲性[最高裁大法廷平成25.9.4決定]」
『法学セミナー』58(11)(日本評論社 2013.11)p.108
平成25年決定では、平成7年決定における「厳格な合理性」の基準についての言及がなかったことに触れた上で、次のとおり解説されています。
「本決定では嫡出でない子の個人の尊厳の観点から、家族形態の多様化、諸外国の立法、関連する条約および法制度、本件規定の改正動向などについて、時の経過に伴い立法事実が変化したことを論証することを通じて、合理性の基準によっても十分に違憲と判断できると考えたのであろう」(p.108)
・松尾 弘「最新判例演習室 民法 嫡出でない子の相続分を嫡出子の二分の一とする民法規定の合憲性[最高裁大法廷平成25.9.4決定]」
『法学セミナー』 58(11)(日本評論社 2013.11)p.110
平成7年決定の解説はありませんが、平成25年決定の根拠について次のとおり6つ簡潔に述べられています。
「1 嫡出でない子の出生数の増加傾向、2 婚姻や家族形態の多様化を認める国民意識の変化、3 ドイツ、フランス等の外国立法における区別撤廃の趨勢、日本が批准した条約に基づいて設置された委員会による区別撤廃の勧告等、国際的環境の変化、4 住民票や戸籍の記載、国籍取得要件等、国内における平等扱いの進展、5 本件規定を合憲とした最大決平7・7・5民集49巻7号1789頁以降の最高裁の判断に付された少数違意見、6 家族共同体における個人の尊重に対する認識の浸透等」(p.110)
・蟻川 恒正「判例講座 起案講義憲法(第7回)婚外子法廷相続分最高裁違憲決定を読む」
『法学教室』(397)(有斐閣 2013.10)p.102-114
平成7年決定で用いられていた「著しく不合理」か否かという基準と目的手段審査、また平成25年決定の特色のひとつといえる「個人の尊厳」の三点について、平成7年決定と平成25年決定を比較しながら解説されています。
・榊原 富士子「婚外子相続分差別違憲決定に寄せて[最高裁大法廷2013.9.4決定] (注目の最高裁判決から) 」
『法と民主主義』 (482)(日本民主法律家協会 2013.10)p.38-43
平成25年決定に至るまでの婚外子裁判に関する流れがまとめられています。
そのうち「六 九五年以降の最高裁判例の流れ」(p.41-42)では、平成7年決定でなぜ合憲としたのかについて、当時の最高裁判事が取材で答えた内容が、次のとおり記載されています。
「違憲に踏み込まなくても国会が改正するとの期待感があった。積極的な合憲というより、国会に任せる気持ちだった」(p.41)
<図書>
・『判例・先例研究 平成26年度版』(東京司法書士会 2015.3)
平成26年10月1日に開催された判例・先例研究会「非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定を違憲とする最高裁決定について」の、研究報告等が掲載されている資料です。
p.1-13の研究報告では、平成25年決定はいかにして平成7年決定を乗り越えて違憲と判断するに至ったのかなどについて、両決定の概要や憲法上の権利を整理したうえで、平成25年決定の根拠について解説されています。
また、p.14-35の講評では、諸外国の司法審査制の歴史、両決定に対する研究者の反応、講師自身の意見等が述べられています。研究会当日のレジュメも掲載されています。
・『現代家族の法と実務:多様化する家族像-婚姻・事実婚・別居・離婚・介護・親子鑑定・LGBTI』(小島妙子/著 日本加除出版 2015.2)
「Q26 婚外子相続分規定無効決定とはどのような決定ですか?」(p.320-324)で、平成7年決定の反対意見や補足意見をふまえて、平成25年決定について解説されています。
[事例作成日:2016年7月18日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 法律 (320 8版)
- 民法.民事法 (324 8版)
- 参考資料
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- 戸籍時報 日本加除出版 703 (2-12、104-107)
- 法学セミナー 日本評論社 58(11)<706> (108、110)
- 法学教室[雑誌] 有斐閣 397 (102-114)
- 法と民主主義 日本民主法律家協会 日本民主法律家協会 482 (38-43)
- 判例・先例研究 平成26年度版 東京司法書士会 2015.3 (1-35)
- 現代家族の法と実務 小島/妙子‖著 日本加除出版 2015.2 (320-324)
- http://ci.nii.ac.jp/ (「CiNii」(国立情報学研究所)(2016/07/18現在))
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 法律
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000197583