レファレンス事例詳細(Detail of reference example)
提供館 (Library) | 三重県立図書館 (2110033) | 管理番号 (Control number) | 30002239 | |||
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事例作成日 (Creation date) | 20221113 | 登録日時 (Registration date) | 2023年03月17日 00時30分 | 更新日時 (Last update) | 2023年03月23日 15時42分 | |
質問 (Question) | ①古代インドの寓話集『パンチャタントラ』の日本語訳(全訳)が読みたい。抄訳しか見つからない。 ②『パンチャタントラ』には多数の伝本・異本があるようだが、最も読まれている「決定版」のようなものはあるか。 ③パンチャタントラから派生した『ヒトーパデーシャ』『カリーラとディムナ』『ビドパイ(ピルパス)の物語』などと原典の比較(含まれる話数の違いなど)をしている書籍はないか。東洋文庫『カリーラとディムナ』の巻末にパンチャタントラとの比較があるが、その点に特化したものが読みたい。 | |||||
回答 (Answer) | 1.『パンチャタントラ』の日本語訳(全訳)としては下記の3件が確認できました。このうち、①と②は国立国会図書館デジタルコレクションにて閲覧可能です。(①永続的識別子:info:ndljp/pid/1873936、②永続的識別子:info:ndljp/pid/1672648) ①世界童話大系 第10巻 (インド篇) 松村武雄/訳 名著普及会 1988.12 ②五章の物語 : 梵語直訳印度古譚 宗茅生 訳 平凡社 1965 ③パンチャタントラ(アジアの民話 12) 田中於菟弥,上村勝彦/訳 大日本絵画巧芸美術 1980.10 「パンチャタントラ」には複数の伝本が存在しており、どの伝本を採用するかによって、掲載話数が異なる模様です。①は小話を入れて65話の構成です。採用した伝本が何かは不明です。②は挿話を入れて84話の構成です。訳者序にPancakhyanaqka(欧米ではtextus ornatiorと呼ばれる)を和訳したものという記載があります。このPancakhyanaqka(textus ornatior)は「広本」と呼ばれています[1]。 ③は当館に所蔵がないため収録話数の確認ができていません。日本の古書店[2]によると、この本は「キールホルン・ビューラー校訂注解」となっています。西村正身によると、この和訳は「小本」の和訳とされます[3]。 なお、日本語版Wikipediaの「パンチャタントラ」の項にある「全5巻84話」の典拠は、マノラマ・ジャファ氏(国際児童図書評議会インド支部事務局長)が平成16年5月22日に行った講演会「パンチャタントラ 世界で最も古い子どものためのお話集」と推測されます[4]。②と合計の話数は同じですが、第1編と第5編の話数に違いがあります。 2.兵頭[5]は、「パンチャタントラ」の原典に最も近いものは、Johannes Hertelによって発見された「タントラ・アーキアーイカ」であると述べています。小本については、“「タントラ・アーキアーイカ」が発見されるまでは「パンチャタントラ」の代表とみなされていた”としています。また、Franklin EdgertonによるPanchatantra reconstructedについては、「(Theodor BenfeyやJohannes Hertelの)成果の上に立ち、諸伝本の内容を比較検討し、綿密な考慮のもとに『パンチャタントラ』の原型の復元を試みた」としています。「タントラ・アーキアーイカ」は小本・広本よりも話数が少ない(小本・広本の成立過程で話数が増えた)ため、この成果を利用して構成されたFranklin EdgertonによるPanchatantra reconstructedの話数は比較的少なくなっていることが考えられます。 Franklin EdgertonによるPanchatantra reconstructedについては、Panchatantra reconstructed vol.2[6]において、復元の過程を説明していますのでそちらをご覧ください。 また、岩瀬は、[7]において比較研究を行った結果、“文言においても、プロットにおいても、『タントラーキャーイカ』が最も古い姿を保持していることを改めて示すことができたと思う。”と述べています。一方、[8]では“「小本」は一般的に「パンチャタントラ」という題が広まった基になったと考えられるもので、”と述べています。この岩瀬による講演会の予稿集は「パンチャタントラ」を理解するヒントの1つになると思われますが、インターネット上で見つけることができませんでした。 3.内容についての比較では、[3][5][7]などのように特定の説話を対象に比較研究しているものはありますが、全体的な比較を行っているものや話数などの形式的な比較を詳細に行っている文献は見つけることができませんでした。 <参考文献> [1]“パンチャタントラ”. 集英社世界文学事典. 『世界文学事典』編集委員会編. 集英社, 2002, p.1263. [2]“パンチャタントラ 五巻の書【アジアの民話12】”. 日本の古書店. https://www.kosho.or.jp/products/detail.php?product_id=251182419, (参照 2022-12-07). [3]西村正身. 『シンドバード物語』所収話の泉源. 作大論集, 2013, vol.3, p.1-24. [4]国立国会図書館国際子ども図書館. 講演会「パンチャタントラ : 世界で最古の子どものお話集」. 国立国会図書館. 2004, https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/998358/1, (参照 2022-12-07). [5]兵頭俊樹. インドの説話「心臓と耳がないロバ」とイソップ風寓話「心臓がない鹿」. 和歌山大学研究紀要 人文科学. 2018, vol.68, no.2, p.103-116. [6]Franklin Edgerton. Panchatantra reconstructed vol.2. American Oriental Society. 1924. [7]岩瀬由佳. Development of Selected Stories from thePancatantra/Kalilah wa Dimnah : Genealogical Problems Reconsidered on the Basis of Sanskrit and Semitic Texts.(「パンチャタントラ」/「カリーラとディムナ」中の挿話の発展 : サンスクリットおよびセム諸語による諸般に基づく系統問題の再考), 大阪外国語大学博士論文(抄録), 2000. (注:抄録は日本語ですが、本文は英語の模様です) [8]岩瀬由佳. 講演録 現代インドにおける説話の伝承『子どもパンチャタントラ』の構成と内容. 古事記學 : 國學院大學21世紀研究教育計画委員会研究事業成果報告論集. Vol.7, p.93-105, 2021. | |||||
回答プロセス (Answering process) | ||||||
事前調査事項 (Preliminary research) | 『世界文学体系4 インド集』の解説によると、流布本では62話あるとしている(p.345)が、ここでいう「流布本」が何かわからない。日本語版Wikipediaの「パンチャタントラ」の項目では「全5巻84話」となっているが典拠不明。英語版Wikipediaの「List of Panchatantra stories」によると、決定版と言えるのはFranklin Edgertonの「Panchatantra reconstructed」(1924)となっているが、ここには84話も含まれていない模様。 | |||||
NDC | ||||||
参考資料 (Reference materials) | ||||||
キーワード (Keywords) | ||||||
照会先 (Institution or person inquired for advice) | ||||||
寄与者 (Contributor) | ||||||
備考 (Notes) | ||||||
調査種別 (Type of search) | 内容種別 (Type of subject) | 質問者区分 (Category of questioner) | ||||
登録番号 (Registration number) | 1000330435 | 解決/未解決 (Resolved / Unresolved) | 未解決 |