レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013年01月25日
- 登録日時
- 2014/06/15 17:01
- 更新日時
- 2024/03/31 15:32
- 管理番号
- 吹-60-2014-003
- 質問
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解決
「さくらさくら」の歌詞が2種類あることについて。その変遷を知りたい。
- 回答
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(1)歌詞改変の時期
「さくらさくら」の歌詞は、「さくらさくら やよいの空は…いざやいざや見にゆかん」と「さくらさくら野山も里も…花ざかり」の2種類の歌詞がある。もともとは、「…やよい」が江戸時代の箏曲だった。明治21年に東京音楽学校の「箏曲集」に「櫻」として収められ、昭和16年の国民学校音楽教科書の「うたのほん」では、新たな歌詞である「…野山」に書き換えられた。
(2)歌詞改変の理由
国民学校音楽教科書に収載の際の改変の理由について、『文部省唱歌集成』(CD解説書 大和 淳二)によると、「古謡は、可成り語句がむづかしく、この程度の児童には難解である為、その精神を採り入れて、替歌としたものである。」(国民学校芸能科音楽2年うたの本教師用書)と説明が付されている。
(3)江戸時代の手ほどき歌としての「咲た桜」
新しい歌詞を1番、古い歌詞を2番にすることもある。日本古謡として紹介されるときの歌詞は「やよいの空~」の歌詞である。『日本童謡唱歌大系1』(東京書籍 1997.11)。「櫻」は江戸時代の手ほどき歌「咲た桜(さいたさくら)」の替え歌として「箏曲集」に収載されたということも判明した。また、明治時代には、遊びうたとして、さまざまな歌詞がつけられていた、ということも記されている。
国立国会図書館レファレンス協同データベース事業サポーターより情報追加をいただきました。(2017/04/10)以下本文
詳細にお調べの上、ご解決済みの事例ですが、
下記の事典にも改作に関する情報がありました。
日本童謡事典 上笙一郎編 東京堂出版, 2005 ISBN:4490106734
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007937924-00
p.174-175
さくら さくら
- 回答プロセス
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1、『心にのこる日本の歌101選』(長田 暁二 ヤマハミュージックメディア2007.4)
『唱歌・童謡100の真実』(竹内 貴久雄 ヤマハミュージックメディア2009.10)
『言葉をかみしめて歌いたい童謡・唱歌』(由井 竜三 春秋社 2010.2) に上記(1)の変遷の記述がある。
2、『童謡・唱歌でたどる音楽教科書のあゆみ』(松村 直行 和泉書院 2011.11)
51Pに明治21年の『箏曲集』の楽譜、247Pに昭和16年発行の『うたのほん』下の表紙が収載されている。なお、国民学校音楽教科書は上巻は「ウタノホン」とカタカナの表記であるが下巻はひらがな表記であることも、247pの図68で確認できる。昭和16年は、「国民学校令」が公布された年であり、国定教科書として、音楽教科書が作成された。それ以前は、音楽教育は「コレヲ欠クコトヲ得」といった例外的な扱いであったが、「音楽科」が義務教育の重要な一学科として全国実施へ踏み出した、ということが、(239p~246P)記述されている。
3、『文部省唱歌集成 : その変遷を追って 解説・写真集』(日本コロムビア 2000年 CD解説 大和 淳二 監修・解説)
「7 国民学校芸能科音楽の時代へ」の項において、歌詞の文語体から口語体への改作および歌詞の改作が見られるとして、いくつかの例をあげている。変遷の理由として、「1、文語体から口語体への改め、2、難解な語句から平易な語句へのさしかえ、3、戦前、戦中の軍国主義的用語の訂正」を主なものとしている。「さくらさくら」については、「『古謡は、可成り語句がむづかしく、この程度の児童には難解である為、その精神を採り入れて、替歌としたものである。』と説明を付し、(国民学校芸能科音楽2年うたの本教師用書)、箏歌の古謡を改めている」と改変の理由が記されている。
また、歌詞の改変については、小学校令施行規則改正(昭和16年)において、生活に即する言語を日常言語を基礎とする口語文にし、平易なる文語文にするということが適用されてのではないかと推測している。
4、CD『さくらさくらのすべて』(キングレコード 2008年)
解説書に成立過程が詳しい。
「《さくらさくら》の不思議-成立事情と海外進出の謎」(千葉優子 宮城道雄記念館資料室室長)には、「有名なわりに成立事情がいまひとつはっきりしない」とされているが、明治12年に文部省内に設立された音楽取調掛撰が編纂した『筝曲集』(明治21年)が最初の収載文献とある。音楽取調掛は、事業の一環として「俗曲改良」を行った。江戸の手ほどき曲である「咲た桜(さいたさくら)」の替え歌として「櫻」が収載されたとある。「咲た桜」の歌詞は「咲いた桜 花見て戻る 吉野は桜 竜田は紅葉 唐崎の松 常盤常盤 深緑」であるが、なぜ歌詞をかえたのかは明らかではない、とある。昭和16年に国定教科書に「さくらさくら」として、再び歌詞がかえられたとあるが経過などには触れられていない。
同じく解説書の「『さくらさくら』の普及 -”唱歌”と”遊び歌”としての歴史-」嶋田由美」(和歌山大学教育学部教授)には、「さくらさくら」には「唱歌として、そして、遊び歌としての歴史がある」として、筝曲集の「櫻」は「箏のお稽古ごとの範疇を超えて次第に、子どもの遊び歌として歌われるようになった」ことが示されている。広島高等師範学校付属小学校編纂の「日本童謡民謡曲集」(昭和8年)に「櫻」を元歌にして、歌詞に「ぢごくごくらくえんまさんのまえでしかられた」という新しいフレーズが付加された遊び歌が紹介されている、とあり、「櫻」を元歌にしてつくられた遊び歌が全国的にも見られるとある。また、昭和16年に「うたのほん」に収載された「さくらさくら」について、教師用指導書に「櫻」の替え歌であると明記されている、ことが紹介されている。
- 事前調査事項
- NDC
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- 声楽 (767 8版)
- 詩歌 (911 8版)
- 教育課程.学習指導.教科別教育 (375 8版)
- 参考資料
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長田暁二 著 , 長田, 暁二, 1930-. 心にのこる日本の歌101選. ヤマハミュージックメディア, 2007.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009147208-00 , ISBN 9784636819809 -
竹内貴久雄 著 , 竹内, 貴久雄, 1949-. 唱歌・童謡100の真実 : 誕生秘話、謎解き伝説を追う. ヤマハミュージックメディア, 2009.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010597924-00 , ISBN 9784636845853 -
松村直行 著 , 松村, 直行, 1933-. 童謡・唱歌でたどる音楽教科書のあゆみ : 明治・大正・昭和初中期. 和泉書院, 2011.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023157897-00 , ISBN 9784757606043 -
大和 淳二/監修・解説. 文部省唱歌集成 : その変遷を追って 解説・写真集. 日本コロムビア. CD解説書 大和淳二 監修・解説
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I052832469-00 -
上笙一郎 編 , 上, 笙一郎, 1933-2015. 日本童謡事典. 東京堂出版, 2005.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007937924-00 , ISBN 4490106734
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長田暁二 著 , 長田, 暁二, 1930-. 心にのこる日本の歌101選. ヤマハミュージックメディア, 2007.
- キーワード
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- さくらさくら
- 照会先
- 寄与者
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- 国立国会図書館レファレンス協同データベース事業サポーター
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000154322